きっと、できること 「怪盗グルーのミニオン危機一発」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
個人的お気に入り度:5/10
一言感想:ギャグもキャラも子ども向けだけど、楽しい
あらすじ
かつて月を奪った怪盗グルーは心を入れ替え、謎の生物ミニオンたちに支えられながら、引き取った孤児の娘3人にふさわしいパパになろうと努力していた。
そんなグルーの前に謎の美女・ルーシーが現れる。彼女はグルーを拉致して、超極秘組織「反悪人同盟」へと迎え入れる。
同じ頃、グルーの屋敷に住むミニオンたちは、次々に何者かに誘拐されていた・・・
2010年に公開され、大ヒットを記録したアニメ作品「怪盗グルーの月泥棒」の続編です。
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世界中でファミリー層に絶大な支持を得ているシリーズで、2作目の「ミニオン危機一髪」はトイ・ストーリー3を抜いて全米アニメ史上第1位、2013年度全世界興行収入ランキング第2位という大記録を打ち立てています。
子どもだけでなく大人の観客にも受けたのは、可愛いキャラクターが理由の一つでしょう。
「ミニオン」だけでなく、3人の娘たち、そして傲慢に見えてかなりツンデレな怪盗グルーは好きにならざるを得ない魅力があります。
公式ページにキャラクター紹介のページがなかったので、以下に登場人物の紹介をしてみます。








この中でも3人娘のマーゴ、イディス、アグネスが愛らしいのなんの。
グルーでなくてもメロメロになってしまうのは当然です。
自分が特に好きなのはエディス。
今回の彼女は忍者のような格好をして、敵に立ち向かうので格好よくて仕方がありません。

この「怪盗グルー」の上手いところは、子どもには「ミニオンがかわいい!」と心を鷲掴みさせ、かつ性格の違う3人娘に自分を投影させやすいことです。
しっかりしているお姉さんにはマーゴのキャラは感情移入しやすいでしょうし、やんちゃな性格であればエディスに、優しい性格であればアグネスの気持ちにも同調しやすいでしょう。
それでいて、大人への視線も忘れていません。
怪盗グルーは、大人になってもデートが苦手で上手くいきません。
さらに3人娘にメロメロで子離れできていないばかりに、娘が男の子とデートしているのが気に入らなかったりもします。
こういった行動がなんともカワイイのです(おっさんだけど)。
子どもにも、大人にも共感がしやすいキャラクター描写こそが本シリーズの一番の長所でしょう。
ちなみに原題の「Despicable Me」というのは「俺って卑屈だ」といった意味。
楽しい内容とは相反したタイトルではありますが、偏屈な怪盗グルーの性格をあらわしたものなんでしょうね。
しかし本作は物語としては物足りません。
伏線が効果的に使われているところがあるも、ドタバタではじまりドタバタで終わる印象で、そこには清々しいほどに深みはありません。
アクションもや救出劇も描かれるのは全編のうちほんの少しであったので、中途半端さが否めないものでした。
登場人物の行動や、そのバックグラウンドの描写にも納得できないところもありました。
ギャグもかなり子ども向けにシフトしています。
だいたいが「ぶっ叩かれたりしたときのリアクション」「お尻」「おならぷう」で笑わせるという、なかなか底の浅いものでしたw
まあこれでも子どもは大満足なんでしょうけどね。
そんなわけで「トイ・ストーリー3」やなどの感動路線を期待すると肩すかしは間違いない作品ではありますが、なーんにも考えずに観れるただただ楽しいアニメ作品としては十分におすすめします。
前作を観ていたほうがキャラに思い入れがあるぶん楽しめるでしょうが、観ていなくても十分面白く観れると思います。
2D吹き替え版で観ましたが、3Dを意識したシーンが多いので、3Dだとより楽しめるかと思います。
字幕版の公開が2館しかないのは残念ですが、原語でのことば遊びを堪能したい方は字幕版でも是非どうぞ。
大人には映画のパロディや、昔懐かしい洋楽のサービスもありますよ。
サントラ→<Despicable Me 2>
声優の参照はこちらで→<怪盗グルーのミニオン危機一発 - Wikipedia>
余談:タイトルをよく見てみると、「危機一髪」でなくて「危機一『発』」になっています。「007 ロシアより愛をこめて」のもうひとつの邦題「007 危機一発」にひっかけたタイトルなのだと思います。
以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓ 野暮な不満点もあります。
いろいろと不満点をあげてみます。
~ルーシーのキャラクターって?~
まず気になったのは、今回のヒロイン・ルーシーがあまり魅力的に思えなかったことでしょうか。
グルーは幼い頃に「グルー菌がうつるぞ!」と女の子に心無いことを言われていたがゆえに、デートや女性に苦手意識があったことが描写されています。
しかしルーシーの背景は全く描かれず、「初対面でグルーを拉致をする(笑)」「宙に浮いたお菓子をカンフー(?)で粉々にする」というちょっとアレな印象しかないのです。<初対面で「リップスティック光線」を浴びせるルーシー
ミニオンの一人には見た瞬間にデートの内容を妄想され、アグネスには初対面で「独身なの?」と聞かれる彼女ではありますが、観ている側としてはどうにも魅力が薄いと言わざるを得ません。
~カツラ店の店主はどうなった?
お店に薬が置かれれていたために逮捕されたカツラ店の店長はどうなったのでしょうか?
おそらく薬はエル・マッチョが置いたものであり罠だったのでしょうが、この冤罪が晴れていないのはかなりモヤモヤします。
そういえば、序盤に「ショッピングモールの中で犯人は誰?」というミステリー要素を忍ばせているのに、とくに展開に生かせていないことも気になります。
~アントニオとマーゴの決着が・・・~
マーゴがベタ惚れだったキモい男の子・アントニオがさっさとマーゴから別の女の子に乗り換えた展開もがっかりしました。
これじゃあ「子離れできないグルーが全面的に正しい」ように思えてしまう展開になってしまいます。
アントニオが「将来はゲーマーで食べていくこと」と言い、マーゴが「すごい!いろいろ考えているのね!」と言ったことには笑いました。
ゲーマーで食べていけるのは梅原大吾さんくらいのもんだよ!
あとエル・マッチョの息子だという設定は何一つ生かせていないよなあ。
アントニオはイディスが「うえ~」と言っていたようにキモかったし、最後に氷漬けになるのは痛快だったんですけどね。だまされなくてよかったね、マーゴ!<この氷漬けにさせる銃は1作目でも出てきました
さらにマーゴは序盤にメールをしていて、グルーに「誰にメールしているんだ?」と聞かれて「男でも女でもいいでしょう」と答えるシーンがあります。これも結局どうだったのか解決していないんだよなあ。<本気で嫌がるマーゴ。どっちの気持ちもわかるなあ。
ちなみにメールをしていた相手の名前の「Avery」は男性名として使われることのほうが多いようです。
~博士がミニオンを拉致していたのに・・・~
ミニオンをさらっていたのはエル・マッチョと、少し前に「悪党の頃が懐かしい」と嘆いていたネファリオ博士でした。
グルーはエル・マッチョのパーティ会場にあった隠れ家を突き止め、そこにいたネファリオ博士は「お前もきっと気に入る」と、凶暴化させる薬を投与して紫色になったミニオンたちをグルーに見せます。
ここでグルーは「いつか(世界征服の計画に)参加するわ~」と軽く言って去るのです。
これには違和感を感じました。
グルーはミニオンたちの名前をすべて覚えており、愛着もあったはずなのに怒りも何も感情に出さず、ただ去るだけなのです。
さらに博士はこの後にグルー側へ戻り、自信が作った「まずいジャム弾」を利用してミニオンたちを元に戻すのを手伝うのですが・・・このときに言ったセリフが「世界征服のための兵器を作るのはいいが、家族に手は出させない!」でした。
いやいやいや、あんたはじめからミニオンたちの誘拐に加担していたじゃん!
ミニオンの一人が全然警戒をしていなかったのも、相手がネファリオ博士だったからでしょう。<「ハロー」と笑顔で迎えたあとに誘拐されている・・・
思い切り「家族」を誘拐していた博士は、まず謝るべきなんじゃないかな。
ここにも違和感を覚えました。
~大人向けのネタ?~
3人娘にお見合いサイトに登録をされたグルーは誰に似ている?と聞きます。
グルーはブルースウィリスと答えましたが、娘たちからはハンプティダンプティ、そしてつるべと言われました。
それは吹き替えの声優じゃん。おそらく原語だと日本人が知らない俳優の名前を言っていたんでしょうね。
さらにオーストラリアに配属が決まったルーシーは、「勉強をすることはあるわよ、コアラに、オージービーフに、ヒュー・ジャックマン?」と言いました。
ヒュージャックマンはオーストラリア出身の俳優ですものね。
あとお偉いさんの名前が「ram's bottom」で、それが「羊のお尻」を意味しているっていうのは日本の子どもにも大人にもピンとこないギャグだよなあ。<あまりに伝わりにくいギャグでした
~アクションシーン~
そんな不満ばかりをはいてしまいましたが、アクションシーンは実に楽しかったです。
ショッピングモールで潜入捜査したときに、にわとりに苦戦してしまうことや、その後に見つけたのは「秘伝のサルサソース」で、グルーとルーシーがのんきにそのサルサソースでタコスを食べている展開も大好きでした。
グルーがルーシーを助けに向かうときに乗ったバイクは「バットマン」シリーズに登場したバットポットそっくりでした。
さらにエディスは紫色に変身したミニオンからマーゴとアグネスを守るために、ヌンチャクで武装したりもします。<格好いい
さらに彼女はエル・マッチョのパーティ会場では「ジャムマシンガン」を楽しそうに撃ちまくるのでした。<ちょっと怖い
ワイルドすぎて彼女の将来が心配になりますね。
そういえばグルーはパーティ会場に来たエディスに「人を殺したらあかん」というすさまじい忠告をしていました。
その後もエディスはニンジャ芸を披露してオブジェを壊して男の子を泣かせていたし・・・誰かとめたげて。
さらにグルーはアクロバティックな空中回転をしながら撃ちまくる!<「マトリックス」っぽい。
なかなか痛快でしたが、ラスボスのエル・マッチョはせっかく薬で変身したのに、ルーシーからもらったリップスティック光線と、「おなら銃(序盤に博士を見送る時にも使っていた)」だけで倒されるのでちょっと消化不良でした。
もっと戦ってくれても良かったんですけどね。
あと紫色のミニオンが群がってグルーたちを襲う姿は「ワールド・ウォーZ」のゾンビみたいで怖かったですね。
あんまり小さい子だと泣いちゃいそうだ。
~ラスト~
最後は、潜入捜査のときから嫌われていたにわとりにボタンを押されたせいで、グルーとルーシーはロケットに乗せられ火山へ送り込まれようとします。
この期に及んでグルーは「もしデートにさそったらOKしてくれたか?」とプロポーズ。彼女の返答は「もちろん!」でした。全然緊張感がねえな。いいけど。
グルーはルーシーの縄をほどき、なんとか海に落ちることができました。
さらに「147回のデート後」というテロップが入り、2人の結婚式になります。
いやー省略されちゃったけど、2人のデートが見たかったなあ・・・作中では「近所のおばちゃんに紹介されたブサイクな女性を気絶させた」ことくらいでしかデートしていないですもん。<唯一のデートシーン
この女性は尻に麻酔銃を撃たれるわ、扉に頭をひっかけられるわでいくらなんでも可哀想でした。
最後はアグネスが「ルーシーは髪をあんでくれたりする、世界で一番の私のママ!」と言ってくれました。
そしてミニオンたちのY.M.C.Aの合唱!楽しい幕切れでした。
もうひとつ素晴らしかったのが、グルーとルーシーがお互いの長い鼻を邪魔に思いながらなんとかキスをしたときに、エディスが「言ってもいい?うえ~」と言ったことでしょうか。
このエディスのリアクションはアントニオと見たときと一緒です。どこまでも正直なんですね。
恋愛に対して「うえ~」な彼女は、恋に落ちることがあるのでしょうか。ちょっとその未来を想像したくなります。
~アグネスの気持ち~
アグネスは序盤に自身の誕生日パーティで「妖精さん」の登場を待ちわびていて、それがグルーの変装だと知っても「本当はグルーさんなんでしょう?ひみつにしといてあげる」というとても気が利く女の子でした。まあ周りからもバレバレだと思いますがw<バレバレだろう
そんな彼女も、「母の日のための劇の練習」ではお母さんがいないことを悲しく思い、そしてルーシーがお母さんになることを夢見ていました。
このときのアグネスは棒読みでしたが、最後の母(ルーシー)へのことばは心からのものでした。
グルーとルーシーが結婚したラストは、アグネスにとっても最高のハッピーエンドです。
~できること~
本作には「役割」というテーマもあるのかな、と思いました。
アグネスは中盤に、ルーシーがオーストラリアに去ってしまうと知ったグルーに「私にできることあるかな」と聞きます。
グルーは口をつぐみますが、さらにアグネスは「じゃあ、グルーさんにできることは?」とつづけます。
そしてグルーは最後にデートの約束をするためにルーシーに電話をしようとする・・・のですが、結局怖くて黒電話を燃やしてしまうのです。
なんともダメダメですが、世の男性にとっては共感してしまうシーンでしょう。意中の相手をデートに誘うのは、なんとも勇気がいることです。
デートの電話はできなかったグルーですが、結果的にルーシーを救い、そして結婚をすることもできました。
その足がかりとなったのはアグネスの「グルーさんにできることは?」という一言なのです。
そう言ったことこそが「アグネスのできること」なのだと思います。
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