ひとりじゃない 映画版「ルームメイト」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
個人的お気に入り度:6/10
一言感想:完全に騙された・・・・
あらすじ
派遣社員として働いている春海(北川景子)は交通事故に遭い、入院先で仲良くなったの看護師の麗子(深田恭子)誘いにのりルームシェアをはじめる。
しかし麗子の言動や行動には不可解なことが多く、やがて常軌を逸していく。
春海は事故の加害者であった謙介(高良健吾)に助けを求めるのだが・・・
「オトシモノ」「今日、恋をはじめます」の古澤健監督最新作です。
「Another」にはひどくがっかりしたのですが、この映画はとても面白かったです。
同じ題名のハリウッド映画がありますが、本作はそれとは全くの無関係です。
原案は故・今邑彩による小説です。
![]() | 今邑 彩 820円 powered by yasuikamo |
あくまでも「原案」ですので、登場人物の設定やオチは小説と映画では全く異なります。
この原作小説を読んだ方にとっても、この映画は別の物語として楽しめるでしょう。
「ルームメイト」というタイトルだけではわかりませんが、本作のジャンルはホラー・サスペンスです。
面白いのが、作品に隠されている真実の提示方法が実に上手いことです。
このオチにつながるヒントは作中に無数にちりばめられているのですが、自分はすっかりだまされてしまいました。
ミスリーディングが巧みで、かつ「思わせぶりな行動があったけど、実は何もなかった」というようなこともありません。
すべてのシーンに意味があり、それをよく考えてみると、真実にたどり着けるという構成になっています。とても観客に対してフェアです。
少し現実離れしているところがあるので、リアリティをとにかく重視する人には向きません。
しかし、この手の「シックス・センス」や「ユージュアル・サスペクツ」などの衝撃のオチ(どんでん返し)が好きな人にはぞんぶんにおすすめできます。
ただただ騙される快感に酔うのもよし、観ながら「騙されてやるものか」と考えを巡らせてみるのもよいでしょう。
ルームシェアは最近になって若者の間で流行りはじめましたが、違法となる物件や、人間関係のこじれなどでトラブルも相次いでいます。
「都会に出たらルームシェアがしたい!」と思っている方は、この映画を観るとその考えを改めてしまうかもしれません。
主演の美女二人の演技力も格別です。
個人的にはブライアン・デ・パルマっぽいスプリット・スクリーンの演出も魅力的でした。
良質なサスペンス映画を期待して、ぜひ劇場に足を運んでみてください。
PG12指定だけあって人が傷つけられるシーン、性的なシーンもあるのでお子様の鑑賞にはご注意を。
なるべく予備知識なく観ることをおすすめします。
以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓ いきなりオチ部分を書いているので、未見の方は絶対に読まないように!
〜一つ目のどんでん返し〜
この映画では、早々から「二重人格もの」であることが示唆されています。
ルームシェアを提案した麗子は別人格「マリ」の存在を臭わせていき、主人公の春海はその言動や行動を恐怖に感じていきます。
そして・・・一つ目のどんでん返しは、二重人格ものではなく、三重人格ものであるということでした。
春海もその人格のひとつであり、一人の人間に以下の3つの人格が存在していたのです。
春海:派遣社員という「設定」だが、実際は働いていなかった。
麗子:看護婦として働いているということになっていたが、ルームシェアをはじめるために辞める。
マリ:クラブ「アリアドネ」で働いているという設定。殺人を犯す。
春海はこのことを、事故のショックで忘れてしまっていたのでした。
〜一つ目のどんでん返しの伏線〜
思えば、麗子が「ひとりで口論する」シーンも伏線だったのでしょう。
春海も、麗子と「ひとり」で話していたのですから。
麗子が看護師を辞めた理由も、春海とともに暮らし、もとの「さや」に収まるためだったのでしょう。
看護師のリカが鏡の前で「麗子」と会ったとき、麗子の名前を呼んでいなかったのもヒントでした。
その見た目は、リカが患者として看ていた晴美だったのですから。
謙介は春海を轢いてしまったときのことを「あのときのこと、覚えているような、覚えていないような」と言っていました。
彼はそのときに春海とは別の人格の彼女を見ていたのです。
(ラストの刑務所の中で、謙介は「君たちのことが見えたんだ」と春海に告げています)
謙介の友人の保険会社の男は、「代理人の方と連絡がとれないんですけど」と春海に連絡をしていました。
それもそのはず、麗子は実在する人間ではないのですから。
さらにマリは、春海はクラブで「はじめまして、麗子の『ルームメイト』のマリです」と自己紹介するのです。
マリは、春海とも「同じ人間の中にいる」という意味での「ルームメイト」なんですよね。
個人的に残念だったのが、春海が電話で母親と話すシーンです。
母親はすでにマリに殺されていたので、このときの春海も「自分自身と」話していたことになります。
彼女の人格の中には「母親」もいたのかもしれませんが、ちょっと腑に落ちない印象でした。
〜人格が生まれた理由〜
解離性同一性障害(多重人格)は、実際に虐待を受けていた子どもが、精神的に逃れるために発症することが多いようです。
春海は「主」人格でした。
麗子は、義父からの性的虐待から逃れるために生み出された人格だったのでしょう。
マリの人格は、母親を殺したとき(その前に)発現したようです。
マリが二つの殺人を犯したのは、母親を殺したときのような殺意がそのままだったからでしょう。
マリは「人を殺す」役目のために生まれたのだと思います。
また、マリは犬を殺して鍋で煮てスープにするというおぞましい行為もしていました。
マリはこの前に、犬の飼い主の女の子の姉妹を見て「ちゃんと育てられるの?」と言っていました。
それは、「親としての責任を果たしていなかった母親」に思っていた気持ちと同等のものだったのだと思います。
(ただ、育てている側でなく、育てられている側の犬を殺してしまうのは納得できませんでした)
〜二つ目のどんでん返し〜
一つ目のどんでん返しは「あーはいはい、二重人格ものね」と思わせておいて、「その先」に真実を隠しているので、すっかり騙されてしまいました。
しかもこの映画では、さらに二段構えのどんでん返しが用意されていました。
それは、「4人目」がいることでした。
しかも4人目というのは人格を示すものではありません。実在する人間だったのです。
それはまだ年端もいかない少女で、市長選挙の候補者の男に性的虐待を受けていたのです。
少女・エリはマリという人格と仲良くなりました。
後に謙介は「マリは、エリの中に人格を作ろうとしていた」と言います。
マリは自分のように、エリの中に「殺人のための人格」をつくりだし、そしてエリに性的虐待をしていた男を殺させようとしていたのです。
エリが男の講演会に向かい、男にナイフを振りかざしたとき・・・ナイフを誰かがつかんで止めました。
それは、病院を抜け出した春海でした。
彼女は麗子とマリの話からすべてを思い出し、悲劇の連鎖を止めたのです。
〜二つ目のどんでん返しの伏線〜
シンポジウムでの合唱で、エリは歌っていませんでした。
その後彼女は男に「部屋に行こうか」と連れ出されていました。その後にも性的虐待を受けていたのでしょう。
エリは「4人目」として交換日記に「あいつが私の上にのしかかってくる」と書いていました。
それは別の人格に脅かされることではなく、エリが男に性的虐待を受けたときのことを書いていたのです。
三つ編み姿のエリは、謙介と春海を見ていました。
このとき春海はエリを一瞥しますが、何もなかったようにすぐに歩き出します。
それもそのはず、「春海」はエリを知らないのですから。
中盤に部屋に書かれてあった、赤い「わたしはマリ」という字は、実はエリが書いたものでした。
春海と麗子がクラブにいるときに、謙介は彼女(ら)の部屋で、クローゼットから出てきた何者かの腕をつかんでいました。
謙介がつかんだ腕の太さは、春海のものとは違っていました。
彼女こそ、エリだったのです。
〜ラスト〜
エリに性的虐待をしていた男は起訴されました。
しかし、エリは自分の名前を呼ばれるのをいまだにいやがっていました。
彼女は、性的虐待をされていたとき、男に耳元でその名を呼ばれていたのですから・・・
春海と謙介は、刑務所の中で面会をします。
春海は「治療は順調だから・・・私はひとりじゃないってわかったから、もう大丈夫」と謙介に告げます。
春海の視線の先には、優しく笑いかける看護婦姿の麗子がいました。
春海は謙介の前でゆっくりと目を閉じ、目をあけます。
彼女は謙介の顔を再び見て「よかった、幻じゃなくて」と告げました。
春海にとって、「ルームメイト」の麗子はとても大切な存在だったのでしょう。
麗子はマリの凶行に難色を示し、春海を守ろうとしてくれたのですから。
しかし、麗子は「実在しない」人格です。
春海は「ひとりじゃない」と気丈にふるまいましたが、麗子が「目をつぶると消えてしまう存在」であることは、彼女にとって悲しいことだったのでしょう。
そんな春海の目の前にいる「実在している」謙介の存在は、とても心強いものであったと思います。
〜悲劇の連鎖を止める〜
この物語は性的虐待によって起こった悲劇を描いています。
それは悪しき犯罪であり、許してはならないことです。
性的虐待をした男は起訴されましたが、エリの受けた傷は一生残ります。
それでも、エリはマリのように殺人を犯すことはありませんでした。
エリが男を殺さなかったこと、これから男が法的な裁きを受けることには、悲劇の連鎖を断ったという希望を感じました。
おすすめ↓
久々に日本のサスペンス映画の傑作を見た。- ユーザーレビュー Yahoo!映画(ネタバレ)
私は、今回は、本当にパンフレットを読んで意味が分かりました。(それまでは、まるでSIX SENSEのコピーだと思ってました)
それでも、見終わっても、なんだか、腑に落ちない映画でした。
私も最初ワンちゃんが殺されたのには納得行かなかったのですが、
ところどころハルミにもマイペースというか自己中な発言があったり、
後半には母親とそっくりな事言うんだね!ってレイコに言われたりもしてた事から
『私は悪くない』『私は絶対だ』『だって◯◯が◯◯だからこーなったんだ!』と自分を否定される事を嫌う性質があるので。
ワンちゃんに噛まれたりとかそーゆー事があったんじゃないでしょうか?
もしくは看護師の子が殺されたのと同じでハルミと会話してた事とかへの独占欲も入ってるのかもしれませんね。
嫌なことから逃れるために人格が形成され、そこから犯罪にまで発展するなんてなんだか考えられません。そんな犯罪にまで発展させてしまうような、性的虐待がこの世の中から無くなることを願うばかりです。。。
この映画またみます!