予告編詐欺映画?「ウォーキングウィズダイナソー」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
個人的お気に入り度:5/10
一言感想:ノリ軽いなあ・・・
あらすじ
そこは、7千万年前の白亜紀後期のアラスカ。
パキリノサウルスのパッチはひょんなことから巣からはなれ、ちょっぴりの冒険を経験する。
寒波が訪れたとき、パキリノサウルスの群れは大移動をする。それはパッチの長い冒険になった。
同名のBBCによるドキュメント番組の映画化作品です。
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今回の映画版の予告編を観て、「壮大なドキュメンタリー」を想像する方が多いと思います。
「未体験の感動」というふれこみで、「ゼロ・グラビティ」のような革新的な内容を期待した人も多いでしょう。
しかし、本編の雰囲気は予告編と全く異なります。
まず、恐竜は(吹き替え版だと)日本語でしゃべります。
そしてキャラクターたちはアメリカンなジョークを入れまくります。
具体的にどういうジョークかと言えば、
よかれと思った行動が裏目に出て仲間がひどいめにある→仲間「まったくうれしいね!どうもありがとう!(皮肉)」
全編こんな感じなのです。しかもだいたいスベります。
ナレーションはネイチャー・ドキュメンタリーのような静かなものではなく、マシンガントークに近いものでした。
その語り部となるのが、お調子者の鳥のキャラクターです。

こいつどこかで見たことあるなあ・・・というデジャヴを感じていましたが、それはおそらくディズニー映画のアラジンに出てくるイアーゴのせいでしょう。

さすがに性格はイアーゴよりもいいやつでしたが、それなりにウザさを感じざるを得ませんでした。
本当にびっくりしました。
最新のフルCGにより作られた恐竜の姿を観る大真面目な内容かと思いきや、実はコメディタッチで、ほのぼのした雰囲気に溢れているのです。
予告編でも、公式ページの紹介でも、その他の宣伝でも「ギャグが満載」な印象なんて全くなかったではありませんか。
その「予告編詐欺」を知ってから観るのであれば、そこそこ以上には楽しめる内容です。
多種多様な恐竜が次々と出てくるのはワクワクしますし、ストーリーもシンプルながら上手くまとまっています。
映像は奇麗ですし、3Dを意識した画もふんだんです。
上映時間は88分とコンパクトですし、テンポもよいのでお子様が退屈することはあまりないでしょう。
でも・・・やっぱり大人には物足りません。
かつて恐竜が好きだった(今でも大好きな)大人もたくさんいらっしゃると思うのですが、本編は恐竜の素晴らしさよりも「お子様向け」なギャグを描くことばかりに傾倒しているとしか思えないのです。
吹き替え版の声優にもちょっと不満があります。
主人公の恐竜を演じた木梨憲武さんは感情表現は上手いのですが、「子ども」の主人公にはあまり合っていないように思いますし、前述の鳥のアレックスを演じた中村悠一さんの声質と若干かぶっています。
もう少し、配役に気を使ってほしかったですね。
鈴木福君の恐竜紹介のナレーションはめっちゃ可愛かったです。
恐竜それぞれの特徴をいかした展開が少なかったことも、ちょっぴり残念でした。
福君のナレーションも「草食か肉食か雑食か」と「名前の由来」だけで、あまり知識欲を満たしてはくれないのです。
この映画で恐竜への興味が出てきたか・・・と言えば微妙かもしれませんが、本作は制作者からの「恐竜のことを知ってほしい」というメッセージが込められています。
それは、確かに尊いものでした。
大人だけの鑑賞はおすすめしませんが、家族で観るのであればじゅうぶん満足できるのではないでしょうか。
恐竜に興味が出てきた子どもにこそ、おすすめです。
以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓
〜アメリカンなファミリーが登場〜
まず、はじめに現代の人間が出てくるのにびっくりしました。
CGじゃないやん。息子なんかスマートフォンいじってるやん。
「化石の発掘なんか興味がない」なんて言う息子・リッキーのもとへ、一匹のしゃべるカラスがやってきます。
そのカラスは、白亜紀後期の地球にいた鳥・アレクソルニスに変身します。
彼の名前はアレックス。アレックスは、リッキーの家族が持っていた「恐竜の歯」にまつわるドラマを話しはじめます。
〜ちょっとした冒険〜
はじめにアレックスが「挫折と成功!すっごく感動的な物語だぞ〜!」とハードルをあげた宣言をしてくれました。もうここで本作のノリが決定したようなもんですね。
パキリノサウルスのパッチは、兄弟からつまはじきにされるような弱い立場でした。
パッチはトロオドンに捕まったことからはじめて巣の外に出て、ちょっぴりの冒険をしたことを威張っていました(アンキロサウルスのうんちシャワーを浴びたけど)。
ヘスペロルニスやアルファドンも登場し、たくさんの恐竜や動物が観たいという希望には応えてくれました。
アルファドンはミーアキャットみたいで、可愛いですね。<ペットにほしいアルファドン
〜ボンクラ男子の恋〜
パッチは自分と同じパキリノサウルスの女の子・ジュニファーに一目惚れをします。
「穴(頭に穴があいている)が格好いいわ」と言われただけでデレデレして、何度も出会った場所の滝に来るパッチが可愛かったですね。
しかし、彼女が四・五日前に南に旅立ったことを知っていたのに、それを言わなかったアレックスはひでえな。一応親友なんだけど。
〜死を乗り越えて〜
パッチたちも寒波を乗り越えるために南に移動しますが、森の中で火に囲まれ、敵の恐竜たちに襲われます。
パッチの母は子を守るために奮闘しましたが、敵の罠にはまります。
父は、パッチとその兄のスカウラーを守るために戦い、絶命してしまいます。
軽薄そうなスカウラーが、ここでは「きっと大丈夫だ」と弟をはげましていたのがよかったですね。<ここではお兄さんらしいスカウラー
スカウラーが「俺たちはたったふたりの家族なんだぞ」と言ったことも、後の展開に生きています。
個人的に残念だったのが、パッチの母の死がしっかりと描かれていないことでした。
このため、最後にパッチが生きている母と再会する展開を期待してしまいました。
〜アレックスのトリビア〜
アレックスはプテロサウルス(翼竜)のトリビアを言ってくれます。
それは「翼竜に天敵はいない」ということでした。
彼らは空を飛べるため、肉食動物に補職されにくいのでしょう。
しかし、その豆知識もつかの間、翼竜はゴルゴサウルスに食べられてしまいます。<あれ?
このときは低く飛びすぎたんでしょうね。
面目丸つぶれのアレックスは、続いてゴルゴサウルスの解説をはじめます。
体長は8m!大きな脳!などと真面目に解説をしているかと思いきや。「なにこの小さい手。ギャハハ」とイジりました。うぜー。
〜死の渓谷で〜
そんなゴルゴサウルスは、「死の渓谷」と呼ばれる場でパッチたちの群れを襲撃します。
ゴルゴサウルスの策略により、群れから離れたパッチ、スカウラー、ジュニファーの三者は川に落ちて流されてしまいます。
このときパッチは「ジュニファーを助けるために川に飛び込んだんだ!」と言いはっていましたが、どう見ても滑って落ちていました。
それはいいんだけど、まるでビデオのように「逆戻し」をしてそのシーンを見せなくてもよかったんじゃ・・・この映画に壮大さなんてなかった。
〜群れについていく〜
パッチたちは巨大なエドモントサウルスの群れに遭遇します。<右の方にいる点みたいなのがパッチたち
エドモントサウルスは草食のため、パッチたちの脅威にはなりません。
それどころか、その行き先は食べ物のありかを示してくれるのです。
〜この細首突っつき野郎!〜
ジュニファーがけがのために休み、パッチは現れたカニとどうでもいい戦いを繰り広げました。
スカウラーは薄情なことに先に行ってしまいます。
パッチとジュニファーはオーロラを見て感動します。<見事なオーロラ
しかし、すぐにキロステノテスに襲われてしまいます。
パッチはキロステノテスという名前が言いづらいので、「細首突っつき野郎」と呼びました。センス悪い。
〜リーダーのスカウラー〜
パッチとジュニファーは群れに無事合流し、その後も幾度となく大移動をします。
パッチはすっかり青年に成長し、アレックスは「そろそろジュニファーに求愛しろよ」とたきつけます。
そんなとき、スカウラーが群れのリーダーを「頭突き勝負」で倒し、新しいリーダーとなります。
しかし、スカウラーはリーダーとなったことで、独善的な性格をあらわにしていきます。
自分勝手なルールを作ったばかりか、ジュニファーを奪っていってしまうのです。
スカウラーは近道のために凍った湖の上を歩くように群れに命じます。
しばらくしてパッチは危険に気づき、皆に「岸に今すぐ戻れ!」と叫びます。
スカウラーは向こう岸にたどり着き、パッチが率いた群れも無事でしたが、スカウラーは感謝もすることもなく「俺の群れを返せ!」とこれまた勝手なことを言いました。
群れを救ったのは、ほかならぬパッチなのに・・・
パッチは子どもの頃に木を倒す練習をしていたために、群れを新たな道へと連れて行きます。
残念だったのは、氷が割れて水に落ちたパキリノサウルスたちの安否がわからないことですね。
自力で氷から這い上がれるようには思えませんでした。
〜対決〜
スカウラーとパッチは再会し、当然スカウラーは群れを返せと主張します。
パッチは「群れはいい、しかしジュニファーは渡さない!」と男気を見せました。
しかし、頭突き勝負の結果はパッチの完敗でした。
パッチは木の下敷きになったばかりか、ジュニファーは「つまらないルール」のためにスカウラーについていってしまいます。
ここでジュニファーは「あなたのきょうだいでしょう?」とスカウラーを責めましたが、彼は「もう家族じゃないさ」と言い捨てました。
子どものころのスカウラーは、パッチに「俺たちはたったふたりの家族」と言っていたのに・・・
絶望のふちに沈むパッチの助けになったのは、アレックスでした。
アレックスは死んだパッチの父のことをふまえ、こう言います。
「命を投げ出すのは、大切なものを守ろうとしたときだけだぞ」とー
パッチは木を自分の力で持ち上げ、群れへと帰ろうとします。
〜本当のリーダー〜
パッチが群れへと舞い戻ったとき、スカウラーは「失敗」をしていました。
群れは、子どもの頃にゴルゴサウルスに襲われた「死の渓谷」を歩いていたのです。
スカウラーはゴルゴサウルスに襲われてしまい、彼は殊勝にも「逃げろ!」とパッチに言います。
しかし、パッチは逃げません。
さきほどのアレックスのことばを思い出し、ゴルゴサウルスに頭突きを食らわすのです。
群れもパッチに続いて、つぎつぎと頭突きをゴルゴサウルスたちに繰り出します。
パッチの頭突きは、ゴルゴサウルスの歯をも折ってしまいます。<この歯はやがて化石に・・・
ゴルゴサウルスたちは、すごすごと逃げ去って行きました。
スカウラーは今までのことを謝ります。
パッチはその勇気により、新しい群れのリーダーとなりました。
パッチとジュニファーは「結婚」します。
パッチは卵から孵った子どもたちを「ぼくらの未来」と呼びます。
お父さんとしてのパッチの成長を、見届けたくなりました。
〜北斗の拳っぽい?〜
自分はこの映画で、漫画の「北斗の拳」を思い出しました。
兄弟が権力争いをしていることが共通していますし、パッチはゴルゴサウルスを攻撃するとき「これは父さんのぶんだ!」などと言いながら頭突きをするのですから。
(北斗の拳には「これはシンの分!!そして…これは!!ユリアの分だ!!」と言いながら殴るという名場面がありました)
〜メッセージ〜
舞台は現代へと戻ります。
リッキーは歯の化石を持って、化石を発掘していたおじさんのもとへと走ります。
歯は、ゴルゴサウルスの化石の欠けた部分と、ぴったり一致しました。
このとき、アレックスは「ときには自分の力で歴史を知ることも重要だぜ!」と言います。
過去は決して体験できないものですが、「知る」ことはできます。
この映画は、太古の恐竜の物語と、その生きる力を教えてくれました。
〜結?〜
ゴルゴサウルスが画面をつきやぶって、3Dで飛び出してきたシーンで映画は幕を閉じました。<これがオチ
アレックスが言う「これが結(けつ)だ!と言ってもお尻じゃないぞ」というジョークが無理ありすぎましたね。
原語ではなんと言っていたんだろう?
それを知るためには、全国で2箇所しか上映していない字幕版を観るしかないのがなあ・・・本作のアメリカンジョークは、「ことば遊び」がある原語のほうが楽しめたのかもしれませんね。それでもスベってそうだけど。
子供と一緒だと良いと思う
お金をかなりかけてる映画だけど日本語版だと笑えないジョーク
きびしいなあ
幻想な美しいオーロラのシーンは満点で素晴らしい
私は原作(?)のBBC制作ドキュメンタリー(風)作品の方が好きだったので、ちょっと残念。あれはカメラワークや語り口なんかがかなり現実の動物ドキュメンタリー映像を意識してる感じで良かったのですが。古代の世界が舞台なのにしれっと生物学者や撮影クルーが登場してるものもありますし(笑)。映画もディープブルー(サメパニックじゃない方)みたいな感じで作ってくれればよかったのに。
見なくて正解でした。