70億分の1の奇跡 実写映画版「僕は友達が少ない」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
個人的お気に入り度:6/10
一言感想:意外と嫌いじゃなかった
あらすじ
聖クロニカ学園に転校してきた羽瀬川小鷹(瀬戸康史)は友達が全然できなかった。
ある日彼は、放課後の教室で「エア友達」と話していた三日月夜空(北乃きい)と知り合う。
夜空は友達作りを目的とした「隣人部」を結成し、子鷹を誘う。
続々と入部希望者が現れるが、皆一様に「残念」な人間ばかりだった・・・
同名の人気ライトノベルを原作とした実写映画です。
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本作はネットで実写化反対運動が起き、作者も実写向きでないことをわかっていながらやむなく許可したと語ったことでも話題になりました。
もともとアニメ展開がされていた作品ですし、2次元の「萌え」が実写になることにより崩れるのは致し方ないでしょう。
「俺は2次元にのみ理想を求める!」「3次元なんて現実じゃねえ!」のようなオタク層(偏見)にとって、この手の実写映画化は確かに歓迎すべきことではないのかもしれません。
そんな原作好きからのバッシングはともかく、自分はわりとこの映画が気に入りました。
本作は「コミュニケーション不全のダメな人たち」による奮闘物語です。
それは初対面で上手くしゃべれなかったり、妙に人前でふんぞり返ってしまったり、容姿のせいだったりします。
原作が多くの方の支持を得たのは、萌え萌えな女の子の魅力のためだけでなく、周囲の人と上手くつき合えない人たちの心を捕らえたためででしょう。
映画でもその精神は変わっておらず、友達を作りたいがために集まってきた「隣人部」の面々の行動は時に共感して笑え、時に切なくなります。
意外なまでに、まっとうな青春ムービーに仕上がっていました。
ちなみに原作に忠実なのは前半までで、後半は全く違う話になります。
ジャンルが変わったかのような変貌ぶりで、これはこれで楽しめました。
これは言ってしまうとネタバレになるので、↓に書くことにしましょう。
キャスティングもよかったです。
主人公でありツッコミ役の瀬戸康史、常に命令口調で話す北乃きい、巨乳の美少女役の大谷澪はライトノベルならではの
生徒会長(映画オリジナルキャラ)役の栗原類の熱演も嬉しかったです。
同じく熱演の神定まおは、親にこの映画を観てほしくないと願ったことでしょう(理由は観ればわかる)。
難を言うなら、「男の娘」の役はちゃんと男性に演じて欲しかったです。
※原作にはこういう設定があるけど(ネタバレ注意)
本作ははっきり言って欠点ばかりが思いつきます。
ライトノベルならではの極端なキャラ、
(アニメでなければ許されなさそうな)現実離れした展開、
日本映画にありがちな台詞で全部説明してしまう風潮、
PG12指定だけあってわりと下品など、
原作を知らない方でも拒否反応を覚える要素がてんこもりです。
下品さはわりと致命的で、どん引き必死の台詞やエロさは本作を貶めてしまう原因でしょう。
ちなみにスクール水着の美少女がシャワーを浴びる必然性のないサービスシーンがあったりします。まったくけしからん。
最大の難点はどこの層におすすめしていいかわからないことです。
原作好き→実写なんて認めるかよ!
一般の映画好き→こんなチャラチャラしたアニメオタク向け映画は観ないよ
子ども→下品だし
と、多くの層を遠ざけています。
唯一推薦できるのは、役者のファンくらいかなあ・・・と思うと切なくなりました。
ちゃんと原作のリスペクトもみられますし、なんとなく応援したくなったので、おすすめはしておきます(責任は取りません)。
自分のように「意外とハマる」人もいるかもしれませんよ。
あ、忘れていた、3次元の美少女好きには大プッシュでおすすめです。
以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓
〜残念な面々〜
前半は隣人部の面々が集まる様子が描かれています。
皆それぞれ、残念な要素を持っていました。
①羽瀬川小鷹:人前で緊張することと、地毛の金髪のおかげで誤解ばかりを産んでいた<不良から逃げる
彼はどう見ても高校生に見えないおっさん顔の不良にからまれていました。
不良たちを次々と倒す妄想を見せるシーンは楽しかったです(ドロップキックまでするし)。
②三日月夜空:キツい性格の上、「エア友達」と離すヤバいやつ<「トモちゃん」と楽しそうに話す。
夜空の「友達がいたらトモちゃんなんか作らない」に小鷹が「ごもっとも」などと心の中でツッコミを入れるのが楽しかったです。
③柏崎星奈:成績優秀、巨乳、高飛車<友達が欲しいのよ!
夜空は「リア充は死ね!」と星奈を突っぱねたばかりか、彼女に「肉(牛のような乳だから)」というあだ名をつけます。
④楠幸村:男だけど少女のような容姿
夜空に「男たるもの、このような格好をしていても溢れ出す男を見せなければならない」という名目でずっとメイド服を着せられていました。
⑤志熊理科:変態、PG12指定の原因
腐女子的な妄想をして股を濡らしたり、あそこを階段の角にこすりつけたり、小鷹に「久しぶりにセックスしましょう!」とほざいたりします。小鷹は「いつ(セックスを)したよ」と冷静なツッコミを入れます。
⑥羽瀬川小鳩:小鷹の妹で中二病。素の状態だと関西弁に。
アニメにハマったのがきっかけで、ゴシックロリータの服を着ています。
彼女を演じた久保田紗友が死ぬほど可愛いので全てOK。
登校時にはちゃんと制服を着ており、「あんちゃん」と小鷹に抱きついていたりしたので萌えました。
ちなみに広い家で兄妹ふたりだけで暮らしているのは、両親が海外出張に行っているからです。
⑦高山マリア:10歳のシスター。ことあるごとにう○こと言う。
なんていうかうるさかったですね。夜空にポテチを「あーげた(上に)」と言われるだけで活躍の場面がなかったのは残念です。
〜それぞれの日常〜
この映画で好きだったのは、それぞれの登場人物が「望まない日常」を過ごしている描写です。
・小鷹は隣の席の男子に消しゴムを拾われることを想像しているけど、拾ってもらえない
・星奈は男子を足蹴にしているが、一方で女子からブラジャーを机の中に入れられるいじめを受けている
・夜空は教室だけでなく、家でもひとりでコンビニ弁当を食べている
・メイド服姿の幸村は男子からいじめを受けている(制服着させてやってよ)
日その日常は望んだものではありません。
これは終盤の「世界」を創ったことにリンクをしています。
また、爆笑したのが星奈の父親役として石原良純が登場することです。
こいつが女中と濡れ場を演じるとかどう考えてもギャグだろう。いや、それを見る星奈の気持ちを思うと笑えないんだけど。
ちなみに原作では「柏崎天馬(ペガサス)というキャラなんですが、似ていなさすぎで原作ファンはブチ切れると思う。
〜バーチャル世界へ〜
星奈が「ギャルゲーの世界に行きたい」とつぶやいたことを聞き、理科は開発していたバーチャルシミュレーションゲーム「ロマンシング佐賀」をしないかと提案をします。
ゲームの世界はほぼ現実と変わらないようでしたが、違うことがひとつありました。
それは、みんなに友達がいることです。
そこでは小鷹の隣の席の男子が消しゴムを拾うばかりかカラオケに誘ってくれて、
星奈の話を皆が楽しそうに聞いてくれて、
夜空の周りでは友達が取り囲み、
幸村の周りでは男子生徒が接待をしていました。それ友達違う。<お前はそれでいいのか
「作り物だとわかっているが、この世界はにやけがとまらないな」と言う夜空が可愛いやら切ないやら。でも気持ちはわかります。
ちなみに原作でも皆がゲームをする描写があったのですが、それは単なる「想像」の描写でした。
バーチャルリアリティの世界を登場させちゃったのは、賛否両論あることでしょうね。
〜現実への浸食〜
一同はゲームに発生したバグのために現実世界から戻ってきましたが、ゲームの世界が気に入った星奈は盗みを働いてしまいます。
星奈はずっと部屋で専用のマスクをかぶり、ゲームをしていました(なぜ家の人間は止めないんだ・・・)
彼女を救うために一同が再びゲームの中に入ると、彼女は謎のチンドン屋の上で女王様気分になっていました。<何これ?
序盤にも少し登場したシーンですが、単に奇をてらっているだけだよなあ・・・
なぜかニップレスをつけた女性までいました。映倫審査が怖くないの?
またもバグが発生したために一旦引き返す一同でしたが、日常がいつもと違うことに気づきます。
小鷹のとなりの男子はふつうに消しゴムを拾い、夜空はいつも無視をする八百屋のおばちゃんに話しかけられ、不穏な空気が漂っていました。
決定的だったのが、幸村の住んでいた家が他人の家に変わっていたこと、そして嫌われ者のはずの星奈が次期生徒会長として拍手喝采を浴びたことです。
他のメンバーも同じく住む家を奪われ、部室で寝泊まりすることを余儀なくされます。
これに理科は「日常がゲームに浸食されはじめている!」というとんでもない理由を持ち出します。
学園青春ドラマから、非日常系SFになるなんて思いもしなかったよ。
〜悪いのは・・・〜
小鷹が忘れ、夜空がずっと覚えていたことがあります。
それはふたりが子どものころに会っていたこと、小鷹が「俺はもっと強くなってお前に会いにくる。お前はずっと俺の友達でいてくれよな」と約束していたことでした。
しかし転校生として夜空の前に現れた小鷹は強くはありませんでした。
不良からは逃げることを選択し、幸村がいじめられているのも助けませんでした。
夜空はひとり学校に向かい、そこで眠ります。
夜空を追ってきた小鷹は、生徒会長に殴られ続けます。
「なぜ殴り返さない?人を傷つけるのがいやなのか?
いや、自分が傷つけられたくないだけだな。
お前は他人が悪いと決めつけている。
さっさと気付け、ヘタれなのはお前なんだよ!
友達ひとり守れないで、何が男だ!」
この世界を創りだしたのが星奈ではなく夜空だと仮定するなら、これは夜空が小鷹に抱いていた本心でもあるのでしょう。
小鷹は「悪いのは全部俺だ!」と叫び、生徒会長を倒しました。
周りの環境が悪いのではなく、自分に原因があるー
それは多くの人が当てはまることなのかもしれません。
〜70億分の1〜
「この世には70億の人間がいて、出会う人間は運命付けられているらしい。
そうだとすると、それはものすごい奇跡だ」
それは幼いころの夜空がつぶやいていたものであり、彼女は「奇跡、起こせるかなあ」と言っていました。
小鷹と夜空は再び巡り会い、小鷹は約束通り「強くなった自分」を見せることができました。
これもまた、奇跡でしょう。
〜誰の世界?〜
一同は「現実世界」に戻ってきます。
いままで体験したのはゲームに浸食された現実ではなく、ずっとゲームの世界にいただけにすぎませんでした。
理科はゲームのことを「誰かの理想の世界なのでしょう」と口にします。
夜空は「肉(星奈)だな」と言っていましたが、自分にはゲームに参加した4人全ての理想の世界に思いました。
小鷹が自身の誤りに気づき、かっこういいところを見せるのは夜空の理想でしょう。
小鷹が「人を救う」ということにおいては、作中で助けてくれなかったことを寂しがっていた幸村の理想も入っていたのかもしれません。
みんなが家に住めなくなったのも、小鷹を含めたみんなが一様に(廃部が決まってしまった)隣人部にまた集まりたかったからでしょう。
小鷹は、ゲームの世界で「このままでもいいんじゃないかと思う」と言っていましたしね。
残念だったのが、幸村や星奈へのいじめが作中で解決されていないことでした。
現実世界でも、小鷹のかっこういいところを観たかったです。
〜カラオケ〜
中盤で隣人部は「みんカラ(みんなでカラオケ)」に行っていました。
夜空が「背番号のないエース」を歌い、はじめはまばらな拍手をしていた隣人部でしたが、最後には楽しそうに手拍子をしていました。
そのときに挟まれる「みんなで花火」の映像も含めて、隣人部のメンバーの距離が縮まったと思えるいいシーンでした。
ただ、クライマックスで星奈が「あんたより私の方がカラオケ上手いんだから!」とマイクを手に歌うのはちょっと恥ずかしかったです。
〜僕は友達が少ない〜
中盤で小鷹は「放課後は部室に集まるけれど、ふだんは声をかけたりしない」と、「隣人部の奇妙な関係」をナレーションで語っていました。
隣人部の面々は、皆お互いを友達とは呼んだりしません。
彼らは隣人部以外で、ひとりとして友達を作っていません。
それなのに、本作のタイトルは「僕は友達が少ない」なのです。
「いない」ではなく「少ない」なのは、隣人部の面々が「友達」に含まれているからでしょう。
※注:じつは原作には、タイトルにこんな設定が……(超ネタバレ注意)
最後に小鷹は机を蹴り上げた生徒会長を殴ろうとしましたが、代わりに夜空が殴ってくれました。
このときに小鷹は「僕は友達が少ない」と思っています。
決して口にはしないけど、夜空は小鷹の大切な友達になった(もうなっていた)に違いありません。
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修正しました!
ありがとうございます。
ちなみに今日間違えてキョウリュウジャーの劇場に入りかけましたw恥ずかしかった。
ちょっと配役がイメージと違うかも?
http://birthday-energy.co.jp/ってサイトは平坂読さんのことを才能は「石」で、まさにお友だちありきの人生で、協調性和合性の人。 なんて書いてましたよ。今年は害年なのでこの映画も残念なのかも。コラムをぜひ読んでね♪
「ハレる運命2014」も配信中!!