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ただ、一人の青年を見つめて 映画「フルートベール駅で」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー

今日の映画感想はフルートベール駅で(原題;Fruitvale Station)です。


個人的お気に入り度:8/10

一言感想:「主張」はなくてもいいんだなあ・・・


あらすじ


2009年の新年を迎えたばかりフルートベール駅で、22歳の黒人青年オスカー・グラント(マイケル・B・ジョーダン)は警官に銃で撃たれてしまう。
なぜ彼は撃たれなければならなかったのか。彼はなぜフルートベール駅に来たのか。映画は、彼が過ごした1日をただただ綴っていく・・・




実在の事件をもとにつくられた映画です。
この映画の素晴らしいところは、「現代の黒人の青年」の姿を描いたことにあると思います。

昨今は黒人を主人公とした映画がトレンドのようで、評価の高い作品が多く世に出されています。
ヘルプ ~心がつなぐストーリー~」「ジャンゴ 繋がれざる者」「42 世界を変えた男」「それでも夜は明ける」・・・そられも素晴らしい映画でしたが、すべて黒人が虐げられていた「過去」が主題でした。

しかし、この「フルートベール駅で」は今からわずか5年前の2009年の出来事です。
当然、かつての奴隷などの差別は無くなっており、人々はむやみやたらに黒人を貶めたりはしません。

では、そのような時代に、なぜ無抵抗の黒人青年・オスカーが警官に撃たれなければならなかったのか?
ここが物語の焦点になってきているのです。

その「なぜ」を丹念に描きながらも、この映画ではそのオスカーをヒーローのように扱ったり、銃を撃った警官を貶めたりはしていません。
あくまで「黒人青年の1日」を通じて、客観的な立場でこの事件を描いています。

公式ページにある監督のインタビューを抜粋してみます。

裁判の間、状況が政治化するのを目の当たりにしていた。その人の政治的な立ち位置によってオスカーは、 何ひとつ悪いことをしていない聖人か、又は受けるべき報いをあの晩受けた悪党かのどちらかに分かれた。 その過程で、オスカーの人間性が失われてしまったように僕には感じたんだ。 亡くなったのが誰であろうと、悲劇の真髄はもっとも近しかった人々にとってその人がどういう人だったのかというところにある。

事件に関わる者は、物事を「いい」「悪い」と極端な二元論で語ることが多かったのでしょう。
監督の目的は、そうした主張をせず、オスカーを複雑な心境を持つ「人間」として描くということだったのです。

映画のオスカーはとっても人間くさいです。
明日の日銭を気にして、時には恋人に文句を言い、可愛い子どもに無償の愛を注ぐ、どこにでもいるような青年です。
彼が過ごした1日を通して、この事件を「感じる」ことができる映画なのです。
まさしく、映画でしかできない体験でしょう。

これほどのことを描きながら、上映時間が85分というのもすごい!
今回が初の長編映画となるライアン・クールガー監督はまだ27歳。これからの活躍も大期待です。

難点は、最後まで観ないとこの映画の良さがわからないことでしょうか。
それもそのはずです。映画の大半は黒人青年の(ある意味で退屈な)日常を描いているのに過ぎないのですから。
しかし、それは彼が凶弾に倒れる前のかけがえのない1日です。
映画を観終わった後は、その1日がいかに大切なものであるかが気づけるはずです。

できれば、予備知識なく観ることをおすすめします。
知っておくのは「黒人の青年が無抵抗のまま撃たれてしまう」という事実だけでよいでしょう。
事件の背景を知らなくても、この映画は大切なことを教えてくれるはずです。

以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓












〜クビの理由〜

オスカーはスーパーのバイトをクビになり、2週間ばかり恋人のソフィーナにもそのことを言えないでいました。
オスカーは「給料が半分でもいいんだ!」「また(ドラッグの)売人をやらせたいのか?」と主張しますが、店長は「もう他の者を雇った」「お前はいいやつだが、すまない」と復職を拒否しました。

復職は無理だよ<仕事が必要なんだ!

これはオスカーが黒人だからなのか、店長は差別をしているのか、とも思わせます。
しかし、オスカーは遅刻を繰り返しており、後にソフィーナにもそれがクビの理由だと告げています。

黒人だからの差別なのか、遅刻が原因なのか、どちらなのか(どちらもなのか)はわかりません。
この映画は、二元論で語らず、あくまで「中立」の立場で描いているのです。


〜白人のカード〜

オスカーも別に白人を嫌っているわけではありません。ドラッグディーラーの(元)仲間にもわずかに残ったクサ(大麻)をあげていました。
妹には「お母さんの誕生日カードは黒人のものしてね!」と言われていましたが、実際に持って行ったのは白人のカードでした。

白人のカード<これでいいんだ

彼は白人に理解があり、また差別というものも感じていなかったのでしょう。


〜犬の死〜

温厚そうに見えたオスカーでしたが、彼が怒ったシーンが2つだけあります。
ひとつは、見ず知らずの車の運転手が犬をひき殺したときのことです。

彼は助けを求め、犬が死なないように祈りました。
しかし、犬が絶命すると墓もつくらずにその場所に置いていってしまいます。

彼は「生きている」ことにこそ価値を求めていたのでしょう。
その彼が、「無価値の死」に近づいていっているとはいうのは、この上ない皮肉です。


〜結婚している男〜

オスカーたちは花火を観に行く途中でトイレを借り、気のよい白人の男と知り合います。
男は結婚8年目で、恋人と結婚しない理由がお金だったらつまらないとつぶやき、指輪は盗んだんだというウソをも言って、楽しそうに去っていきました。

オスカーはお金がないこと、職がないことに悩んでいましたが、それも「つまらない」ことであり、もっと大事なものがほかにあるのかもしれません。


〜虫の知らせ〜

子どものタチアナは、爆竹の音を聞いて「鉄砲の音がするわ、なんだか怖いの」とオスカーに告げていました。
彼女はこれから父親が死んでしまうことを、どこかで予感していたのでしょう。

また会える<また会える?


〜悲劇〜

この物語で最も悲劇的なのは、母親が「電車で行ったらどう?」と提案をしてしまったことでしょう。
スーパーで知り合った白人の女性がオスカーの名前を呼んだことも、乱闘の原因となってしまいました。

母はこのことを深く後悔します。
白人の女性も、自分を責めたでしょう。

しかし、未来は誰にもわからないことです。
彼女たちのことは、誰一人責めることはできません。


〜可哀想なタチアナ〜

オスカーが怒ったもうひとつのシーンは、2年前の刑務所に入れられたオスカーが母親と面会をしたときのことでした。
オスカーは自分の顔についた傷のことをはぐらかそうとし、母親は「あなたはもう充分にあの子(タチアナ)を可哀想な目に会わせているわ」と責めました。

考えたことが?<あの子のことを考えたことが?

彼が怒ったのは、自分も変わりたいと願い、子どものことも大切に想っているのに、それを責められたからなのでしょう。
せっかく来てくれた母親の(大晦日の)誕生日を祝えず、「悪かった、ハグしてくれよ!」と訴えるオスカーが哀れに思えました。
オスカーは2年後の大晦日に、クサを捨て、恋人にクビになったことを告げ、タチアナと楽しそうに遊び、母親の誕生日を祝いました。彼は、これから変わりたかったのでしょう。


〜最期の光景〜

オスカーは撃たれ、皆の必死の祈りも届かず、明け方に息を引き取りました。
オスカーが最期に観たのは、タチアナを背負って家に帰ろうとしている自分の姿でした。

一緒に帰ろう<一緒に帰ろう

最期の一日、オスカーは(ズルをして)タチアナと競争をしながら車に乗っていました。
しかし、彼が本当に望んだのは「タチアナと一緒に帰る」ことだったのです。


〜彼の望み〜

本作では、「オスカーが変わりたかった」ことが描かれています。

やりなおしたい<恋人にやりなおしたいと告げるオスカー

彼はもういません。
死んでしまっては、変わることも叶いません。
死とは、彼の「これから」を全て無に帰してしまう残酷なものなのです。

しかし、残された者もいます。
最後には、実際の映像でタチアナの姿を見せてくれました。
彼の短く、尊い人生を、きっと伝えてくれるに違いありません。

おすすめ↓
『フルートベール駅で』 “叫ぶこと”と“悼むこと” : 映画批評的妄想覚え書き/日々是口実
「力強く、衝撃的な大傑作!」 - Yahoo!映画(「横道世之介」のネタバレがあるので要注意!)

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

2014-03-27 : 映画感想 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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『ハーモニー』
『ガールズ&パンツァー 劇場版』
『PAN』
『ギャラクシー街道』
『UFO学園の秘密』
『ファンタスティック・フォー』
『進撃の巨人 後編』
『キングスマン』
『リアル鬼ごっこ(2015)』
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<2015年上半期>
『極道大戦争』
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『バードマン』
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<2014年下半期>
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<2014年上半期>
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『劇場版銀魂 完結篇』
『モンスターズ・ユニバーシティ』
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<2013年上半期公開>
『箱入り息子の恋』
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『クラウドアトラス』
『横道世之介』
『脳男』
『ライフ・オブ・パイ』

<2012年下半期公開>
『レ・ミゼラブル』
『悪の教典』
『バイオハザードV』
『るろうに剣心』
『プロメテウス』
『桐島、部活やめるってよ』
『アナザー Another』
『ヘルタースケルター』

<2012年上半期公開>
『スノーホワイト』
『ファイナル・ジャッジメント』
『メン・イン・ブラック3』
『貞子3D』
『TIME/タイム』
『ドラゴンタトゥーの女』

<2011年下半期公開>
『ミッション:インポッシブル4』
『アントキノイノチ』
『ミッション:8ミニッツ』
『ツレがうつになりまして』
『トランスフォーマー3』
『コクリコ坂から』

<2011年上半期公開>
『ブラック・スワン』
『八日目の蝉』
『手塚治虫のブッダ』
『わたしを離さないで』
『パラノーマル・アクティビティ2』

<2010年公開作品>
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