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不幸の原因、告白の真意 映画「ある過去の行方」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー

今日の映画感想はある過去の行方(英題:The Past)です。


個人的お気に入り度:8/10

一言感想:過去ばかりに囚われてもだめだなあ・・・


あらすじ


アーマド(アリ・モサファ)は、離婚手続きを行うため、4年前に別れた妻マリー=アンヌ(ベレニス・ベジョ)が住むパリに戻ってきた。
マリーには新しい恋人のサミール(タハール・ラヒム)がおり、家には長女のリュシー、次女のレア、サミールの連れ子のファッドが住んでいた。
長女のリュシー(ポリーヌ・ビュルレ)の帰りは毎日遅い。実はリュシーには、家に帰りづらい理由があり・・・




彼女が消えた浜辺」「別離」のアスガー・ファルハーディー監督最新作です。
今までの作品はイランでつくられていましたが、本作はフランスのパリが舞台となっています。

これまでの監督作品のすべてに、以下のような特徴があります。

①男女のドロドロしたいざこざを描く
②明確な悪意を持っている者が誰もいないのに、みんな不幸になっていく。
③序盤の何気ない描写から人間関係が見えてくる
④衝撃の展開が次々と押し寄せるサスペンス劇
⑤役者の鬼気迫る演技がすさまじい
⑥BGMはほぼなし
⑦土地柄(宗教や文化)ならではの要素が作品に影響を及ぼしている

もうね、①や②のような内容が好きな人はぜひ劇場で観てください。
アスガー監督の作品は、「どういう人生を送ったらこんな映画が撮れるんだ?」と思わせるほどの男女関係の“こじれ”を描いています。
誰もが相手を貶めようとして行動しているわけでもないのに、ほんの少しの歯車のズレにより人間関係がどんどんもつれていき、どんどん不幸のスパイラルに陥っていくのです。

その過程を観るのは精神的にツラいのですが、画面に釘付けになるほどの面白さがあります。
③のような特徴を持つため序盤はやや退屈なのですが、開始から20分ほど経つと、衝撃の展開に驚き、また伏線がいかに巧みに張られている作品であるかに気づけるはずです

今作で主人公のひとりを演じたベレニス・ベジョは、「アーティスト」ではチャーミングな女性を演じていたのですが、今作では正反対の役を演じており、その観客をひきつける力は圧巻のひと言。子役も含めて超・演技派が勢揃いしているので、役者の演技を重視する人にとっても必見の内容でしょう。

以下に登場人物を紹介してみます。

マリー=アンヌ<マリー(ベレニス・ベジョ):神経質っぽい女性
アーマドアーマド(アリ・モサファ):マリーの元・夫
サミールサミール(タハール・ラヒム):マリーの現在の恋人
リュシー<リュシー(ポリーヌ・ビュルレ):ある秘密を抱えている長女
ファッドファッド(エリス・アギス):何かを知っていそうなサミールの息子

彼らに隠された過去とは何であるのか、“不幸”の原因は誰にあるのか、その答えを探すサスペンスとして、本作は高い完成度を誇っています。
ごく自然な会話でのみで、次第に人間関係の輪郭がくっきりしてくる描写は、見事というほかありません。

好き嫌いはわかれる内容です。
登場人物の境遇を考えるだけで胸が痛くなりますし、観ていてちっとも楽しくありません。

しかし、映画でしか体験できない、至高のドラマがそこにはありました。
映画好きの方こそ、劇場で堪能してください。

以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓
本作は上映館が少なく、現時点で観た人はごくわずかだと思うのですが、これは語ろうとするとネタバレしないわけにはいかないので・・・未見の人は読まないで!











まず、本作で徐々に浮かび上がる事実を、“告白”した人物ごとにわけてみましょう。

〜長女・リュシーの告白〜

リュシーは家に帰ることをいやがっていました。
その理由は、母親・マリーとの仲が悪いことだけではありません。
リュシーは、自分のせいでサミールの妻・セリーヌが自殺したと思っていたのです。

彼女の告白は以下です。

①セリーヌが植物人間状態になっている
②セリーヌが植物人間になったのは、洗剤を飲んで自殺未遂をしたため
③自身が、マリーとサミールが浮気している内容のメールを、セリーヌに送ってしまった。

アーマドは③について、「ママにとって重要かどうかが大切だ。ママには知る権利がある」と、「一生隠すか」「マリーに打ち明けるか」の2択をリュシーに迫ります。
誰にも言わなかったら・・・<誰にも言わないのか?
しかし・・・アーマドがマリーにこのことを伝えると、マリーは声を荒げて激昂しました。

アーマドは家から出て行ったリュシーを追いかけて「隠せば一生苦しんでいた」と伝えますが、リュシーは「私はもう苦しんでいないって言うの?」と答えました。
打ち明けても、打ち明けていなくても、リュシーは苦しんでいたのでしょう。


〜不法労働者・ナイマの告白〜

サミールのクリーニング店で働いていたナイマもまた、不幸の連鎖の原因を語ります。

彼女の告白は以下です。

①クリーニング店に客として訪れたマリーと、セリーヌが「ドレスの染み」を巡って言い争っていた
②自身が、リュシーにセリーヌのメールアドレスを教えてしまっていた
③セリーヌは、サミールの浮気相手が自身であると勘違いしていた(だから、セリーヌは自分に見せつけるため、お店の1階で洗剤を飲み自殺を図ろうとした)
④自分はセリーヌに嫌われていた
⑤ドレスの染みはセリーヌがつけたものである

ナイマはサミールに追い出されてしまい、サミールはファッドに「ナイマは謝っても許されないほどの悪いことをした」と諭します。
しかし、彼女もサミールの(マリーとの)浮気により、一連の事態に巻き込まれたにすぎません。


〜サミールの浮気〜

何が悪かったのでしょうか。

この一連のいざこざは、サミールの浮気によるものではあります。
しかし、そもそもアーマドがイランに別居してしまったことも浮気の理由ともとれます。
(リュシーはアーマドに「ママがサミールを好きなのは、あなたに似ているから」とも言っていました)


〜マリーの真意〜

マリーは離婚手続きをする前に、アーマドに妊娠を告白していました。
アーマドは後に「なぜあのときに告白した?俺の復讐のためか!」と怒ります。

思い返すと、マリーは空港でアーマドに“笑いかけて”いました。
とまどっているけど<会う前は戸惑っていたけど
笑いかけられると<アーマドが笑って
笑っちゃう<自分も笑う
これが、別れて自身を放っておいたアーマドへ「復讐ができる」という思いによる笑みだったらとしたら・・・
ただ久しぶりに会えて(笑いかけられて)うれしかっただけとも取れますが、真実はわかりません。


〜子どもの目線〜

子どものファッドは、序盤にマリーの家の2階(しかも2段ベッドの上段)で寝ようとしていました。
これは、母親のセリーヌが1階で死んだという事実があったためでしょう(彼はサミールのクリーニング店で、「1階は怖いもん」と言っていました)。

サミールとともに地下鉄に乗ったファッドは、途中で降りて「マリーの家に帰りたい」と訴えます。
このとき、ファッドは、母親の自殺についても口にします。
「どうしてママの機械(延命装置)を取らないの」とー

サミールが「ママが生きたいか、死にたいかがわからないからさ」と言うと、「死にたいさ、自殺したんだもん」とファッドは答えます。
子どもは、大人が考えることを避けている事実も、はっきりと口に出すことができるのでしょう。

ファッドは序盤にトウモロコシにナイフを突き立てたとき、自身の手を切ってしまっていました。
それも、(自殺をした母の気持ちをわかりたいがための)自傷行為のようなものであったのかもしれません。


〜何がほんとう?〜

本作は"過去"をタイトルに冠しながらも、ただ一度として過去を映像して描くことはありません。
あるのは登場人物の告白のみ。何が真実なのかはわかりません。

もしセリーヌが浮気のメールを読んでいたら、ナイマへの疑いは晴れる(少なくとも何かを言っていた)はずです。
ナイマの目の前で、見せつけるように自殺するはずもないでしょう。
ナイマの「嫌われていた」「1階で死んだのは私に見せつけるため」というのも、彼女の主観による告白にすぎません。

マリーの妊娠にしたって、真実であるかはわかりません。
サミールが避妊をしなかったことは事実でしょうが、妊娠2カ月というのはマリーの自己申告によるものです。
マリーがタバコをあれだけ何本も吸うのも、実は妊娠をしていないという事実を示しているように思いました。

リュシーがメールを送った事実はどうでしょうか?
彼女の反応を見るととても嘘であるようには思えませんが・・・自分が自殺の原因であるという罪をかぶろうとしたのかもしれません。


〜ラスト〜

植物人間状態のセリーヌの反応(機械に爪でひっかいた傷をつけたことと)について、医師はサミールにこう言っていました。

「結果は出なくても疑いは残ります。絶対とは言えないんです」

これも、どれだけ疑っても「何がほんとうかわからない」ことを示しているのでしょう。

サミールは一度はアロマの入った段ボールを持って去ろうとしますが、思い立ったように病室へ戻ります。
彼は、ベッドを起こし、自身に香水を吹き付け、「もしにおいがしたら、手を握ってくれ」とセリーヌに訴えました。

手は、(映っている範囲では)握り返されることはありませんでしたー
しかし、これは過去ばかりに囚われていたサミールが、「これから」に希望を見るというラストなのでしょう。

アーマドも、帰国前に「もう過去は振り返らない」と口にしていました。

過去ばかり見ても疑いが残るばかり。
登場人物は皆、過去の誤解、軋轢、後悔のために苦しんできました。

そうであるなら、これからの未来に目を向けたいものです。

おすすめ↓
「今、浮気している人はこれ観て目を覚ませ。」 ある過去の行方/ユーザーレビュー - Yahoo!映画
『ある過去の行方』 過去はすぐそこまで忍び寄っている : 映画批評的妄想覚え書き/日々是口実

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

2014-04-24 : 映画感想 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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