だっふんだ 映画「キカイダー REBOOT」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
個人的お気に入り度:3/10
一言感想:原作で描かれたのはそういうことじゃ・・・
あらすじ
キカイダーが善と悪で悩むよりも、女子大生が自分の将来について悩む割合のほうが高い話。
*メタメタに書いているのでこの映画が好きな方、製作者の方にはごめんなさい。
石ノ森章太郎の漫画、およびそれを原作とした特撮シリーズ「人造人間キカイダー」のリブート作品です。
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自分は特撮シリーズを観ていた世代ではないですが、原作漫画は読んでいました。
原作は、並あるSFロボットものとは一線を画す内容です。
主人公のキカイダーことジローは、アンドロイドでありながら「良心回路」という善の心を持っています。
しかし、この善の心は“不完全”であり、ジローはヒロインや第3者に危害を加えるようになってしまいます。
作品の根底にあるのは、童話(ディズニー映画)の「ピノキオ」。ご存知のとおり、ピノキオは人間になりたいことを願っており、ピノキオの良心はコオロギというかたちで登場してます。
ここで定義される「機械」とは、「ただただ命令を聞くだけのロボット」。反対に、善の心を持ち、悪い命令を聞かないのであれば、それは人間の心を持っていると同等だとされるのです。
しかし、ジローは良心回路が壊れれば、「機械」と同等に悪いことをしてしまう。まさにピノキオと同じ状態なのです。

悩み続けたジローが、どのようにして人間の心に向き合っていくか……そこが見所になっています。
そして、ジローは物語の最後で衝撃的な行動を起します。
やや唐突ではありますが、哲学的かつ深い余韻を残すラストは、SF好きにこそ観てほしいと思えるものでした。
で、今回の映画版にもそういう要素を期待していたですが、清々しいまでに裏切られました。
何が悪いって脚本が悪い。
登場人物の理解不能な行動、設定の矛盾、登場人物が自分の想いをベラベラとしゃべるスタンス(これは特撮ものではむしろ熱いはずなんだけど)など、原作のことを抜きにしてもいろいろヒドいです。
何より残念なのが、上記であげたような原作の奥深さがこれっぽちも描かれていないことです。
詳しくはネタバレになるので↓に書きますが、がっかりを通り越して絶望を感じるほどでした。
基本的に主人公たちがうじうじ悩むばかりの話なのですが、ヒロインの女子大生が自分の将来について悩むシーンがクローズアップされまくったのはマジでウンザリしました。
ヒーローものにおいて、その需要があるとは思えません。
ウンザリした点のもうひとつが、やたら現代の文化を悪者にしたがることです。
脚本を書いた人は、スマートフォンやインターネットが大嫌いなんだと伝わってきました。伝えてほしかったのはそこじゃねえよ。
いいところもあるんです。
まず、アクションのクオリティは存分に高く、CGも含めて安っぽさを感じさせません。
入江甚儀演じるキカイダーと高橋メアリージュン演じる女ターミネーターとの肉弾戦など、絵面だけで楽しめるシーンもじゅうぶんにあります。
脇をかためるおじさん俳優陣も見所のひとつ。鶴見辰吾、本田博太郎、石橋蓮司などの大ベテランの出演だけでわりと楽しめます。
意外(失礼)だったのは、光明寺博士役の長嶋一茂がハマりまくっていたこと。けっこう俳優としてオールラウンダーなのかもと思えました。

何より、「新 仮面ライダーSPIRITS」などで知られる、村枝賢一さんによる新しいキカイダーのビジュアルが最高に格好いいです。
原作漫画では、キカイダーは自分の身体を醜いと思っているのですが、今回ではそんな悩みはなさそうですね。


この時代に、古き良きSF(特撮)ヒーローを蘇らせようというコンセプトの本作を、自分は応援したいと思っていました。
若い人にとってはあまり興味を持たない内容かもしれない、興行成績も芳しくないかもしれない、だからでこそ人にも薦めるようにしたいと……
でも、肝心の作品が良くなければ人にはとてもオススメはできませんね。
脚本担当の人は「電人ザボーガー」の爪の垢を煎じて飲みつつ、原作を読み返してください。
以下、結末も含めてネタバレです↓
~良心回路ってそういうことだっけ……?~
さて、今回の主人公が悩んでいるのは、原作漫画のような良心を持っているのに悪いことをしてしまうとか、悪いことをしたから人に疎まれるようになるとか、そういうことじゃないです。敵にとどめをさせないことです。
え?と思われたのかもしれないのでもう一度言いますが、今回の主人公が悩むのは敵にとどめをさせないことばかりです。
主人公のジローは、格闘性能が同等のはずのアンドロイド・マリを倒すことができず、ことあるごとに「お前は不完全なロボットだ」と言われます。
つまりですね、
良心回路を持っている→敵のロボットを壊すのは悪いことだよ→最後まで破壊できない→良心回路があるからいけないんや
ということです。どういうことだよ。
いや、その理屈自体は理解できるんです。
残念なのは、原作漫画で描かれていた良心回路の認識と全く違うことです。
原作の良心回路は主人公になくてはならないものだったのに、映画では良心回路が邪魔なものになっているんです。
そうしたことで映画ならではの新たなドラマが紡がれていたらよかったのですが、最終的にジローがした行動は自分で良心回路をぶっ壊して相手(ハカイダー)を倒すということでした。
原作漫画で提示されたあのメッセージはどこへ行ったよ。
ただ、ヒロインの「不完全なのは、人間だから」というメッセージはよかったです。
人やロボットを傷つけることをよしとはしないのは人間らしいことだと、良心回路そのものは肯定されています。
最後にジローが良心回路を壊したもの、その肯定してくれた人間らしさを捨ててまで、守りたいものがあったという自己犠牲の姿を描いたためのものでしょう。
でも、ジローは序盤で戦った重機型ロボットを躊躇せずに川へ叩き込んでいるよね。人型じゃないからそれができるの?そりゃじゃあ「良心」とは言えない気がするなあ。
~バトルのツッコミどころ~
高層マンションの部屋に機動隊が突入するシーンには度肝を抜かれました。<ここ何階だよ?
<屋上へ連れてこられるヒロインとその弟
<助けに来たキカイダーは重機型ロボットとバトル!
何が素敵って、ヒロインとその弟が屋上で機動隊に銃を突きつけられる必然性がまったくないことですね。ヘリ用意してさっさと連れて行け。
しかし、このキカイダーVS重機ロボットのアクションのクオリティは高い。(無理矢理作られた)ビルの屋上というシチュエーションにおいてちゃんとヒヤヒヤさせてくれます。
キカイダーの「ここからは、機械的に行こう」という宣言も格好いいですね。
探偵の服部が屋上に登ってきてヒロインを助けたのにも大笑い。お前ビルから閉め出されていたじゃん!どうやって登ってきたんだよ。
あと、途中で追っ手として現れたのが、「逃走中」のハンターにしか見えないのにも笑いました。*画像はイメージですが、ほぼそのままです。
ラストバトルでは、キカイダーが地面に埋められるのが愉快でしたね。<身動き取れません。
それ以外では、単純な肉弾戦が多くダレ気味だったのが残念。
電磁エンドも最後の1回だけでしたね。
※以下の意見をいただきました。
映画だからこその最後の一回だったのだと思います。
電磁エンドと言えばまさにトドメの必殺技で、テレビシリーズではその一撃で締めくくりとなる技。
だからこそ、伝家の宝刀として、それまでの戦闘で見せることなく最終決戦での最後の一撃にとどめたのだと思います。
~スマートフォンなんか大嫌いだ~
序盤のヒロインの台詞からぶったまげました。
「白馬の王子様なんて現れるはずもない。現実の男性が見つめているのは、スマホの画面や目に見える幸せくらいのもの。だったら、アニメや漫画の世界にひたっているほうがいい」
まさかヒーローもので、こういう現実逃避系の女子が出てくるとは……このシーンではスマホで遊んでいる若者がとってもバカっぽく見えるように(無駄に)上手く演出されています。
※なんであんな性格なのに友だちが多いのかが不思議というコメントをいただきました。あのやたらしゃべってくる友だちはウザかったよね
それだけでなく、ヒロインはスマホで知り合いの博士にメールを送ったために、追っ手に見つかってしまいます。そんなにスマホが嫌いか。
メールを送ったから見つかる、というのも変。電源入っているだけで特定されるだろ。
~しょせんはケータイ小説です~
探偵の服部は「ネット・ジャーナリスト」という肩書きを持っているのですが、知り合いの機械屋から「最近の若者は何でもネットとつけりゃあ様になると思っていやがる」と露骨に批判されます。
ちなみに服部はライターの仕事だけでは食べていけないので、ガキ向けのケータイ小説を副業として書いているそうです。
今はケータイ小説はだいぶ廃れたと思うのですが。
しかも、ラストでジローがハカイダーと相打ちになったとき、服部は「いい小説が書けそうだ」とほざきました。
自ら「この映画の物語はケータイ小説なみに稚拙だよ」という自虐ギャグなのでしょうか。ついていけません。
~どうでもいいヒロインの自分探し~
ヒロインは自分の将来についてどうしたらいいか迷っていて、「何かが見つかるかも」ということだけで、たった1人の家族である弟を置いて4年間の留学をしようとします。
一応、弟は寮生活をはじめるとのことですが、せいぜい小学生高学年ほどの子どもを置いていくのはなあ……
ヒロインと弟は悪の組織(この辺の事情はもうちょっと複雑なのですが割愛)に連れさられた後にあっさり解放されるのですが、ヒロインは留学前にジローに会おうとはしません。別れがツラくなるというのはわかるのだけど。
ヒロインは、ハカイダーと戦闘中のジローを止めようとする弟と服部の呼びかけにも応じません。
ここで観客の気持ちを代弁したように、弟は「姉ちゃんが何を悩んでいるのかさっぱりわからねえ!」とツッコミを入れます。
けっきょく、ヒロインは壊れたハカイダーを抱えて「私、やりたいことを見つけたわ。お父さんみたいに、ジローを直してみせる」ってと夢を見つけることができました。それはちゃんと勉強している科学者に任せてやってもいいんじゃないだろうか……。
余談ですが、弟の身体のなかに、光明寺ファイル(未来のアンドロイドに関する設計図)を入れておくというのは非道すぎるだろ。原作漫画でこの役をしていたのは別の子どもで、その親はそのことで責められていました。
※だったらはじめから事情話して連れて行けよというツッコミをコメントでいただきました。
~ドリフ~
ほかにもギル博士が光明寺博士の嫉妬だけであっさりとハカイダーに変身を遂げたり(人間がアンドロイドになってしまう葛藤はゼロ)、
総理と大臣が話し合う場面が特に物語に影響をおよぼしていなかったり、
続編のフラグを立てたり(まずちゃんと話を作れ)
と、煮え切らない描写ばかりで、ヒーローものとしての熱さが感じられないのが残念です。
ほかにも無駄だと思う設定がもうひとつ。主人公のジローはザ・ドリフターズが大好きなのです。
彼のお気に入りのギャグは「志村、後ろー!」と「だっふんだ」。
このギャグが披露されたときに、劇場内で乾いた笑いがそこらじゅうから聞こえました。
ついでに好きな音楽はYMOだそうです。
これも脚本家が「現代は嫌い!昔のほうがよかった!」と思っているからでこその描写だよなあ……。
今だって、いいところはいっぱいありますよ(ネットでこの映画の不満を言えることとか)。
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「ミツコには秋山莉奈を配して欲しかったw」 キカイダー REBOOT/ユーザーレビュー - Yahoo!映画
> メールを送ったから見つかるのは変
仕様が一昔前のケータイのようなものなのかもしれない。
いえ実際、この手のIT系ギミックがまともに描かれている作品って殆どないです。
制作者側が知らないというのもあるでしょうが、現実に則して描いても、一般の観客には理解できないということも多いので、演出面から考えると仕方のない部分もあるのですが…。
> 今はネットでこの映画の不満を言える
制作者側「お前には天国だが俺には地獄だ」
アクションは文句無しでした!
特にマリ役の高橋メアリージュンさんはビジンダーに変身しなくて、人間形態であの強さですからね。
>序盤のヒロインの台詞からぶったまげました。
世の中見下して置いて、自分は空想に思いを馳せているから高尚・・・?理解不能でした。
でも友達は多いという不思議・・・
>余談ですが、弟の身体のなかに、光明寺ファイル(未来のアンドロイドに関する設計図)を入れておく
しかも摘出後に日常生活へ復帰させてくれるんですよね。
なら最初から事情を話して取らせてもらえば良かったのでは・・・
>総理と大臣が話し合う場面
この辺、最近議論になっている「集団的自衛権」についても言って置きたい!という感じがしました。
そういうのはオリジナル作品でやってほしいです。
個人的井は数年前のギャバン THE MOVIEよりはマシだったかなと感じた程度です
確かに脚本には不満だらけなので続きを作る気なら脚本を変えてほしいですね
何か全体的に説教臭かったです
なんでや…なんで仮面ライダーTHE FIRST、NEXTと言いギャバンと言い、
リメイク・リブートするとどれもこれも微妙な出来になってしまうんや……
ストーリーの大まかな流れは最近の特撮っぽいなーと思っていましたが、
ミツコの行動、言動にいちいち「?」と思ってしまいフラストレーションが……
正直ミツコが普通の女の子ってだけで大分面白くなったんじゃないかなと思います。
機械が嫌いと言う理由も正直腑に落ちませんし……
良心回路もロボット三原則的な描写になっているのが残念でした。
「現代版良心回路はこういうものなんだよ!」と割り切ったとしても、それにしても……
良心回路はキカイダーのストーリーの核とも言うべき要素だったのでもっと大切にしてほしかったです。
あと「スイッチ・オン」と「ここからは……」はもう少し、せめて最終決戦では使ってほしかった……
前者は変身のかけ声、後者は言わば決めぜりふでもあるのに、最初の一回で終わりとは勿体ないぬ
しかし、皆さんが仰るようにアクションに関しては素晴らしい出来だと思いました。
変身前後共に、昨今の特撮ヒーローと比較しても一級品のクオリティではないかと思います。
キカイダーが元々武器を使用しないキャラクターと言うこともありますが、身体一つで戦う姿は久々に興奮しました。
最終決戦におけるボロボロになりながらのキックの応酬、拳と拳の殴り合いは昨今の特撮ではなかなか見られないもので感動すら覚えました。
攻撃を受けるに従い傷が増え、クリアフードも割れ、終いにはホントにスーツを殴り凹ませるなど、映画でしかできないアクションに大満足です。
ホントにこのアクションシーンを見るためだけにディスクを買うか検討します。
>鶴見辰吾、本田博太郎、石橋蓮司などの大ベテランの出演だけでわりと楽しめます。
全員特撮OBであることにキャスティングに遊び心を感じます!w
>村枝賢一さんによる新しいキカイダーのビジュアルが最高に格好いいです。
今回のキカイダーは左右で使用用途が違うロボットの設計が使われている、と言うこともあり、
単に色だけではなくシルエットすら大きく変わっているあたりがオリジナルとの相違点ですが、
これが却って「左右非対称で不完全」と言うオリジナルデザインのテーマを強調しているように思います。
ホントに村枝先生は石ノ森ヒーローに対する愛情と造詣が深いお方で感服します……
ただ、ハカイダーはこれ(http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-ed-fe/kaba311540/folder/490457/99/12975099/img_7?1400938378)と言う先駆者を知っていたため少し見劣りが……
もちろん今回のハカイダーも格好良すぎてキカイダー共々早急にフィギュア化願います。
>ジローは序盤で戦った重機型ロボットを躊躇せずに川へ叩き込んでいるよね。
個人的にこのシーンは、重機ロボットへの憐れみ?のように見えました。
手足を破壊され、頭部を粉砕されても尚、戦おうとする哀れなロボットに対して、
楽にしてやると言うべきか、介錯をしてやったようにも思えました。
>電磁エンドも最後の1回だけでなく、もっと使ってくれてもよかったのにね
映画だからこその最後の一回だったのだと思います。
電磁エンドと言えばまさにトドメの必殺技で、テレビシリーズではその一撃で締めくくりとなる技。
だからこそ、伝家の宝刀として、それまでの戦闘で見せることなく最終決戦での最後の一撃にとどめたのだと思います。
どうでも良いですが自分には電磁エンドよりも仮面ライダーストロンガーに登場したタックルのウルトラサイクロンに見えました……
終わり方からするに続編も制作され、となれば01、ワルダー、ビジンダー、
そしてハカイダー四人衆も登場するのでしょうがその前に、脚本をしっかりと練ってほしいです。
変に説教臭くなくても、特別メッセージ性がなくても、日本の特撮って本当に面白いもの作れるんですから。
ヒナタカさんがご覧になった劇場版仮面ライダーWのように、テレビの延長線にあるストーリーでも十分楽しめるんですから……
そんな願いを込めつつ、夏のライダー、戦隊の劇場版に期待します。
何故か仮面ライダーがサッカーしてますけどね!w
未だに特撮作品は、いい歳になっていながらも見続けています。
今回のリメイク作品のプロデューサーに白倉氏が入っている事にかなりの不安を抱きつつ、
鑑賞させていただいたのですが…。
やっぱり…。
白倉氏の東映という会社の社員としての手腕は高く評価していますが、
『仮面ライダー』シリーズにおけるその旧作品の甦らせ方には批判的でしかありません。
ディケイドやスーパー対戦、昭和vs平成などでのライダーの扱いは、
個人個人の思い入れに唾をかけるようなものもありますし、
タックルしかり、キョーダインしかり、イナズマンしかり、アクマイザー3しかり…。
当時のファンの思い出を穢すような、歪な形での甦らせ方しかしていません。
裏切るにせよ、心地よい裏切り方をしてくれればいいのですが、それをできる才能はないんですよね。
結局この人は、自分の考えはすべて正しいと思い込んでいるのだと思います。
オリジナル作品を作るのであれば、その方がいいと思いますが、リメイクでそれをするのは…。
今回も、個人的には名作だと思う『キカイダー02』を手掛けた角川の井上氏が最初に出した案を、
言葉巧みに懐柔して、ひっくり返したり、
脚本家もイエスマンを起用して、自分の嗜好に寄せるようにしたりして、
自己満足を全面に出したような作品になっていると思いました。
一人の独裁者のおかげで、また一つ、日本が世界に誇れる作品がつぶされた気がして、非常に残念です。
公開前のインタビューでいろいろと理屈をこねていましたが、二年も準備期間をかけて、この程度の作品とは…。
厚顔無恥とは、このことです。
キカイダーは、かっこいいと思えたシーンは一つもなく、デザイン的にも少し不満があったりしましたし、
分身とも言えるサイドマシンは出てこなかったし、良心回路の歪曲した解釈のせいで弱かったし、
一切のカタルシスを感じませんでした。
ハカイダーは、単なる嫉妬の塊で見苦しいだけで、日本を代表する悪役の魅力はまったく見えず。
彼らの対決に、クライマックス感などありませんでした。
ギルは、怪しさや恐ろしさを感じず、当時の子供を震い上がらせた迫力は微塵もありませんでした。
原田氏や長嶋氏の演技にケチをつけようとは思いませんが、
作品のバランスを考えればハンサムではない役者さんの方がよかったと感じました。
戦闘シーンも退屈なだけで、新しい試みをして、JAEやAACに対抗しようという気概も見えません。
ハリウッド作品と比較するつもりはありませんが、日本の最高峰を目指す気すらなかったのでしょう。
旧作ファンを裏切り続けながら、ノスタルジーで補完してもらおうという虫のよさまで垣間見えた気すらします。
エンディングロールで旧作の写真を用いたことも、『REBOOT』を自ら否定してかつてのファンへの偽りの謝罪をして、『あんたらは、これを出しときゃ喜ぶんでしょう』ぐらいにしか考えてないようにさえ感じます。
脚本や演出の拙さから派生したことですが、
ラストシーンは、そこに至るまでの展開がよければ、もっと評価が違っていたのでは。
爽快感も切なさもない、虚しいラストシーンの映画に、名作など存在しません。
40年前の作品をリメイクする以上、多少の変更は仕方ないにせよ、
変えてはいけないものを変えるのならば、いささか暴論になりますが、オリジナル作品は『原案』とし、
タイトルや登場人物はすべて名前を変えて、まったくの別物にした方がスッキリします。
これは、他のリメイク作品に対しても思った事でした。
『キカイダー02』や、松岡氏の小説(初期の映画脚本を下敷きにしていたらしい)は、
オリジナルのテイストを残しつつ新しいものも取り入れていたので、
これを映像化してくれていれば、まだ納得できたのに…。
結局、旧作とテイストが変わっていたとしても、
この作品自体が素晴らしいものになっていれば、受け入れられ方は違っていたと思います。
『バットマン』や『スパイダーマン』なども、最初にドラマ化されたものと現在のものはまったく違いますが、
支持されているのは、いい生まれ変わり方をしたからでしょう。
東映は、素晴らしい題材を多く持っているにもかかわらず、
本気でおもしろい映画を作る気があるのか、疑問です。
観客、特にそれなりの年代の人々は、特撮作品だけを見ているのではありません。
一般映画も、海外映画も見ていることを、製作側が失念しているような気がしてなりません。
メイン製作者の才能のないエゴで、
少年時代の思い出を穢し、たくさんのファンを怒らせた駄作を世間に送り出したこと、
エンタティンメントに関わる人間として、お茶を濁すような恥ずかしいことをしたことを猛省していただきたいです。
私と同じような年代の方々が、上映終了後に暗い顔で帰っていく姿を見せてやりたかったです。
長文、失礼致しました。怒りの量は、もっとなのですが…。
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