仲間のために 映画「300 帝国の進撃」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
個人的お気に入り度:5/10
一言感想:筋肉の不足は美女でカバー
あらすじ
アテナイのテミストクレス将軍(サリヴァン・ステイプルトン)は、一般市民から成るギリシャ連合軍を率いて、ペルシャ帝国の軍船に勝負を挑もうとしていた。
相手は、ペルシャ帝国の女指揮官・アルテミシア(エヴァ・グリーン)。彼女はギリシャの兵に家族を殺され、自身も陵辱を受けたため、復讐に燃えていた。
ムキムキマッチョな男たちが戦う素敵な作品「300」の7年ぶりの続編です。
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前作の何が素敵って
・筋肉
・絵画のような美しいビジュアル
・スローモーションを駆使したアクション
・グロてんこ盛り
・あと筋肉
です。
実在の都市国家・スパルタの男たちが血みどろの戦闘をくり広げるさまは、生やさしいアクション映画に飽き飽きしていていた人々を夢中にさせました。
原作がフランク・ミラーによるコミックなだけに、歴史に忠実だとかリアリティだとかよりも、妙な妖術使いなどの破天荒な敵が出てきたりする(いい意味で)マンガ的な展開になっていることも魅力のひとつ。
ザック・スナイダー監督の洗練されたアクション描写と演出も、これ以上のない化学反応を起した秀作でした。
続編となる今作では、ザック・スナイダーは監督ではなく脚本・製作へと仕事を変えています。
今回はスパルタの300人の男たちが主役ではないので、「300」というタイトルもある意味的外れです(今作の原作コミックのタイトルは「Xerxes」)。
そんなわけで、前作のよさが失われていないかと思っていたのですが……その不安は半分当たって、半分外れていました。
よいところでは、やはりビジュアル面。
血は思う存分にバシャバシャ、腕や首が飛びまくる残虐さも含めて、決して前作に負けていません。
今回のおもな舞台は海、サラミスの海戦を描いているだけあり、地上戦であった前作との差別化も図られています。
また、今作の魅力として多くの人があげるであろうことは、エヴァ・グリーン演じるアルテミシアのキャラクターでしょう。

彼女については過去もしっかり描かれており、敵ながら感情移入ができました。
不満点でいちばんに思い浮かぶのが、前作とスローモーションの演出が少し変わっていたことです。
前作は、“スローをアクションのすごいところで止める→アクションが終わるとすぐに通常どおりのスピードに戻す”と、スローをスピード感を描くために使うという、秀逸な演出がなされていました。
しかし、今作では“見せ場”のシーンでスローを用いるのみで、前作のようなアクションの躍動感が感じにくいのです。
あまり意味がなさそうなシーンでもスローを使ったりしており、テンポを殺しているようにも思えました。
もうひとつの不満が、サリヴァン・ステイプルトン演じる主人公にあまり魅力がないこと。
脳みそまで筋肉でできんじゃねーかと思わせる前作の主人公・レオニダスに比べ、今回の主人公・テミストクレスはキチンと戦いの前に作戦を立てる“知略派”の指揮官のはずなのですが、残念ながら映画を観てもそうは思えないのです(理由はネタバレ部分で書きます)。
その“葛藤”の描写もあまりおもしろいものではなく、敵のアルテミシアに完全にキャラ負けしていたのは残念です。
不満はあれど、前作が好きな人にはおすすめします。
前作に比べるとキャストの筋肉具合はまあまあのレベルですが、その筋肉の不足はエヴァ・グリーンの魅力でカバーしています。
話の物足りなさも「血みどろアクションがあればいいや」と思えば充分許容範囲です。
また、本作は前作の出来事と同じ時間軸で物語が進むため、前作の予備知識があったほうがより楽しめるはず(もちろん前作のラストも思い切りネタバレしてしまっています)。なんとなく覚えているくらいでいいので、前作を観てから鑑賞したほうがいいでしょう。
また、本作は3D版を存分におすすめします。
スローとの相性もよく、むしろ今回のスローはこのためのものだったのではないかと思えてくるほど。
血が画面に向かって飛んできたり、あるはずのないカメラに血がつく描写も大好きでした。
ザ・R15+な作品なので、いっしょに観に行く相手は慎重に選びましょう。おすすめします。
以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓ 前作の展開もネタバレしています。
〜そもそもの発端〜
マラトンの戦いから物語が始まります。
主人公・テミストクレスは敵が上陸したと同時に奇襲をかけ、ダレイオスを弓で射ることに成功します。
テミストクレスは、このときにダレイオスの息子・クセルクセスを殺さなかったことを、悔やんでいました。
この“さざ波”はやがて大きな戦渦となり、クセルクセスは人ならざる“神”のような姿となり、スパルタの300人の男たちを全滅させ、さらにクセルクセスの兵も窮地に追いやられることになるのですから……
ツッコミどころは、ダレイオスが思い切り弓が放たれる方向を向いてぼーっとしている(ように見える)こと。避けられるだろ。
さらにベッドで寝ているダレイオスに弓が刺さったままになっている→アルテミシアがそれを引っこ抜くと死ぬというのはなんなんだ(笑)。心臓ぎりぎりに刺さったとしても、そんな状況にはならないだろ。
あと、アルテミシアがクセルクセスの側近や育てた者を殺していたという少し違和感がありました。そんなことをしていたら、悪女だと疑われそうなものです。
〜海戦バトル〜
今作の主人公・テミストクレスがあまり知略家に見えない理由は、その戦略がごり押しに思えることです。
あまり戦争の状況が見えず、ごり押し戦略→相手がまんまと罠にはまる、という構図ばかりなので、けっこう相手がバカに見えます。しかたがないね。
第1の戦闘:船で横から追突します。<横からドーン!
第2の戦闘:敵を岩礁に誘い込みます。<岩礁でオールが折れまくる
<そこにジャンピングで乗り込む
……アルテミシアが部下に失望するのも無理はないかなあ。
しかし、アルテミシアはテミストクレスとセックスをして元気になったために第3の海戦で勝利を納めます。
第3の海戦:海にタールをまいて、火をつけて“火攻め”<爆発
火がついた弾を砲丸投げする男(船から排出しているタールに巻き込まれて爆死)がいたり、自爆テロをしているやつがいたりと容赦がありません。
〜アルテミシアのキャラクター〜
アルテミシアは家族をギリシア軍になぶり殺しにされ、自身も監禁されたあげくに男たちに陵辱されてきていました。
そのために復讐を誓い、剣の腕を磨き、クセルクセスに取り入り、女性でありながらも指揮官へと出世をしていきます。
彼女は、テミストクレスを船に呼び寄せ、話合いにより交渉をするのかと思いきや、思い切り下半身での突き合いが始まります。<戦争の相手なのに……
彼女その昔に陵辱を受けながらも、性への悦楽もあったでしょう(これは女性蔑視も甚だしいと思うのだけど)。
部下の衛兵が、アルテミシアの喘ぎ声を聞いて顔を見合わせて「ん?」と思っていた描写には笑ってしまいました。
〜戦場で死ぬこと〜
スパルタの男たちは、殴り合いの格闘試合の後「戦士にとって至福の瞬間とは、命を投げ出して戦い、戦場で死ぬことだ!」と宣言していました。
これを聞いて、テミストクレスはゴルゴ王妃に「生き残るための努力をするべきなのでは」と疑問を口にしました。
しかし、テミストクレスは戦場で「戦闘で迷いが生じたら、となりの仲間を見ろ!となりの仲間のために戦うのだ!仲間のため、家族のため、ギリシアのために死ねるのなら、それは栄誉の死だ!」と言っています。
さらに、3回目の海戦で仲間を大勢失い、残った仲間にそれを「交渉する選択もあった」と責められたとき、テミストクレスは「私の責任だ。私は危険な賭けをして、負けた。我々の最後の抵抗を見せよう。服従するくらいなら死を選ぶと!」と仲間をたきつけました。
テミストクレスの主張は、戦場で生き残るべきか、それとも死ぬべきなのか、という点において矛盾しています。
おそらく、テミストクレスは本心ではゴルゴ王妃に言ったように、仲間が生き残ることを第一に掲げていたのでしょうが、ギリシアという民主主義の国で戦う以上、それを建前にすることはできなかったのでしょう。
テミストクレスは、若き兵士に「初陣で死ぬなよ」と冗談っぽく言っていましたが、それは本心からくる、切実な願いだったのかもしれません。
若き兵士の亡くなった父のことばを、若き兵士に(実際はそうは言っていないのに)「立派な戦士になった」と伝えたことも、“生き残った”ことに対してのテミストクレスからのことばだったのかもしれません。
序盤のマラトンの戦いのとき、ゴルゴ王妃はナレーションでこう語っていました。
「数千の兵が死んだ。民主主義のために……理想は、どれだけの犠牲を払えばいいのだろう」
この物語で描かれているのは、テミストクレスが自分の本心ではない”理想”=ギリシアの勝利のために、大切な仲間の犠牲を強いられるという悲劇なのではないでしょうか。
テミストクレスの過去やギリシアへの忠誠が作中でほとんど描かれないため、その葛藤が見えないのは残念ですが、戦争というものの哀しさは充分に描かれていました。
〜かけつけてくれた仲間〜
テミストクレスは戦場で馬に乗り込み、二刀流のアルテミシアと最後の戦闘をくり広げます。
そこに“かすかな風”が吹き、それは旋風へと姿を変えます。
テルモピュライの戦いで300人の仲間を失い、一時はテミストクレスに力を貸そうとしなかったスパルタの残された兵士がかけつけてくれたのです。<ムキムキたちの加勢
<ゴルゴ王妃もそこに!
テミストクレスは「ギリシアとスパルタ、すべてを敵に回したな」とアルテミシアに告げ、殺します。
さらなる乱闘がはじまろうとしたとき、映画は幕を閉じました。
おそらく、史実どおりテミストクレスたちはこの戦いで勝利をするのでしょう。
テミストクレスは、300のスパルタたちが破れたことを人々に伝えるとき、「死が人々を動かすはずだ」とその理由を告げていました。
300の犠牲(死)があったたために、残された兵もかけつけてくれたのです。
彼らは、報復(弔い合戦)をはじめました。
それは、ギリシアの民主主義とは関係のない、戦士ならではの信条のためのなのでしょう。
おすすめ↓
300 <スリーハンドレッド> ~帝国の進撃~ - みんなのシネマレビュー
>筋肉の不足は美女でカバー
序盤は「エクペンタブルズ2」を思い出して、おっぱいなどいらぬ!大胸筋さえあれば良い!だったのですが、アルテミシア姐さん。お見それしました。
>前作とスローモーションの演出が少し変わっていたことです。
確かに、ここは止めずにそのままガン!ガン!行ってくれよ!?と思うシーンが時々あって気になりましたね。
>下半身での突き合いが始まります。
濡れ場なのに色気ゼロで、まるで雌豹と雄獅子の交尾。別の意味でドン引きの空気が劇場を包んでいました。
>死が人々を動かすはずだ
なぜか「永遠の0」を思い出しました。遺った人達を信じられるから命も掛けられる。自分もこんな覚悟が出来る程、誰かを信じられるか、そういう局面が来る事も想像して置きたいです。
ペルシャ側の武将が策士とか言われておきながらどこが策士?と思うほどの惨敗っぷりでしたね
アルテミシア様が最高だったのは認めますが
ところでこの邦題って進撃の巨人にあやかってるんですかね
Riseだから本当なら「帝国の興隆」とか「帝国の勃興」じゃないかと
訂正します。
タイトル、確かに進撃の巨人を意識してそうですよね。あやかりすぎ。
誘ったのは交渉の時だけです
これに対してテミストクレスは、「ギリシアを守るという大義に殉ずるならば」という考えで言っているのだろうと思います。
スパルタのように尚武精神に富んでいた、かつての日本でも「意味のある死」であるはずの切腹が、切腹そのもの、つまり死ぬ事そのものが目的になっていた事があったと新渡戸稲造の著作にて記述していた気がします。前者はこれと似ているでしょう。
まあ、戦いに一々目的が必要なアテナイ人よりも戦死に疑問も持たないスパルタ人の方が遥かに戦士には向いてはいるでしょうけど。