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幸せになれない 映画「喰女 -クイメ-」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー

今日の映画感想は喰女 -クイメ-(英題:Over Your Dead body)です。


個人的お気に入り度:7/10

一言感想:三池監督流「ブラック・スワン」


あらすじ


後藤美雪(柴咲コウ)は、舞台「真四谷怪談」で“お岩”を演じる看板女優。彼女の推薦により、恋人の長谷川浩介(市川海老蔵)が“伊右衛門”役に選ばれた。
鈴木順(伊藤英明)と朝比奈莉緒(中西美帆)らの共演も決定し、舞台の稽古がスタートする。
浩介には浮気癖があり、莉緒に手を出してしまうのだが……




悪の教典」「藁の楯」の三池崇史監督最新作にして、山岸きくみによる小説「誰にもあげない」の映画化作品です。

山岸 きくみ
583円
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本作がモチーフにしているのは“お岩さん”でおなじみの「四谷怪談」です。

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※電子書籍版は無料。青空文庫でも読むことができます。

本作に関わらず、四谷怪談を題材に扱う作品を作る際には、“お祓い”のために、お岩縁の社寺を巡る必要があるのだとか。
“怪談”の代名詞と呼ぶべき存在の四谷怪談を、「オーディション」などのホラー作品を多く手がけてきた三池監督がを手がけたことは、氏のファンにとっては待望のことなのかもしれません。

いままでに作られた「忠臣蔵外伝 四谷怪談」や「嗤う伊右衛門」などの映画化作品と違うのは、本作がスマートフォンが登場する現代に時代が設定されており、四谷怪談は作中の“舞台”として登場していること。
劇中の舞台と、現実の物語が同時進行する映画なのです。

この映画で、自分は「ブラック・スワン」、その元ネタのひとつである「パーフェクトブルー」、または「インランド・エンパイア」を思いだしました。
これらの作品と「喰女 -クイメ-」は「役者が、“役”のめり込むにつれ、現実と虚構の区別がつかなくなっていく」内容のサスペンスホラーです。
本作でも、「どこまでが現実かがわからない」不条理さと、恐ろしさを感じられることでしょう。


この劇中劇と、現実の物語を同時に展開するという構成は、万人向けではありません。
お化けが襲ってくるような直接的な恐ろしさが主ではなく、どんよりとした不穏な空気のまま、じわじわと追いつめられるような恐怖を伴いながら物語が進むという内容なのです。

これはジャパニーズ・ホラーならではの要素のなので、個人的にはとてもうれしかったのですが、精神的に観ていてとてもしんどく、娯楽性は高いとは言えません。
ベッドシーンがひんぱんに登場し、三池監督らしいグロテスクな描写もありあり、笑いの要素皆無の“ガチ”なホラー作品なので、デートで観るにはオススメできません。(PG12指定ではちょっと甘すぎます)。
物語の整合性には乏しく、やや展開に唐突さも否めないので、リアリティを求める人にも向いていません。
ひとりで観るタイプの映画として認識して、覚悟を持って観たほうがよいでしょう。


この映画で優れているのは、役者の演技を大事にして、ほぼ説明をすることなく物語を進めていることです。
あらすじにあるような「看板女優のヒロインの推薦により、うだつの上がらない恋人が重要な役に選ばれた」ということすら明確には描かれてはいません。

背景や人物描写は説明不足ともとれますが、これでいいのでしょう。
人物の関係性はちょっとした台詞の端々に見えますし、「四谷怪談」の物語に沿って展開しているため、よりキャラクターの内面が浮き彫りになっていたりします。
直接的な描写に頼らない、玄人向けな作品と言えます。

役者の演技は総じてすばらしく、市川海老蔵のクズ男役がハマりすぎて市川海老蔵本人にしか見えない演技に見えないですし、“お岩”を演じる役を演じる(ややこしい)柴咲コウの美しい顔の表情からはしっかりとした恐怖を感じることができました。
個人的なMVPは不気味な使者を演じた根岸季衣さん。その“笑み”の禍々しさは、忘れられそうにありません。
このキャスト勢が挑む舞台稽古は迫力があり、これだけで観てよかったと思わせるものでした。

「ワッ」と急に驚かせるようなシーンはほぼ皆無です。
キャーキャー言いながら怖がることのできる、スタンダードなホラーを求める人にはまったくおすすめしません。

これは、かつて「リング」などにあった“じわじわ来る恐怖”を思い起こしてくれるもの。
ジャパニーズ・ホラーが好きな人は、ぜひ劇場へ。

以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓ いきなりオチ部分を書いているのでご注意を。








~現実と虚構の境目~

さて、↑では「どこまでが現実かがわからない」内容とは書きましたが、観終わってみると現実と虚構の境目は明確でしたね。
中盤の、「浩介が車で美雪の幻覚を観て、首が刎ねられた幻覚(ではないか?)を観た」とこからが虚構でした。

映画の終盤の警察の現場検証で、浩介はなぜか飛んできた看板に、本当に首を刎ねられて絶命したことが明らかにされるのです。
浩介の首が刎ねられた後に、画面にビデオ映像のようなノイズが入ることも、ここからが“撮られたもの”=虚構であることを示していたのでしょう。

思えば、美雪ひとりで一面がビニールで覆われた部屋を作れるわけもありませんし、美雪があれほどまでに自分の陰部を刃物で突いて、血を流していて平気な(出血多量で死なない)はずはありません(けっきょく、病院にも連れて行っていません)。
その後の稽古中に、代役を務めた加代子(マイコ)が美雪に見えてしまったり、“梅”(中西美帆)が子どもを食べたうえに美雪に変身するのも、劇としてはありえないことです。
けっきょく、虚構の中の浩介は、「うらめしや」「恨みはらさでおくべきか」と言い放つ“喰女”と化した美雪にのどを引きちぎられ、現実とおなじように首がもげて死んでしまいます。

浩介が車の中で首を刎ねられた後の物語は、浩介が死の間際(または死んだ後)の悪夢ともとれますし、美雪の「望んでいるもの」とも取れます。
ここからは、登場人物の台詞を整理してみましょう。


~浮気をしたがっている男~

伊藤英明演じる、妻がいるのにも関わらず美雪に近づこうとしている男はこう言っていました。

「ときどき芝居の世界から出たくなくなるんだ」

このとき、美雪は「わたしは、ないわ」と答えています。
男は(虚構の中の)「四谷怪談」の劇中で盲目の男として登場し、無理矢理“お岩”を犯そうとしていました。それは男の願望でもあったのかもしれません。

映画の最後、早く芝居が終わったら改めて美雪を食事に誘おうとしている男に、美雪はこう言い放ちました。

「早く終わったら、家に帰りなさい」

美雪は(虚構の物語の中で)ビニールで覆われた部屋の中で、“お岩”の「わたしが至らないばかりに」という台詞をしゃべり、現実と劇との区別がつかなくなっていたようでした。
そんな彼女がこう言うということは……美雪は、本心では現実と劇の中の出来事に区別をつけたかったのでしょう(それにも関わらず、彼女は浮気をした恨みを捨てれずに浩介を殺してしまったのです)。
もしくは美雪は、浩介と同じように浮気をしようとしている男に対して、“酷い目に会うわよ”と忠告したかったのかもしれません。


~浩介のキャラクター~

浩介は生まれてからずっと芝居しかやってこなかった人間(市川海老蔵のキャラそのまんまですね)で、莉緒の「アメリカの父の事業を手伝おう」という誘いにも乗ろうとはしませんでした。
莉緒の「“伊右衛門”はどうすれば、幸せになれるのかなあ」ということばに、浩介はこう答えました。

「なれないよ、幸せになんて」

浩介は、自身が演じている“伊右衛門”を軽蔑し、その役と同じように浮気をしている自分を恥じていたところがあり、そのような人間に幸せなど訪れないと思っていたのかもしれません。


~劇と現実との違い~

劇中劇「四谷怪談」と、現実の物語は同じように進行していきました。

ただ、現実の浩介は人殺しをしていないですし、“伊右衛門”のように浮気相手の「出世の話」に乗って妻を見捨ていることもしていません。
あるのは、浮気をしていたという事実だけなのです。

虚構の物語の終盤、“伊右衛門”が“お岩”と間違えて“梅”を斬り殺してしまったのにもかかわらず、“梅”の父親はこう言っていました。

「案ずるな、まだ手だてはある」

これは、現実の浩介がまだ致命的な過ちを犯してはいない、まだ(仲直りをする)チャンスがあることを示していたのではないでしょうか。
もっとも、このとき浩介はすでに美雪に殺されているので、手遅れではあるのですが……。


~美雪の望み~

美雪は道を歩いている家族を観て、こう言っていました。

「結婚して、子どもができて、それって幸せなのかなあ」

彼女がなぜそう思ったのか―
それは「四谷怪談」の劇中の“お岩”が、結婚もして、子どもがいたにもかかわらず不幸であったからでしょう。

しかし、美雪は途中から妊娠検査薬を何本も使って自分が妊娠したかどうかを執拗に確認しており(結果は全部陰性)、(虚構の中で)自分の陰部を刃物で刺し、子どもをほしがっていたようでした。
これも、彼女が「役にのめり込んでいった」ことを示しているのでしょう。

最後に美雪は、稽古場に警察が来たとき、座長の男にこう言っていました。

「このお芝居、何があっても幕を開けてくださいね」

美雪は役にのめり込み、現実でも“お岩”のように恨みを忘れられず、殺人を犯しました。
それにも関わらず、「何があっても芝居を続ける(さらに役にのめり込む)」と言う美雪……。
(英題の「Over Your Dead body」も、「あなたの死体を超えてまで」役を演じたいという美雪の願いを示していたのかもしれません)

美雪は、劇中で“梅”が「“伊右衛門”様はわたしだけのもの」と言ったように、机の下に隠してあった浩介の首を、足で転がしてその存在を確認していたようでした。

彼女は、現実の世界で、現実と「四谷怪談」の物語に区別がついているのでしょうか?
たとえ、区別がついていたとしても―
役にのめり込むあまり、恋人が浮気をした事実のみで、現実での殺人を犯した美雪は、とてつもなく恐ろしい存在でした。

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テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

2014-08-23 : 映画感想 : コメント : 2 : トラックバック : 0
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非公開コメント

No title
夏だってのにホラーやってねえ!!という乾きとカゲヒナタのレビュー7点に惹かれ観て来ました。
うぅ・・・Jホラーにしてはスプラッターでグロかったって、三池監督ですし当然ですね。

>三池監督流「ブラック・スワン」
ヒナカタさんの一言感想は毎回上手い!

~現実と虚構の境目~
自分は役に入り込み過ぎて喰われてしまったのは浩介の方だったのかな・・・と思ってしまいましたが、納得の説明です。
確かに美雪生存の方が現実的ですね。

>クズ男役がハマりすぎて
>生まれてからずっと芝居しかやってこなかった人間(市川海老蔵のキャラそのまんまですね)
この映画、市川海老蔵さんは出演だけでなく。企画から関わっているんですね。
やっぱりこの人嫌いになれません。私生活がだらしなくても、凶悪犯罪を犯している訳でも無いですし、役者としては一級品だと思います。

あと柴咲コウさんはずっと「バトルロワイヤル」の相馬光子役から恐い美人のイメージだったのですが「晴天の霹靂」で一変!けど、今回でまた戻ってしまいました・・・。
2014-08-29 01:35 : 毒親育ち URL : 編集
一昨日クイメ観ましたが、海老蔵は舞台から降りても舞台の上にいるかのような目配せや表情でカッコつけ過ぎじゃないかとシラーッとなってしまいました(笑)
キャストは豪華で世界観は確立されているのに、何故かB級感を覚えてしまった…
ベッドシーンや舞台撮りシーンが無駄に多く一度のシーンが長いせいかな、と。

映像で舞台劇を観るとこんなにもつまらないのだなぁって感覚が先に来たので自分的にはナシ!な映画でした。

やりたいことは分かるけど、色々半端でしたね(A;´・ω・)アセアセ

突き詰めてほしいところが半端で、無駄が多かったので逆にしていればアタリだったはずとめちゃくちゃ思いました!
惜しい映画だった!

2015-08-26 15:22 : URL : 編集
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