災害の後に 映画「イントゥ・ザ・ストーム」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
個人的お気に入り度:7/10
一言感想:たつまきこわい
あらすじ
竜巻が発生して、「竜巻ハンター」チームとか、親子チームとか、カップルになりそうなチームとか、Yotubeに動画を投稿しようとしているバカチームとかが逃げたり巻き込まれたりする話。
「ファイナルデッドブリッジ」のスティーヴン・クォーレ監督最新作です。
えっとね、本作の感想ね、えーとね、たつまきの迫力がすごくてね、あとはぜんぶどうでもいいの。おしまい。
……いや、だって災害映画ってそんなもんじゃない(身も蓋もない発言)。
本作の魅力の99%以上が「たつまきがすごい(小並感)」ではありますが、裏を返せばそこだけで劇場で観る価値がある作品です(ほめことば)。
これは本物の竜巻の迫力を間近で観れるという大チャンス。いつもよりちょっと前のほうの席で、「巻き込まれる」感覚を体験することをおすすめします。
本作の優れた点に、人物描写や展開がいい意味でざっくりとしており、気軽に観ることができることがあります。
上映時間は1時間29分という近年まれに見る短さですし(トランスフォーマー4は見習え)、たくさんいるキャラクターはチームを組んで行動しているために観ていて混乱することがないですし、ハリウッド映画の“お約束”をきっちり入れていて飽きさせません。
あとね、予告編ではすごく深刻な雰囲気を感じ取れますが、作中ではYoutubeで動画を投稿するバカとかがいることもあり、ノリはわりと軽いです。
自分はこのくらいの雰囲気の作品が大好き。肩の力を抜いて、気を張らずに楽しむことができました。
こってりラーメンばかりだと飽きちゃうから、たまには塩分控えめのうどんでも食べに行くかという気分で観ると幸せになれる映画だと思います(よくわからない例え)。
チームがそれぞれ“違った理由”で、竜巻に関わっているというのもいいですね。
行動原理がわかりやすいために「なんでそんなことするん?」という疑問がまったくなく、しっかり感情移入して観ることができます。
お気楽ハリウッドディサースター(災害)・ムービーではありますが、しっかりツボを抑えた内容なのです。
本作と同じように、竜巻が襲ってくる映画で多くの方が連想するのは1996年に公開された「ツイスター」でしょう。
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「イントゥ・ザ・ストーム」はこれとキッチリ差別化を図っている印象でした。
その理由のひとつがPOV(一人称視点)で撮られていること。
“災害に合う人の手持ちのカメラ”の視点で撮られているため、本物の災害の現場にいるかのようなライブ感があるだけでなく、「周りのすべてが見えないがゆえの恐怖」も描くことに成功しています。
POVならではの「カメラは前しか映さない」「災害にあう人物はその場所のことしか知らない」という制限を、上手く活用してくれているのです。
人間ドラマも「ツイスター」より本作のほうが好きですね。
あっちは人が死んでる災害を調査しているのに、ライバル関係とか入れるなよと思っていましたから。
「イントゥ・ザ・ストーム」のドラマは安っぽ……じゃなかった、シンプルにまとまっています。
残念だったことのひとつが、前述のPOVの前提である「誰が撮った映像」であることが首尾一貫して守られてはないこと。
よくよく状況を考えると「あれ?これ誰が撮ったの?」となるシーンがいくつかあるために、少しPOVならではの臨場感を削いでしまう印象がありました。
たくさんのチームでコロコロと視点が変わるため、「クローバーフィールド/HAKAISHA」ほどの没入感がないのも欠点かもしれません。
あと、Youtubeに動画を投稿するバカどもが、ばかばかしいを通り越してすげえウザいのはちょっと……
自分はこういうキャラが出てきて大活躍するのは嫌いじゃない……というかむしろ大好物な部類なのですが、もうちょっと愛嬌を持たせてやってもよかったんじゃないでしょうか。
観ている人の80%くらいが「こいつら早く竜巻に巻き込まれろ」と願うことでしょう(その願いが届くかは観てのお楽しみ☆)
本作ってじつは3D上映がないのですね。
猫も杓子も3Dにする風潮は好きではないのですが、本作では3Dで観たいと思わせる画がたくさんあったのでちょっともったいなく思いました。
現在は同じくディサスター・ムービーである「GODZILLA ゴジラ」も公開されていますが、何にも考えずに楽しめる娯楽映画としては断然こちらをおすすめします。
終盤のとある光景には、「ゼロ・グラビティ」にも似た「映画でしか観ることができない」感動を味わうことができました。
観る人を選ばない万人向けの内容です(お子様にはちょっと怖すぎるかも知れませんが)。
展開はベッタベタなので、あまり映画を観慣れていない人のほうがより楽しめるかもしれませんね。オススメですよ。
以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓
〜誰が撮っているの?〜
一貫してPOVで撮られていた本作ですが、以下でビデオを回しているのが誰かがわからないのはちょっと残念でした。
・溺死しそうになっているドニーとケイトリンを救いに、ゲイリーとトレイとアリソンがやってきたシーン
・水中のカメラ(水没しない?)
・対竜巻用重機“タイタス”の外からコクピットを映した画(そのカメラに意味はある?)
・飛行機がぶっ飛んでいく画(報道陣は撮れないだろう)
秀逸なのは、学校を竜巻が襲ったとき「外からの光景」をまったく見せず、中の惨状だけを描いていことでした。
序盤にドニーが「タイムカプセルを作る」という名目のためにインタビューをして登場人物の紹介をするのも上手かったですね。これは作中のテーマとも密接に絡んでいます(後述)。
〜嵐の中へ〜
本作の多重渦竜巻や、EF5クラスの竜巻の画の数々は圧巻でした。
「ツイスター」ではアレが飛んでいました(←ネタバレ注意)が、こっちは飛行機まで盛大に吹っ飛びますからね。
<なさそうでありえそうな光景
中盤の「火の竜巻」の光景も実在するもののようです。<中ボス感満載
そういえば、本作のタイトルは「イントゥ・ザ・トルネード(竜巻)」じゃなくて「イントゥ・ザ・ストーム(嵐)」でした。
stormの意味には“強襲”という意味もあり、確かに本作の竜巻が否応なしに襲ってくることに合致していました。
巨大竜巻が直径1kmクラスなだけに、単なる竜巻というよりも、巨大な嵐という印象もありましたしね。
ここからは作中に登場するチームごとに振り返ってみます↓
〜Youtubeバカは本当にバカ〜
本作にはドンクとリービスというバカが登場し、「ジャッカス」シリーズのようにモービルでプールに飛び込んでいて、お母さんに叱られたりしています。
早くもウザいですが、ドンクは後に無職であることが明らかになり、しかも野次馬となって竜巻すげーすげーって言い続けたあげく、間近で竜巻を観たときに「セックスより最高!」って言って「童貞だろ!」とツッコまれる始末でした。
案の定ドンクとリービスはあっけなく竜巻に巻き込まれて死亡……かと思いきや映画のオチではこいつらが木に引っかかって生きているというシーンが映し出されました。
なんつーか、ただただウザい→死んだ→じつは生きてたという展開にするより、「スネーク・フライト」のようにどこかでオタク知識を活用するなりして活躍してほしかったよ。
ちなみにドンクはyoutubeバカとは言いましたが、初登場時に動画の再生回数が302回であることが明らかにされていました。レミ・ガイヤールのマリオカートなんてほぼ6000万回再生なのに(比べるのもアレだけど)。
これから竜巻の映像で本当に有名になるんですかね……個人的にこいつらは大嫌いなので、「カメラが壊れている!」なオチを期待してしまいました。ていうか働け。
〜ドニーとケイトリン〜
ウブな少年のドニーが、イケてる女の子のケイトリンの課題の動画を録りなおすため、工場で手伝ってくれるのですが……工場は竜巻で倒壊し、ふたりは生き埋めになってしまいます。
しかも水道管が壊れて水が流れ込んできたため、ふたりはあわや溺死しかけてしまうのです。水はどこかから漏れるから溜まらないだろというツッコミは禁止。
ドニーとケイトリンは、カメラに「遺言」を残します。よくカメラが水没しないなというツッコミは禁止。
ドニーは「ぼくは(タイムカプセルのために)未来を撮っていたけど、もうぼくに未来はない。過去の話をしよう」と言い、いつもは生意気な弟のトレイと、父のゲイリーへの想いを語ります。
ケイトリンも、いっしょにいてくれたドニーを本当にいい人だと褒めてくれました。
ふたりを助けてくれたのは、トレイとゲイリー、それに研究員のアリソンでした。
車を乗って機材に体当たりをするという機転をきかせるトレイがかっこうよかったですね。
ところで、ケイトリンの課題はどうなったんでしょうかね。無事インターンシップンに行けていたらいいけど……
〜ゲイリーとトレイ〜
ゲイリーは学校の教頭先生です。
妻を事故で失っているため、学校で竜巻の強襲を受けたゲイリーは、離れた場所にいるドニーのことが心配でしかたがありません。
このとき、ドニーが「卒業式をサボったから父さんの携帯には出ない」→「でも弟の電話にはすぐに出る」というどうでも良さげなように見えて細かい描写があったのがよかったですね。
ゲイリーとトレイは道中で車の中に閉じ込められているおじいさんと出会い、トレイはナイフを取り出してゲイリーに渡し、「後で話し合おう」と言われてしまいます。
このナイフは車の中ですぐにゲイリーに取り上げられてしまうのですが、最後に巨大竜巻が過ぎ去った後、ゲイリーはトレイに返してくれました。
これは「息子を認めた」からでこその描写。それをナイフというアイテムで表すのはなかなかに気が利いていました。
〜アリソンとピート〜
アリソンたち「竜巻ハンター」メンバーのひとりは、「火の竜巻」に巻き込まれて絶命してしまいます。
自分がしっかりした映像を撮ることを彼に煽ったことを悔いたメンバーもいて、ピートはこのときにカメラの映像を確認しようとしていたためにアリソンに責められてしまいます。
そのことに責任を感じていたピートは、巨大竜巻に地下道にいるみんなが巻き込まれそうになったとき、対竜巻用重機“タイタス”を動かして“蓋”をしてくれます。
アウトリガーは正常に作動することなく、けっきょくピートは“タイタス”ごと竜巻の上空へと吹き飛んでしまいました。
秀逸なのは、「竜巻の目」に入ったときの画と、ピートが落下する前に「美しい夕日」を見せてくれたこと。
どちらも映画でしか観ることのできない光景です。
ピートは亡くなってしまいましたが、自分の責務を果たし、最期に美しい自然の姿(いままでは恐怖の対象だっただけに)を観れたことは、幸せでもあったのでしょう。
アリソンは娘と交わした「約束」どおり、家に帰ることができそうでした。
〜いまを大切に〜
ドニーがインタビューした、「将来はNBAに入ってたんまり金を稼いでいるぜ〜」などとほざいていたバスケ部のリーダーは、竜巻が過ぎ去った後のインタビューでこう答えていました。
「未来よりも、毎日を大切にしたい」
ふつうに生活していると、毎日の生活のありがたみになかなか気づかないものです。
災害はとてつもない不幸に見舞われることではありますが、そのことを思いださせてくれるのかもしれません。
トレイが助けてくれたおじいさんが「危機に直面したとき、活躍するのはふつうの人間ばかり、いいことだ」と言ってくれるのもよかったですね。
災害に見舞われたときこそ、人はヒーローになれるのかもしれません。
あと、セレブと結婚すると言ってたチアリーダーや、ク○労働をしているおじさんや、非リア充っぽいメガネキャラ(夢は博士号)からも何かコメントがほしかったですね。
ドニー、トレイ、ゲイリーの親子は、「25年後には思い出になる」と話してくれました(トレイはそのころにお父さんはよぼよぼのじいちゃんだよ!と茶化している)。
この映像は、はじめにゲイリーが言ったように、「タイムカプセル」として、大人にあったゲイリーたちが観るのかもしれませんね。トレイはそのころにビデオはなくなっているとツッコんでいたけど。
災害の後の「よりよい未来」を、タイムカプセルに納めるビデオで暗示してくれた本作が大好きです。
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コース料理に満足満腹で幸せな気分でいたら、食後酒に汚水を出されたような気分で帰路につきました・・・。
信頼のカゲグナタのレビューで7点ですし!申し訳ありませんけど、個人的に超デストロイでした!
いえ、竜巻の恐ろしさを伝えるド迫力映像表現や、学術的探究心や報道のプロ魂と、それでも「危険」を犯している事への葛藤とか、色々凄く良かった部分もあるのですが・・・
>ドンクとリービス
>Youtubeに動画を投稿するバカどもが、ばかばかしいを通り越してすげえウザいのはちょっと……
こいつらです。
アリソンとピートのような「本物のプロ」対し「馬鹿なド素人」としては良いキャラだったと思いますし、ちゃんと愚者の愚行として描かれていたのは良かったのですが・・・
>かと思いきや映画のオチではこいつらが木に引っかかって生きているというシーンが映し出されました。
なぜ生かしたッ!?確かに、こいつらの所為で誰か死んだ訳ではありませんけど、あの無傷無反省っぷりは紙コップをスクリーンに投げたくなりました。
これなら、やり遂げた男のピートはともかく、同じく報酬や功名心に目が眩んだという「愚かさ」が原因で火災旋風に巻き込まれたジェイコブも、どっこい!生きてた!!オチにして欲しかったです・・・。
色々感動した人には、たったそれだけで他の良い部分を帳消しにしちゃうの?と思われたらごめんなさい。私も他の所で感動したからこそ、それを台無したこの馬鹿二人による「面白いでしょ?」な演出が許せないんです。
生還はともかく、なにかしらギャフン!と痛い目を見るか、ヒナタカさんの仰るように、劇中で自分達の愚かさを自覚して改心し、オタク知識となけなしの勇気を振り絞って大活躍!でも・・・の後にどっこい!生きてた!!なら、最高に感動出来たと思います・・・。
この映画の良い点は、とにかく短かったことです。
まあ、あの時間の経過が、竜巻の通過時間だと思えばよいのか?
本当にCGでなんでも表現できるようになったんですね。
ああ、そういうことだったのかな。
自分は「中途半端にしつこいモキュメンタリー臭さが目につく」と感じていましたが、その正体はそれかもしれません。
モキュメンタリーに徹するならばそのほうが緊迫感もあったでしょうし、いわゆる“神の視点”で描くならばそのほうがスッキリしたような気がしてなりませんでした。
このことがネックで、自分はあまり高い点数を出せませんでした。
> 3Dが無くて勿体ない
恐らく予算不足ではないかと。
そう思った根拠は音楽でした。
否、音楽自体は良いのです。ただ、オーケストレーションが意外と浅い。編成規模がこの手の映画作品としては小さく感じたのです。
そのオーケストレーションの弱さを補うべく、パーカッションを響かせて、いわゆる“ドンシャリ”サウンドにしているようでした。
手抜きという意味ではなく、恐らく発注段階で編成規模を抑えたものだったのでしょう。作曲者はその編成の中で最大限の楽曲を書いているという印象はありました。
そこから窺えるのは、予算的な問題。恐らくは後半~終盤のCGに相当な枠を使うことになったのではなかろうか、と。
> 本作のタイトルは「トルネード」ではなく「ストーム」
その観点では、『パーフェクト ストーム』(2000年、ウォルフガング・ペーターゼン監督)に軍配を上げたいかと。
映像技術的にも10年以上昔にあれが作れたのは脅威であり、改めて評価できると思いました。