ゆる~い映画レビューがメインのブログです。最新映画の感想は↓の「新作映画レビュー」からどうぞ。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
-------- : スポンサー広告 :
Pagetop

これからのために 映画「ショート・ターム」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー

今日の映画感想はショート・ターム(原題:SHORT TERM 12)です。


個人的お気に入り度:8/10

一言感想:みんな、幸せになってほしい


あらすじ


グループホーム“ショートターム12”で働くグレイス(ブリー・ラーソン)は、新しく入居したジェイデン(ケイトリン・デヴァー)という少女を担当することになるが、短期ということもあり彼女はなかなか心を開こうとしなかった。
ある日、グレイスは施設の同僚メイソン(ジョン・ギャラガー・Jr)との間に子どもができたことを知る。
だが、グレイスは妊娠を喜ぼうとはせず……




アメリカの児童保護施設を題材とした映画です。

突然ですが、虐待をされる子どもは自分の親をかばうことが多いそうです。
命の危険にさらされているほどの虐待をされても、子どもは“親に頼らないと生きていけない”ことが本能的にわかるため、ケアマネージャーにウソをついてまで親から離れられないようにする……こういうケースが少なくないようです。

本作「ショートターム」では、まさに「親の虐待を素直に言うことができない」という子どもたちが出てきます。
子どもたちはとてもやさしく、親を悪く言えないところがあるのでしょう。

映画に登場する子どもたちは、自分にひどいことをしている親を憎んでいるように見えますが、どこか“愛情”を持っているようにも見えます。
単純な憎悪や嫌悪だけでない、もっと複雑な感情を親に持っている……「誰も知らない」と同じく、虐待をされている子どもたちの心情が細やかに描かれているのです。

本作で優れているのはそれだけではありません。
虐待を受けている子どもだけでなく、虐待をしている側の心情が描かれているのです

実際の虐待のニュースを聞いても「なんて酷い親だ」「子どもが可哀想だ」とばかり考えてしまい、「親がなぜそのようなことをするのか」には注目しないのではないでしょうか。
しかし、「ショート・ターム」では作中に登場する「物語」により、「親が子どもを虐待する理由」を教えてくれます。

驚くべきなのは、虐待する親側のセリフが一切登場しないこと。
虐待をしている当事者の想いが描かれないのにも関わらず、虐待をしている側の気持ちに寄り添っているのです。

虐待の問題を考えれば、子どもを施設に保護すれば万事解決というわけにはいけません。
子どもにとって親はかけがえのないものです。
だからでこそ、虐待に至ってしまう大人の視点をしっかりと描く……ここに、本作の大きな意義を感じました。


「ショート・ターム」というタイトルは、本作の舞台が“短期(short term)”のグループホーム(保護施設)であることを示しています。

デスティン・ダニエル・クレットン監督は実際に保護施設で2年間働いた経験があるそうです。
子どもたちは、いつか自立してスタッフたちと別れなければいけません。
働くスタッフもまた、過酷な勤務体勢や薄給により自ら施設を離れてしまうことも多いのだそうです。

本作で描かれるのは、そのかげがえのない短い期間での、傷ついた子どもとそれを見守る大人たちの物語です。
短い期間だからこそ、その時間を大切にしたい、その短い期間を過ぎた後も子どもたちに幸せでいてもらいたい—
その願いが込められているように思いました。

本作はストレートに泣かせたり、大仰なドラマを作っている作品ではありません。
しかし、子どもたちの心情はドラマティックに描かれています。

チョコレートドーナツ」でも思ったことですが、日本の大衆向けの映画がいかにわざとらしい「お涙頂戴」な傾向にあるかを思い知らされました。
「チョコレート ドーナツ」や「ショート・ターム」で描かれているものこそ、映画という媒体で描ける本当の感動です。

少し性的な話題もありますが、それも作品に必要なものです。
rotten tomatoesで99%という高評価を抜きにしても、実際に福祉関連の仕事に就いている人はもちろん、すべての人に観てほしいと思える作品です。
公開劇場は現在全国11館とわずかですが、これから公開する地域もあるので、近くで上映していたらぜひご覧になってください。おすすめします。

以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓











〜タコのニーナ〜

本作において、ジェイデンが作った「タコのニーナ」の話はとくに重要でした。

ニーナはいつもひとりぼっちでしたが、毎日海で遊んでいて幸せでした。
ある日、ニーナと「友だちになりたい」と言うサメが現れました。ニーナは「友だちの作りかたがわからない」と言いました。

サメは「足の一本をくれたらいいよ、それなら友だちになってあげる」と言いました。
ニーナは足をサメにあげました。ニーナとサメは友だちとなって、毎日とても楽しく遊びました。
あるとき、サメはまたニーナの足がほしいと言い、ニーナは食べさせてあげました。

さらに、サメは「ニーナの足が全部ほしい、だって、友だちだろう」と言います。
ニーナは足を全部あげましたが、そのためにニーナは泳ぐことができなくなり、サメはとても寂しく思いました。
サメは、新しい友だちを探しにどこかへ行ってしまいました。


この物語のサメが示すものとは、ジェイデンに虐待をしていた親です。
サメ(親)には「親しくしたい」という想いがあるのに、それは「相手を傷つける」というかたちで現れてしまうのです。
ニーナ(ジェイデン)は、サメとただ仲よくしたかっただけなのに……

サメが示しているのは、
入所している子どもたちと仲よくしようとはしないジェイデン自身、
生意気な少年を殴りつける黒人の少年のマーカス、
子どもたちのことを「恵まれない」と表現してしまった新人職員・ネイト
も含んでいたのかもしれません。
本人がそうは思ってなくても、相手を傷つけてしまうこともあるでしょうから。

また、施設の所長は、勝手にジェイデンを親元に引き取らせてしまい、あまつさえ「私も子どもたちに虐待をするク○野郎どもを許せないが、全員は無理だ」と答えていました。
これは親=サメの視点を欠いている意見であり、あまりに虐待の現状が見えていません。
グレイスが、所長が自慢していた“触るだけで点くランプ”を投げ捨てるのも、無理はありません。


〜ジェイデンとグレイスの物語〜

ジェイデンとグレイスはともに親から虐待されていることが共通しています。

グレイスは親から性的に虐待され、妊娠をも経験してしまいます。
メイソンから「僕たちはきっと大丈夫だ」と言われても、彼女は妊娠を喜ばず堕胎を選択しようとします。
しかも、グレイスはジェイデンの親のところに、バットを持ってかけつけたのです。

しかし、グレイスはジェイデンによって止められ、ふたりは代わりに車をバットで殴りつけました。
虐待をした相手本人を傷つけることはなかったのです。

この前にも、閉ざされた部屋に入れられたジェイデンとグレイスが、「あいつムカつく」とビニールの犬をボコスカ殴っていたシーンがありました。
その後に扉が“解放”されています。こういうかたちで誰かを傷つけるような気持ちを解消できるのであれば、それでいいのでしょう。

開けた扉

ジェイデンは、はじめは「役に立つ」ということで男性器の写真を壁に掲げていましたが、グレイスに「タコのニーナ」の話で自分の気持ちを知らせた後は、みんなの「誕生日おめでとう」のカードを貼り付けていました。

お祝い

グレイスもまた、虐待のトラウマを乗り越えて出産を決意します。
自分の赤ちゃんを画面越しに見たグレイスの顔は、とても幸せそうに見えました。

必要なのは、虐待をした相手への報復や、男性器への憎しみなのではなく、「これからの幸せ」なのでしょう。


〜マーカスの物語〜

黒人の少年のマーカスは、いっしょに野球をしていた生意気な少年を殴りつけたり、退所祝いには「食べ物も何もいらない、髪を剃りたい」とだけ告げたりと、交流すること、話すことを嫌っているようにも見えました。

しかし、ひとたびラップを歌い出すと、彼の本音が見えてきます。

「最高の人生への出口なんてどこにもない。
落伍者の証を押せよ
ク○母親め。ふつうの人生が送れない俺の苦しみがわかるか」


彼はなかなか自分のことを話せませんでした。
やっと自分の苦しみを、ラップにより話すことができたのです。
(ラップそのもに悪口が多いですから、言いやすかったのでしょうね)

彼は生意気な少年へ凶暴な牙をむいていましたが、なんとか思いとどまり、自分の腕をナイフで傷つけただけですみました。

物語の最後でメイソンが話していたのは、マーカスが入所中に惚れた女の子に告白し、出所後に偶然その女の子に再会して、つき合い始めたという事実でした。

これは物語の冒頭で、メイソンが話していた「ク○をもらした話」との対比になっています。
ク○を漏らした話の男の子が亡くなってしまったという事実に対し、マーカスの話は「これからの幸せ」を感じさせるうれしい話です。
エンドロールで流れたラップもまた、マーカスの人生への希望に溢れたものでした。

メイソンが本当に話したかった話ができ、そしてマーカスが幸せになれるかもしれない……
そのことを予感させる、ハッピーエンドでした。


〜サミーの物語〜

自閉症の男の子・サミーは急に施設を飛び出して、スタッフたちにたびたび捕まえられていました。
彼は、妹のように大事にしていた人形たちを取り上げられてしまいましたが、ネイトがひとつだけ見つけて彼に返してあげます。

最後にもサミーは施設から飛び出ますが、そのときはアメリカの国旗をマントのように背負い、“おどけて”いるようでした。

short termその2

映画の初めと最後は、ほとんど同じシーンです。
それなのに、最後に“希望”が見えるのは、子どもに“変化”が見えたためでしょう(アメリカの国旗を背負ったということは、アメリカの福祉がよりよくなってほしいという願いが込められているのかも)。

短い期間(ショート・ターム)でもきっと変わることができる。
その短い期間が終わっても、その後に幸せでいられる何かができるはず—それを考えさせてくれるラストシーンでした。

おすすめ↓
#183 ショート・ターム/寄り添う時間 | Tunagu.
映画"ショート・ターム&対談で明かされるクレットン監督の思い - 東京大学新聞オンライン

テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

2014-11-24 : 映画感想 : コメント : 1 : トラックバック : 0
Pagetop
コメントの投稿
非公開コメント

はじめまして
はじめまして。
いつも映画のレビュー参考にさせていただいてます!

『ショート・ターム』私も観に行きましたー

誰しも葛藤や悩んだりすることがありますが、その中にも変化や幸せというものがあり、時間の経過と共に必ず良い方向へ向かう瞬間があるということを教えてくれる作品でしたね。
実際に起こっている社会問題を取り上げている点もよかったと思いました。

カゲヒナタさんの記事、私のサイトにもリンクさせていただきますね^^
2014-11-29 01:03 : MIHO URL : 編集
Pagetop




« next  ホーム  prev »

最新の記事

最近のおすすめ映画

sully ポスター
イーストウッド、真骨頂
こえのかたちぽすたー
生きてくれて、ありがとう
怒り映画ポスター
信じていいのか

広告(同じウィンドウで開きます)


Twitter...

反響のあったorおすすめ記事

<初めて来られた方へ(ブログの説明)>
<著者プロフィール>
こちらでも記事を執筆中↓
<ヒナタカ | シネマズ by 松竹>

ご連絡の際は、以下のメールアドレスまでお願いします(☆を@に変えてください)
hinataku64_ibook☆icloud.com

2015年ベスト映画20
2015年ワースト映画10

2014年映画ベスト20
2014年映画ワースト10

2013年映画ベスト20
2013年映画ワースト10

2012年 映画ベスト20
2012年 映画ワースト10

2011年 映画ベスト20
2011年 映画ワースト10

映画パロディAVタイトルベスト10
映画邦題ベスト10&ワースト10
Yahoo!映画のステマ評価ワースト5
レビューサイト「Filmarks」の優れた点&ちょっと微妙なところ
剛力彩芽のゴリ押しっぷり
真のレゴムービーの日本版予告編

<2016年下半期>
『聲(こえ)の形』
『スーサイド・スクワッド』
『キング・オブ・エジプト』(吹き替え版)
『君の名は。』
『ゴーストバスターズ(2016)』
『シン・ゴジラ』
『ファインディング・ドリー』

<2016年上半期>
『葛城事件』
『TOO YOUNG TO DIE!』
『貞子 vs 伽椰子』
『ヒメアノ~ル』
『デッドプール』
『アイアムアヒーロー』
『ズートピア』
『クレしん ユメミーワールド』
『バットマン vs スーパーマン』
『ドラえもん 新・日本誕生』
『X-ミッション』
『オデッセイ』

<2015年下半期>
『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』
『ハーモニー』
『ガールズ&パンツァー 劇場版』
『PAN』
『ギャラクシー街道』
『UFO学園の秘密』
『ファンタスティック・フォー』
『進撃の巨人 後編』
『キングスマン』
『リアル鬼ごっこ(2015)』
『バケモノの子』

<2015年上半期>
『極道大戦争』
『マッドマックス4』
『チャッピー』
『ワイルド・スピード7』
『バードマン』
『恋する♡ヴァンパイア』
『イミテーション・ゲーム』
『イントゥ・ザ・ウッズ』
『アメリカン・スナイパー』

<2014年下半期>
『ベイマックス』
『ゴーン・ガール』
『寄生獣 PART1』
『紙の月』
『近キョリ恋愛』
『るろうに剣心 伝説の最期編』
『複製された男』
『思い出のマーニー』

<2014年上半期>
『渇き。』
『MONSTERZ』
『チョコレートドーナツ』
『LEGO® ムービー』
『LIFE!』
『アデル、ブルーは熱い色』

<2013年下半期公開>
『ゼロ・グラビティ』
『かぐや姫の物語』
『ウルヴァリン:SAMURAI』
『貞子3D2』
『ガッチャマン』
『劇場版銀魂 完結篇』
『モンスターズ・ユニバーシティ』
『サイレントヒル:リベレーション3D』

<2013年上半期公開>
『箱入り息子の恋』
『G.I.ジョー バック2リベンジ』
『藁の楯』
『クラウドアトラス』
『横道世之介』
『脳男』
『ライフ・オブ・パイ』

<2012年下半期公開>
『レ・ミゼラブル』
『悪の教典』
『バイオハザードV』
『るろうに剣心』
『プロメテウス』
『桐島、部活やめるってよ』
『アナザー Another』
『ヘルタースケルター』

<2012年上半期公開>
『スノーホワイト』
『ファイナル・ジャッジメント』
『メン・イン・ブラック3』
『貞子3D』
『TIME/タイム』
『ドラゴンタトゥーの女』

<2011年下半期公開>
『ミッション:インポッシブル4』
『アントキノイノチ』
『ミッション:8ミニッツ』
『ツレがうつになりまして』
『トランスフォーマー3』
『コクリコ坂から』

<2011年上半期公開>
『ブラック・スワン』
『八日目の蝉』
『手塚治虫のブッダ』
『わたしを離さないで』
『パラノーマル・アクティビティ2』

<2010年公開作品>
『ソウ ザ・ファイナル3D』
『リミット』

<そのほか>
漫画『花のズボラ飯』全話レビュー

守銭奴すぎるバンナムの課金ゲーム

検索フォーム

FC2カウンター

リンク

このブログをリンクに追加する

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
未設定
--位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
未設定
--位
アクセスランキングを見る>>

カレンダー

プルダウン 降順 昇順 年別

01月 | 2017年03月 | 03月
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -


ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。