日本映画史に残る大傑作! 映画『シベリア超特急』ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
そんなわけで『シベリア超特急』(製作:1996年)の感想です。
![]() | 水野晴郎 4500円 powered by yasuikamo |
個人的お気に入り度:10/10
一言感想:これは映画ではありませんでした
あらすじ
列車の中で殺人事件が起こる。
山下奉文陸軍大将(水野晴郎)はその事件のあらましを推理、いや断定し始めるのだった。
これはすごい、すごすぎる!
自分は本作を「殺人事件が起こるミステリーもの」「主人公が事件を解決する探偵もの」だと誤認していました。
しかし蓋を開けてみればビックリ。何が起きているのかさっぱり理解できない超難解な映画だったのです。
ふつうのミステリーであれば、むごたらしい死体や殺人シーンを見せるのですが、本作はよくわからない人物がいつの間にか死んでいたと説明されたり、主人公が死体を見てもいないのに殺人事件が起きたとのたまうのです。
死体を一切見せないという斬新な演出を用いた傑作には『模倣犯』もありましたが、その6年も前に、水野監督という天才が一歩、いや数千歩は先を行っていたことに驚かされました。
主人公のやっていることは、もはや推理ではありません。断定です。
いや断定ではなく、予知能力なのかもしれません。
主人公が何かことばを発すると、数秒後にはそのことばが100%的中する出来事が起こるのですから。
もしかするとボインゴのスタンド能力を持ってしまったのかもしれません。
この時点で自分は思いました。これは映画という次元を超えた何かだと。
殺人事件の内容そのものが理解できないミステリーなんて、いままでにあったのでしょうか。
ふつうのミステリーは「誰が犯人なのか?」ということで観客の興味を引かせるのですが、この『シベリア超特急』はまず何が起きているのかを脳みそをフル回転させて考えなければいけないのです。
『マルホランド・ドライブ』あたりの「難解な映画」を観たことがある人は、ぜひ本作にもチャレンジをしてみるとよいでしょう。
本作の革新的なところはそれだけではありません。
挙げなければいけないのは、主人公を演じた水野晴郎の神がかった演技力でしょう。
主人公はいかなる時も感情を表に出しません。
その滑舌はザボザボしており、ひとつの単語を把握するだけでも高度なヒアリング能力が問われます。
そして臨場感抜群のセットについても触れないわけにはいけません。
舞台は大陸を横断する鉄道なのですが、作中では一切車内が揺れることがないのです。
「映画の予算不足」や「演出力不足」などではない、水野監督ならではの素晴らしき妥協がここにもっとも表れていると言っていいでしょう。
そして物語は二転三転し、急転直下の結末を迎えます。
その衝撃たるや、『ユージュアル・サスペクツ』や『シックス・センス』などのどんでん返しが束になっても適わないほどでした。
これからこの映画を観る方は、ぜひラストの展開を予想してみることをおすすめします。
また、伏線の使われかたもすごすぎる!
映画の冒頭のシーンが、このように回収されるなんて誰が予想できるのでしょうか?
そして、本作のテーマは映画史上もっとも明確に描かれていると言い切っていいでしょう。
作品の根底にあるものは「戦争批判」です。
ラストシーンには水野監督のメッセージがストレートに凝縮されており、そのことばを聞いたときに自分は涙を流してしまいました。
映画を観終わった後すべての人は、水野監督がどうしても伝えたかったことを、これ以上なく理解できるはずです。
映画ファンを自称するのであれば、一度は観てほしい作品です。
観終わった後は、きっと世の中すべてのものが美しく見えて、映画が
「いやぁー、映画って本当(ほんっとう)におもしろいものですね!」
故・水野晴郎の映画愛を、ぜひ受け止めてみてください。
以下、作中のネタバレです↓
ごめんなさい。ネタバレを書こうと何とか努力をしてみたのですが、映画の中盤の展開が本気で理解できなかったので無理でした。
(ここから本音)
ねえ、何なの?あれは何なの?
この『シベ超』の本編、「変装をしたって言っていたけど人種すら違うから無理だろ」、「カットが変わると倒れる方向も変わる」、「『サイコ』のパクリ」、「犯人が捨てたはずの毒のついた服が列車に奇跡的に引っかかっていた」とか、軽く昇天するかと思う展開が何度も続いたんですけど。
その後に、水野御代のラストのセリフ、伝説と化している「2回のどんでん返し」が続くのですが、これを疲れたときに観ると本気で気を失う自信があります。
もう本当観てよかったと思えました。
わざわざ新宿のTSUTAYAまで行ってDVDを借りたかいがありました。
これで今年はどんなアブなそうな映画(例:『恋するヴァンパイア』)を観ても、きっとこの『シベ超」』よりもはるかにいい映画だと思えることでしょう。
あ、ちなみに↑上のネタバレなしの部分、タイトルと点数以外ではほとんどウソをついていません。
ていうか、映画の出来がアレすぎてどうがんばってもウソがつけなかった(=褒めることができなかった)というのが本音なのですが。
映画評論でほとんどの作品を褒めていた淀川長治さんはすげえよ……(たまに淀川さんも映画に文句を言っているけど)
水野御代のラストのセリフで笑いすぎてマジで涙が出ました。
「映画を超越した何か」であったことも本当です。
~よかったところを探そう~
菊地孝典さんがイケメンで、演技もうまかった。
以上。
↓参考
シベリア超特急 - みんなのシネマレビュー(ネタバレ注意)
シベリア超特急社会の窓からこんにちわ(超ネタバレ注意)
↓いろいろよく考えますよね
エイプリルフールに便乗しているサイトまとめ2015年版 - GIGAZINE
> これは映画ではありませんでした
そして、「映画」を観て、こう言うのですよね。
「映画ってホントにいいものですね」
> どうがんばってもウソがつけなかった
いや、そんなことより、このブログ記事の冒頭に掲げられているアマゾンの広告。
この作品のDVDが4500円だということの方が遥かにジョークだと思うのです。
>
> そして、「映画」を観て、こう言うのですよね。
> 「映画ってホントにいいものですね」
その言葉を書き忘れていたので追記させてくださいw