異文化交流しすぎ 映画『恋するヴァンパイア』ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
個人的お気に入り度:5/10
一言感想:みんなが幸せになれる素敵な映画です!(皮肉なしで)
あらすじ
桐谷美玲がヴァンパイアになってイケメンに好きだと言いたいのに言えない話。
自分は『貞子3D』や『MONSTERZ モンスターズ』などのツッコミどころ満載の珍作映画が大好きなので、『トワイライト』の逆バージョンのような設定(ヒロインのほうがヴァンパイア)、イケメンとイチャイチャできる胸キュンムービーと聞いて、本作を観ないわけにはいきませでんでした。
その期待は裏切られませんでした。
終盤では30秒に1回くらいツッコミどころが押し寄せる失笑ギャグ映画だったのですから。
本作の監督・脚本を務めたのは、中央戯劇学院(北京にある演劇学校)を卒業したばかりの鈴木舞さん。原作となる小説、コミック版も出版されています。
![]() | 鈴木 舞 616円 powered by yasuikamo |
![]() | 杉 しっぽ 463円 powered by yasuikamo |
鈴木さんはよほど中国(中華人民共和国と台湾)に思い入れがあるのか、作中の舞台は台湾と横浜、使われている言語は中国語と日本語というハイブリッド仕様となっています。
この点は、監督の「中国と日本がもっと仲良くなってほしい!」ということと、中国の有名な女優やアイドルに出演してほしいというのが理由だと思う(少なくとも自分にはそうとしか思えない)ので、そこまで悪い印象はありません。
ヴァンパイアと人間が共存を目指すという「異文化交流もの」という物語とシンクロしているように思えますし、これくらいだったら誰もイヤな思いをすることはないでしょう。
笑ってしまうのは、唐突に中国語を話すシーンがいくつもあるのだけど、伝わらないから中国語(漢字)が字幕っぽく表示されること。
作り手は中国語にも興味を持ってほしいんだろうなあ……
内容は、昔出会っていた初恋の男の子と再会しちゃった!→でも自分はヴァンパイア、いっしょになるためには好きな人をヴァンパイアをしないといけない→好きなのに、好きって言えない……
という、ただただハッピーなだけではなく、切ない恋心を描いていることがミソ。『トワイライト』の逆設定がちゃんと生きています。
この設定を「主人公のおばさん夫婦」で説明していることがこれまた上手くできています。
荒唐無稽な設定に説得力を持たせるためにちゃんと工夫が凝らされているのは、賞賛すべきことでしょう。
まあ終盤にはいろいろ詰め込んで大風呂敷を広げまくったあげくに設定が破たんしてツッコミどころ満載になっているんですけど……なんだかそういう点を含めて愛おしい作品です。
脇役に柄本明、田辺誠一、大塚寧々というよく知られたベテランを配役していることもよかった!
映画初出演の戸塚祥太さんは多少棒読みチックだったし、アイドルのチェ・ジニョクはブロークンジャパニーズで話していたりと、申し訳ないけど少々頼りないところがあったので、こうした実力のある方がしっかりと映画で存在感を見せてくれるのがうれしかったのです。
この映画が素敵なのは、誰も傷つかない、みんなが幸せになれる作品であるということです。
桐谷美玲ファン→かわいかった!
韓国のアイドルや戸塚祥太ファン→かわいかった&かっこうよかった!
メインターゲットの小中学生女子→もう胸キュン!素敵な恋物語!
珍作映画ファン(少数派)→すっげー笑った!大満足!
とくに小中学生女子には大プッシュでおすすめしたいところ。
やれどろどろしたいじめとかセックスとかの描写はほとんどないために安心して観れますし、作品の根底にあるテーマも教育上とてもよいものでした。
また、珍作ではあるんですが、そのあえて珍妙さを狙ってギャグシーンにしているところがあるので、笑っちゃいけないシーンで笑いをこらえないといけないという必要がないのがうれしかったですね。
珍作映画ファンとして、ストレスなく、大いに笑わせていただきました。
反面おすすめできないのは、真面目な恋愛もの、奥深さを期待している大人の女性でしょうか。
まあ予告の時点でそれを期待している人はほぼいないと思うので、この映画はそれでいいです。
そして……この映画はラストがわりと感動できるんですよ、本当に。
序盤から張っていた伏線がうまく機能していますし、作品が訴えているメッセージも素晴らしいものになっています。
これもうれしい不意打ちでした。
中盤までの展開は少々ヌルめで退屈さは否めませんでしたし、映画としての完成度は低いと言わざるを得ないのでお気に入り度は5点どまりにしておきましたが、個人的には大好きな映画です。
なぜなら、演出や脚本は拙いながらも「予算が少ない中でもいい映画にしたい!」という作り手の熱意は伝わってくるから。
胸キュン物語だけでなく、舞台となるパン屋の小道具なども、「女の子が好きなもの」へこだわりが見えます。
本当に応援したい作品です。おすすめします。
↓以下、結末も含めてネタバレです。観賞後にご覧ください。
※箇条書きでツッコミを入れますが、中盤までの展開はそれなりに端折ります。
~奇跡すぎる再会~
・台湾に住んでいる幼いころのキイラ(主人公)は、森の中でテツという少年と出会う
少女と少年が出会って素敵な恋バナという『小さな恋のメロディ』っぽいのがいいですね。
また、森の中の撮影、森の子や美術もしっかりしています。
・キイラの両親が殺されてしまい、彼女は母の姉夫婦のパン屋(横浜)に引っ越してくる。そのパン屋の名前は「BANPANYA(バンパン屋)」。
ヴァンパイアであることを世間にひた隠しにしなければならないのに、ヴァンパイアっぽい店名にしている意味がわからねえ。<なぜその店名に……
・ヴァンパイアは年を取らないという設定なのだが、おじいちゃん(柄本明)が発明した「アンチアンチエイジング」という薬でみんな年を取っていた。
このほか、「棺桶で寝るのは時代遅れ」「太陽の光でも平気」など、ヴァンパイアの設定を覆す設定が出てくる
・キイラはおばさんからお見合い肖像画を見せられる。
写真じゃなくて肖像画なのは、ヴァンパイアは写真には写らないからですよね。さりげない配慮です。
・キイラは、中国の留学生の女の子のミキ(モン・ガンルー)が川に身投げしていようとするのを助ける
自殺をしようとしていたのは失恋が理由。キイラは「ここから落ちると脳みそぐちゃぐちゃになって内臓ドバドバだよ」と乙女らしからぬことばで自殺を止めます。
・その後ミキはバイトとして雇われて、キイラがヴァンパイアであることがバレてしまう。
だけどその子はマンガ家志望でちょっとオタク気味だったので、むしろキイラがヴァンパイアだったことをうれしく思う。この設定はいいね。
・そこに唐突に怪しい販売員がやってきて、「おっぱいを大きくする塗り薬を買ってください!」とほざく。そしてキイラは臭いからその男が初恋の男の子のテツであると気づく
桐谷美玲が貧乳であることをディスっているんでしょうか。何気に台湾にいたはずの初恋の人が横浜に引っ越してくるというミラクルが起こっていることもすごいですね。
~芸人登場~
・キイラは、ミキを振った男が「あの女マジで重くてさー」ほざいているのを聞くと、男を後ろからマジ蹴りする。
男は「俺はこの変では少林寺のケンと呼ばれているんだ!」とキイラを倒そうとするが、逆にボコボコニされる。
桐谷美玲に倒されていたいと思っているドMな男性にとっては最高のサービスですね。
・パン屋が主催で音楽フェスティバルが開催する(どういうツテ持っているの)。そのメンバーにはリアル芸人のゴー☆ジャスやクールポコもいた。 <
お前らミュージシャンじゃねえだろ!
いや、ゴージャスは『ワールド・トリップ・レボ☆リューション』という曲をリリースしているんだけどさ。
・優勝はもちろんキイラの初恋の人、テツ。テツもキイラが昔に出会た女の子であることに気づいてデートをしようとするが、シャツにズボンをINの80年代ダサファッションで登場する。
当然キイラは、彼を洋服店と美容院に連れて行ってイメチェン。向井理のような美青年になる。
ここでのテツがバク転するのはアドリブだそう。身体能力も高いイケメンだな。
・テツの部屋(質素)にはヴァンパイアの新聞記事をまとめたスクラップブックがあった。
なぜならテツは父親をヴァンパイアに殺されてしまったから。このせいでキイラは余計に自分がヴァンパイアであることを打ち明けにくくなるわけね。これも上手いな。偶然起こりまくりだな!
・テツがガーリックチャーハンを作ったためにキイラは気絶する。
ヴァンパイアはニンニクのほかにも金属類も苦手。こういう特徴があるために、テツがしだいにキイラがヴァンパイアであることに気づいていくというのもいい。
・キイラは「私がヴァンパイアでも好きでいてくれる?」とテツに聞いてからすぐにテツに噛みついてしまうが、それは夢オチ。
夢オチにはガッカリしてしまうところですが、この後に「ヴァンパイアでも好きでいてくれる?」と聞いていたこと自体が現実であることがわかります。「夢オチかと思いきや、じつは現実でもあった」というの上手い。
~白い悪魔登場~
河原でマンガを描いていたミキのところに、マイク(チェ・ジニョク)と名乗る全身白タキシードの男が現れ、「コノヘンヲアンナイシテクレマセンカー」と聞く。
どう見ても不審者です。逃げて―!<でもイケメンだから笑顔です。
その後にマイクはバンパン屋にもやってきて、サムコンというグループ会社の御曹司だったことがわかる。そしてミキではなくキイラに「キミハイイニオイガスルネー」と言いながらいきなり結婚を申し込む。
元ネタはサムスンです。本当にありがとうございました。<デートとかすっ飛ばしていきなり結婚を申し込む不審者
・その後、マイクはキイラとテツがデートしている場所にストーキングしまくる。
そろそろ通報されてもおかしくねえよ。
・マイクは勇気を持って、カンペに書かれていた「キミジャナイトダメナンダー」というプロポーズ文句を曲がり角にいるキイラに言おうとするが、間違えて3人の幼女に告白してしまう。
事案発生しました。
・マイクはじつはヴァンパイアの手先であることがわかり(唐突)、パン屋に帰ってきたキイラを担いで連れて行こうとする。
・ミキはキイラを救うために、ヴァンパイアが苦手な「頭のツボ」を推してマイクを倒す。弱えーよ!
・かと思いきや、マイクは平気そうに起き上がってきた! どうして?と問うミキにマイクは開口一番「ドウヤラ、ツボガ1センチズレテイタヨウダー」とほざく。
ここでのマイクのドヤ顔はこの映画最高の爆笑ポイントです。
~ツッコミどころしかないクライマックス~
・テツはキイラのことが気になってバンパン屋に向かうが、すでにキイラはさらわれた後。そこでテツは唐突におばさんに「行くわよ!テツ君!」と声をかけられ、おじいちゃんは「戦い方を教えよう」と机の上にゴトりと巨大なナイフを置く。
怖えーよ!ていうか普通の人間のテツ君を戦いに巻き込むなよ!
・キイラはなぜか台湾にワープしており、親のかたきヴァンパイアと再会している。
・このヴァンパイアがキイラの両親を殺した理由は、人間と共存の道を選ぼうとしていることが気に入らなかったかららしい。ほっとけばいいやん。名探偵コナン並に殺害の動機がひどい。
・そこに「待った!」と言いながら、おじいちゃんのテレポート能力でやってきたおばさん夫婦とテツがやってくる。
この登場シーンが異様に格好よく撮られているのが笑いを誘う。
・なんかそこにホスト集団みたいな敵ヴァンパイアのもやってくる。
しかし、ぬぼーっと現れるだけで戦闘シーンなし。何しにやってきたのおまえら。
・おばさんは巨大なバズーカ―砲を背負い、「くらえ、ニンニクバズーカ―!」とキイラごとヴァンパイアたちを吹っ飛ばす。
えー!キイラを巻きむなよ!ちなみにこの時にホスト集団は全滅したっぽい。弱えーよ!
・なぜかテツがキイラを救出できており(マジでなんでかわからん)、城の外に逃げている。
おじいちゃんのテレポート能力はどうした。さっさと日本に戻れ。
・ヴァンパイアはテツを軽くふっ飛ばし(そりゃそうだ)、キイラに求婚する。
・キイラはヴァンパイアとキスをするかと思いきや、心臓をナイフでブッ刺す!
そのナイフどこから持ってきたの?
・ヴァンパイアがチリとなって消えてハッピーエンド。よかったね。
本当雑やな。ていうかラスボスのくせに弱えーよ!(3回目)
~エンディング~
・テツは「君がヴァンパイアでも、一生君を愛していくよ!」と全力でキイラのことを受け止める
・ふたりはベッドで朝チュンする。
裸がほとんど見えないので、お子様にもやさしいね!(棒読み)
・キイラは「記憶を消す能力」を使い、テツに自分のことを忘れさせる。
キイラがなぜテツの記憶を消したかと言えば、おじさんが「元プロ野球選手の人間で、ヴァンパイアになることを選んでだが、人間としての人生に未練があった」ことを聞いていたから。
キイラは大好きな人といっしょに生きる自分の幸せよりも、テツが愛している音楽への道を選ばさせたとも言えます。
(ヴァンパイアであることを隠して生きるためには、野球選手やミュージシャンのような目立つ職業を選ぶわけにはいかないのでしょう)。
いや、これは泣ける。ただ、セックスまでしているのに、よく血を吸う欲望を抑えられたなという点はツッコミたいけど。
・その後おじさんは「俺はヴァンパイアになったことを後悔なんかしていない!」と言う。
さっきと正反対のことを言っているけど、まあ「未練はあるけど後悔はしていない」というのは何となくわかる。
・ミュージシャンとしてライブをしていたテツは、「夢の中に出てくる女の子に会いたい」ということを告げていた。
テツには、キイラの記憶を消す能力が完全に効いていなかった、キイラのことを忘れることができなかったのです。
・外でキイラに再会したテツは「はじめまして」と告げ、キイラも涙ながらに「はじめまして」と返すところで映画は終わる。
ふたりの関係はリセットされたけど、ここから新しい、幸せな関係が始まる……そんな未来を想像させるエンディングなのです。
完
いやあいい話ですね!
テツの幸せをためにあえて記憶を消して、「想ってくれるだけで十分なの」と告げるキイラはとても魅力的でした。
しかし、運命はそれを許さず、ふたりの幸せを予感させるラストにする。これはお世辞抜きに褒めたいです。
ただ、ミキと白タキシードの変態(マイク)がパン屋で結婚式を挙げているというもうひとつの衝撃のオチで台無しになりましたが。
こいつは結婚式でも「キミモヤッパリイニオイガスルネー」とかほざいており、やっぱり臭いフェチの変態にしか見えません。
ていうか、お前敵だったんじゃないの?なんで和解してんの?
まあ本作のテーマは「共存」だったし、みんながハッピーになった終わりかたなのでまあいいや(瞬殺されたラスボス以外)
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