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彼らのいた時間 映画『メイズ・ランナー』ネタバレなし感想+ネタバレレビュー

今日の映画感想はメイズ・ランナーです。


個人的お気に入り度:6/10

一言感想:「WCKD」って何?


あらすじ


少年(ディラン・オブライエン)は巨大迷路に囲まれた場「グレード」に送り込まれる。
自分のすら思い出せない少年は、その場にいた「ランナー」と協力して脱出を目指そうとするのだが・・・・




同名のティーン向け小説を原作とした作品です。

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ジャンルとしてはいきなり閉鎖された空間に放り込まれて、理不尽な状況で戦わざるを得なくなるというデス・ゲームものです。

閉鎖された空間で死の危険にさらされるのは『CUBE』、
少年たちのサバイバルが描かれている点では『蝿の王
壁に囲まれた場所で生活をしているのは『進撃の巨人』と、
なかなか既視感に溢れまくっている設定はありますが、独自のおもしろさもあります。

そのひとつが、「安全に暮らせる場所」が「難攻不落な迷路」に囲まれているというシチュエーションです。
つまり、少年たちは「危険を冒してでも迷路に行くか」「それとも安全に暮らすための秩序を守るか」という選択をすることができます。

そのため、少年たちは「安全に暮らすことを望む保守派」と「現場からの脱出を目指す革新派」に別れることになります。
この組織の対立と人間ドラマが、作品の大きな魅力になっているのです。

そして、同じく死のゲームに強制参加をさせられる『ハンガー・ゲーム』がダラダラと「ゲーム開始まで」を描いていたのとは違い(個人的にはあの描写も好きですが)、映画の冒頭がゲーム場所で目覚めるシーンになっているというのも長所でしょう。
しかも主人公は記憶喪失になっているために、観客は「わけのわからないところに放り込まれた」という状況がより理解でき、主人公に感情移入できるようになっています。


また、本作は3部作のうちのひとつということで、『ロード・オブ・ザ・リング』や『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』のように「中途半端なところで終わったらいやだなあ」と思う方もいるかと思います。
そこはご安心を。本作は、この1作でけっこうキリのいいところまで話が進むのです。

原作のタイトルをよく見てみると、
1作目:The Maze Runner
2作目:The Scorch Trials
3作目:The Death Cure(ここで3部作は完結)
4作目:The Kill Order(1作目の前日譚)
5作目:The Fever Code(作品の時系列は4作目よりも後、1作目より前)
と、それぞれまるっきりタイトルが変わっています。
原作を読んではいないのではっきりとしたことは言えませんが、迷路を冒険する「メイズ・ランナー」というタイトルがふさわしいのは1作目のみで、ほかのシリーズは別のこと(世界観の謎の解明や登場人物の成長)を描いているのでしょう。

つまり、本作だけで「メイズ・ランナー」の物語自体は完結しているのです。
それでも作中の謎の多くは「続く」になるのでモヤモヤも残りますが、「1作だけで楽しめないのはいや」と思う方にもおすすめできるのではないでしょうか。


難点だと感じたのは、
(1)作中の「ルール」あいまいに思えること
(2)「迷路らしさ」があまりないこと
です

(1)については最低限の説明はされるのですが、「どうして◯◯は◯◯なのか」「いつ◯◯するのか」と考え出すと、いくらでもツッコミどころが出てきてしまいます。
あまり説明しすぎると散漫になってしまうので難しいところですが、自分はもっと明確なルールがあるゲームのほうが好きです。

(2)については、巨大な迷路を知恵を使って進むという知略サスペンスよりも、飛んだり跳ねたりのアクションが主体という印象なのです。
こうなったのは、「主人公がグレード(迷路の中心にある生活の場)の場所に来たのは、はじめて少年たちが住み始めてからだいぶ後」という設定のためでしょう。
つまり、主人公の前にも迷路に挑むものがたくさんいたため、ある程度は迷路が攻略されているのです。
迷路をイチから解くようなシチュエーションを期待していると、ここは期待外れになってしまうかもしれません。

しかし、本作では(2)の欠点をうまく展開に活かしています。
詳しくはネタバレになるので↓に書きますが、とりあえず言えるのは「主人公のいなかった時間」を想像させる演出があるということ。
主人公の視点のみで展開しているのにもかかわらず、先にグレードに住んでいた少年たちの想いや苦悩がわかるようになっている……これは見事な語り口でした。


ほかに気になることとしては、うっとうしいくらいに「WCKD(ウィキッド)」という謎の単語(略称)が出てくることでしょうか。
WCKDの読みは「邪悪な」「不道徳な」を意味するwikedといっしょです。
それなのに、作中では「WCKD is good」と矛盾するような言葉を何回も聞くため、人によっては頭に「?」が出まくってしまうのではないのでしょうか。
WCKDの意味についても、一応ネタバレになるので↓に書きます。


いろいろと書きましたが、要するに少年たちによるハラハラドキドキのソリッドシチュエーション×アクションを期待すれば大いに楽しめる内容です。
頭空っぽでもおもしろいですし、登場人物の想いを考えてみると奥深さも出てくる、万人向けの優れた娯楽作品でした。

また、G(全年齢)指定で血は一滴も出ないとはいえ、かなり怖いシーンもあるのでお子様の鑑賞にはご注意を。
ちなみに性描写は一切ありません(あの状況で若者の性の乱れがみられないのもツッコミどころ)

映画を観た後は、実際にある巨大迷路で遊んでみたくなるかもしれませんね。おすすめします。

↓以下、結末も含めてネタバレです。鑑賞後にお読みください。









〜野暮な不満点〜

ちょっと気になったのは、「いつ迷路への扉が開いて、いつ閉まるのか」という「制限時間」への言及が一切なかったこと。
このシチュエーションでは時間がわからないかもしれないけど……太陽の位置などや日時計などを利用すればだいたいの時間はわかるので、そこは明確にルールを決めておいてほしかったです。

終盤ではグレードにもグリーバー(モンスター)たちがやってきて阿鼻叫喚の地獄絵図になるのだけど、なぜか倒すこともなくグリーバーたちはいなくなります。
これがなぜなのかは映画の最後まで明かされないので、けっこうモヤっとしてしまいます。
※以下の意見をいただきました。
> グリーバーたちがグレードに襲撃時に急に退却したのは、目的が、記憶を取り戻したアルビーだったのかな、と思いました。それが当たってたら、アルビーは回収されただけで、生きてるのかも…?


そもそも、ウイルスに対抗できる少年たちを実験するためだけにこんなことしてんじゃねえよという身も蓋もないツッコミもできますね。
ただ、次回作の予告では「組織の目的は別にある」と言っていたので、まだ期待はできるかもしれません。


〜3年間〜

ランナーたちが3年間も迷路に挑んでいるという設定には驚きました。
「ボックス」が来るのは月イチのため、少なくともこれまで36人が送られてきたというわけですね。

さらに秀逸なのは、ニュートが語ったこの言葉でした。
「はじめにここに送られたきたやつがいる。そいつは1ヶ月もずっとひとりだったが、生き続けていた。アルビーだよ」
これだけで、アルビーがなぜ「ボス」になったのか、彼の精神性の強さがわかるのです。


〜保守派のギャリー〜

保守派の少年ギャリーの言い分には納得出来るところもありました。

トーマスはギャリーのことを「いけ好かないやつ」と言っていましたが、(ニュートが言ったように)彼は迷路に入ろうとしていたトーマスの命を救っていました。

はじめはニュートも保守派で、グレードで生きるためのルールとして、
1.役割を果たすこと
2.仲間を傷つけないこと
3.壁を越えないこと
を掲げていました。
おそらく、それもギャリーが「秩序」のために決めたルールなのでしょう。

グレードの過去には「暗黒時代」があったこと、仲間が死んでいった事実も知らされます。

ギャリーは、グレードの仲間を守る者として「責任」を負っていたところもあったのではないでしょうか。
グリーバーがグレードにやってきて、仲間がたくさん殺されたとき……その出来事の発端となったトーマスを殴ってしまったのも無理はないと思います。

一方で、トーマスは「新人」でありながらグリーバーの殺害に成功し、その危険な行為をも皆に肯定され始めます。
トーマスはギャリーに対して「3年もいて何も行動を起こさない!いまこそ脱出のために何かをするべきだ!」と憤ることもありました。

ギャリーは「たとえ脱出できなくても仲間の命を大切にする」、トーマスは「たとえ危険な目にあっても脱出を目指す」というそれぞれ違う価値観を持っています。
組織において、どちらが正しくて、どちらが間違っているというのは簡単に論ずることはできないでしょう。

最後に、ギャリーは「脱出は不可能だ」と涙ながらに訴え、仲間のチャックを殺し、自らもミンホに槍を投げられ死んでしまいます。
あれだけ仲間の死に憤っていた彼が、自らの手で仲間を殺してしまうのは悲劇的です。

それと同時に・・・映画ではギャリーの「死に顔」をなぜかアップで映していたので、「じつは死んでいないのでは?」とも思えます。
その答えは、次回作でわかるのでしょう。


〜どうでもいいよ〜

トーマスは薬を使ったことにより、自分が「彼ら(少年たちを管理する側)」であったことを思い出します。
ニュートがそんなトーマスに言ったことは「どうでもいいよ」でした。
ニュートは、トーマスの過去なんかよりも、いまの人物が気に入って、脱出ができると信じてそう言ったのでしょう。

トーマスは仲間を死の危険にさらしていたことは事実ですが、チャックには両親に渡したいと願っていた小物を(自分の手で渡すために)返していました。決して仲間のことをないがしろにはしていません。
彼は無鉄砲ではありましたが、「革新派」として仲間の信頼を集めたのには確かな理由があったのでしょう。


〜迷路を解いていたから〜

最後に「革新派」となったトーマスたちは、迷路の「7」の場所に行き、グリーバーに襲われながらも脱出を試みます。
ここで入力する必要があったのは、迷路に点在していた8桁の数字でした。
つまり、ミンホたちランナーたちのこれまでの努力がなければ、トーマスたちは脱出できなかったのです。

最後に新人・トーマスではなく、先駆者たちの努力があってこその脱出を描いたのは、この作品でいちばん好きなことでした。


〜WCKDの意味〜

作中で言われていたWCKDの意味が、最後まで明らかにならないのは面食らいました(次回作にお預け)。
ただし、英語版のwikiでその意味はわかります。→<WICKED - The Maze Runner Wiki>(以降のシリーズのネタバレ注意)
WCKD(原作ではWICKEDという表記)は「World In Catastrophe: Killzone Experiment Department」の略。直訳すれば「世界的大災厄:殺人地帯の実験局」と言ったところ。
※劇中でも(字幕は表示されませんでしたが)略称の意味は説明されていたそうです。

次回作「The Scorch Trials」ではWCKDが「組織」と字幕で表現されており、少年たちを統括している「彼ら」の名前であるのでしょう。

その殺人をも厭わないものが、なぜ「WCKD is good」と言われているのか?
おそらく、「WCKDは人類のためには必要」という、必要悪であることを示しているのではないでしょうか。
少年たちがその必要悪に立ち向かわなければならないのなら、その戦いはさらに葛藤の大きい、過酷なものになりそうです。

↓おすすめ
佐藤秀の徒然幻視録:メイズ・ランナー~記憶力回復実験?

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

2015-05-29 : 映画感想 : コメント : 5 : トラックバック : 0
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非公開コメント

No title
これがコケると日本で続編公開は無いそうなので応援したかったのですが・・・
う~む。微妙・・・。
グレードの中の生活を評価されておられますが、私は「それ行け!ディラン・オブライエン探検隊!」なノリでの迷路探索を楽しみしていたのですが、既に迷路は探索し尽くされていて後はグリーパーから「鍵」を入手するだけだったとか・・・かなり拍子抜けしました。
なにより、ラストでいきなり謎がベラベラ喋り明かされたかと思えば(しかも突っ込み所有り過ぎ)新たな謎がドッと出て来て、かなり「どうでもいいか・・・」な気分になってしまいました。

>ちなみに性描写は一切ありません(あの状況で若者の性の乱れがみられないのもツッコミどころ)
画面に女の子が登場していなかったように憶えています。テレサ以前は女の子は居なかったのではないでしょうか。
色恋沙汰のトラブルを起こさない為の措置かもかしれませんけど、若くて健康な男の子ばかり閉鎖空間に押し込んで置けば、グレード内が薔薇の花園と化しそうな気が・・・
2015-05-31 22:01 : 毒親育ち URL : 編集
いつも楽しく拝見しています。
原作も読んでないので、想像の域を越えませんが…
グリーバーたちがグレードに襲撃時に急に退却したのは、目的が、記憶を取り戻したアルビーだったのかな、と思いました。それが当たってたら、アルビーは回収されただけで、生きてるのかも…?
2015-06-19 01:09 : つな URL : 編集
Re: タイトルなし
> いつも楽しく拝見しています。
> 原作も読んでないので、想像の域を越えませんが…
> グリーバーたちがグレードに襲撃時に急に退却したのは、目的が、記憶を取り戻したアルビーだったのかな、と思いました。それが当たってたら、アルビーは回収されただけで、生きてるのかも…?

なるほどー追記させてください。
2015-06-19 23:06 : ヒナタカ URL : 編集
たしか…
映画を見てないのでどのような状況で襲われていたのか分かりませんが原作ではグチャグチャにされていたような…映画オリジナルって事もあるでしょうし、ネタバレになってたらごめんなさい
2015-07-25 11:51 : moto URL : 編集
追記
アルビーのことです
2015-07-25 11:53 : moto URL : 編集
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