シュールすぎる映画『リアル鬼ごっこ(2015)』ネタバレなし感想+ネタバレレビュー

個人的お気に入り度:6/10(一般の方には0点)
一言感想:予想の斜め上だった
あらすじ
じょしこうせいがちまみれになったり、わぎりになったりします。
ゲロゲログロンチョな映画を得意とする園子温監督による、女子高生をぶっ殺しまくるゲロゲログロンチョな映画でした。R15+指定も大納得!
もう感想としては以上です。
まあさすがにそれだけだと申し訳ないので、まずは原作について語りましょう。
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この原作が大評判となった理由のひとつが、全方位的にケンカを売ったあたらしいにほんごでした。
たとえば「ランニング状態で足を止めた」「二人が向かった先は地元で有名なスーパーに足を踏み入れた」「記憶を全く覚えていなかった」 などなど。
ようするに頭痛が痛くなる記述のオンパレードでした。
『インサイド・ヘッド』にいたムカムカの存在意義を確かめたい人、日本文学の今後を考えたい方はぜひ読んでみましょう。いや、しょっちゅう日本語を間違えているこのブログの管理人が言うことではないんだけど。
残念ながら現在出版されている文庫版ではこれらのすてきなにほんごが修正されているようなので、読むなら自費出版されたこちらの単行本がおすすめです。
そして……園子温が原作を読んでいないどころか、過去の映画版すら観ていないことが明らかとなり、その事実が軽く炎上していました。
おかげさまで、この2015年の映画版は「捕まったら殺される鬼ごっこをする」という以外に、原作との共通点が1ミリもみられない作品となっています。
これは、本気で『リアル鬼ごっこ』というインパクトの強いタイトルを使いたかっただけです。
2008年版の映画『リアル鬼ごっこ』の監督でもある柴田一成プロデューサーも「この人気の理由はやはり、ネタになる、ということが大きい。タイトルのインパクトと、捕まったら殺される鬼ごっこというコンセプトのキャッチーさがウケた」と、その「ネタ」部分だけを取り上げたコメントをしています。
さすがに原作に対して不誠実すぎます。
しかし……『リアル鬼ごっこ』が売れた理由は、その「ネタ」部分にほかならないという事実があるので、これでいいのでしょう。
原作で構築された世界観やサスペンス描写ははっきり言って稚拙だったので、この原作を切り捨てる、思い切った作品作りの姿勢も間違いではないように思えるのです(こう言うとヒドいな)。
本作の炎上具合が大したことがなかったのは、一般の方も原作のアレっぷりを認識していることと、実写映画版『進撃の巨人』の炎上具合がそれどころじゃなかったことが理由なのかもしれませんね。
また、個人的にはこの園子温監督の「原作も過去の映画版も知らない」という発言は、建前というか、炎上商法なのではないか?と疑ってしまうところがあります。
なぜなら、この園子温版『リアル鬼ごっこ』は、過去の映画作品と同じような設定があったからです。

2008年版の映画にあった(原作にない)とある特殊な設定が、今回の映画版にもあるというのは、偶然とは思えません。
女性の胴体がちょん切られるというショックシーンも共通していましたし、こっそり園監督は映画版を観ていたんじゃないでしょうか……推測にすぎませんが。
あ、そろそろ映画本編について語りますと、本気でヒドい仕上がりになっています。
なぜなら、本作は展開に筋が通らなすぎる不条理劇だから。
最近で言えば、さっぱり意味不明だった映画『複製された男』や、人類には早すぎた映画『極道大戦争』が近い印象です。
この映画に予備知識がない方は「女子高生が殺されまくるだけの映画」だと思うでしょう(そうなんだけど)。
だけど、その認識は甘い、甘いのです。
序盤から「え?」と思う展開になるし、終盤になるとアホらしすぎて笑うしかないという有様でした。
つまり、この映画は意味不明な展開のオンパレードなうえに、女子高生をぶっ殺しまくっているのです。最低やないか。
そんなわけで本作は一般のお客さんにはまっっっっっっっったくオススメできないのでした。
こんなク◯映画のために、トリンドル玲奈さん、篠田麻里子さん、真野恵里奈さんはちゃんとした演技をしています。
一般の方の「キャストが不憫だと思う」という感想は100%正しいです。
園監督は『新宿スワン』で一般向けの作品を手がけたと思ったら、すぐさまこんな映画を撮るんだもんなあ、クレイジーすぎます(褒め言葉)。
なお、園監督はヒット作『自殺サークル』でも不条理劇を手がけていました。
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女子高生が序盤から死にまくることや、観ていてモヤモヤする「謎」があることなど、けっこう今回の『リアル鬼ごっこ』のルーツを知ることができる作品です。
ちなみに、本作の主人公の名前は「ミツコ」で、過去の園監督作品の多くでミツコという名前の女性が登場しています。
本作には『新宿スワン』と同じく「SONO SION'S FILM」というロゴがなかったのですが、ちゃんと園監督らしさを随所に感じる映画になっていました。
あと、黒い画面に真っ白な羽が落ちるのは、思い切り『ブラック・スワン』を意識しているよなあ……(これもある意味で不条理劇だし)。
さて、本作は総括すれば意味不明な不条理劇×ナンセンスなグロ映像、という評価になってしまうわけですが……自分はこの「不条理」ということがキライじゃありません。
キッチリ決まったやり取りをする日常では、暴力や不条理などは体験できません。
映画は「非日常」を提供してくれる媒体であるので、ただ不条理を突きつめて描く作品があってもいいと思うのです。
自分はデヴィッド・リンチ監督作品をはじめとした意味不明な作品が大好きなので、本作も大いに楽しむことができました。
映像で出色なのは、ドローンでの撮影が行われていること。
日本映画ではよくクレーン撮影が行われていますが、ドローン撮影はより手軽にできる上、空間の広がりや疾走感を感じられる映像をつくることができるのですね。今後はもっとドローンを利用した映画が出てくるのかもしれません。
単純に残念なのは、上映時間が85分と短いのに、間延びしたようなシーンがあったこと。
女子高生がウッフアハハと話し合っているシーンは好きなのですが、トリンドル玲奈さんが走りまくるだけの画は明らかに「引き伸ばし」っぽさを感じてしまいました。
あ、あとパンチラがこんなにうれしくない作品は初めてでした。
ビッ◯な女子高生が多いからなあ。パンチラと「恥じらい」はセットで用意すべきだと思いました(我ながら何を言っているんだろう)。
そんなわけで本作は積極的にオススメしたくないのですが、『極道大戦争』などのイカれている映画が好きな方、女子高生が死にまくるのが観たいという悪趣味な方はぜひ劇場へ。
以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓
〜第1ステージ:みんな輪切り→パラレルワールド誕生〜
いやーびっくりした。
かまいたちにより女子高生ひとクラスぶんがバスごと輪切りなるというショックシーンもびっくりでしたが、いきなりパラレルワールドに突入するのですから(2008年版の映画もパラレルワールドに移動していました)。
ミツコは「女子高等学校」という校名も記されていない女子校の生徒となり、アキ(桜井ユキさん)という「知らない親友」にも声をかけられるのでした。
あだ名が「シュール」というあだ名の女の子(冨手麻妙さん)は、ミツコのいた世界の存在を肯定し、「石を池に投げて、ワニがいきなり現れることだってあるかもしれない」と、「どんな未来の可能性も存在している」ことを語っています。
だから、担任の先生(高橋メアリージュンさん)が授業が始まると同時にマシンガンを撃ってクラス全員を皆殺しするというのも「可能性」としてあるというわけ。
この映画は「シュール」という言葉を免罪符に、「どんなヒドい展開もあり得るんだ!」と言い訳しているとも取れますね。
〜第2ステージ:結婚式大バトル〜
ミツコは、容姿が25歳の「ケイコ(篠田麻里子)」へと変わり、結婚式をすることになります(ついていけねー)。
結婚式場にいたアキはいきなり来賓者をぶっ殺しまくり、ケイコもウェディングドレス姿になり、来賓者と格闘しまくるのでした(意味わかんねー)。
〜第3ステージ:マラソンしながら安っぽい青春ドラマ〜
今度は、ミツコはマラソン中の「いずみ(真野恵里奈)」へと変わり、走りながら仲間と「あのときはよかったよねー!」などと安っぽく思い出を語ることになりました。
そこに追いかけてきたのは、ケイコの新郎だったリアルな豚でした(意味わかんねー)。
このあと、いずみは廃墟のような場所に行って、そこで貞子集団に出会って、アキの両腕に埋め込まれたコードを引っ張るとアキが真っ二つになって、つぎのステージのドアが開きました(意味わかんねー)。
〜ゲームでした〜
ミツコは、男たちが集まる怪しい路地裏で「女子高生たちによる、あの『リアル鬼ごっこ』が立体化」という看板を目にします」
そして・・・その先の廃墟にいた老人はジョイスティックを使い、古いテレビに映し出されていたミツコを操作していました。
そこにはミツコやケイコやいずみのクローンも展示されています。
そう、この『リアル鬼ごっこ』の世界は、女子高生のクローンを使ったテレビゲームだったのです。
ちょっと『火の鳥』の生命編(傑作!)を思い出しました。
思えば、クラス全員が死ぬような状況でも、ことごとくミツコだけ生き残っていたのは「ゲームの主人公だったから」なのでしょうね。
RPGで言うとところの、ゲームの進行上必要な演出「負けイベント」のようなものです。
結婚式をめちゃくちゃにするというステージがあったのは、「25歳なんてオバサンだよ」というロリコン老人(製作者)の主張があったためかもしれません。
〜斎藤工登場〜
そして、老人は若き日の自分のクローン(斎藤工さん)を作り出していました。
老人は「私にはかなえられなかった望みがあるんだ」と語り、いきなり斎藤工が脱いでパンツ一丁の姿となり、ベッドに倒れこんで女子高生のトリンドル玲奈を「おいで!」と誘うのでした(←笑い死ぬかと思った)。
そう……この映画は、女子高生とセックスしたいという夢を叶えるために、老人が女子高生を主人公としたテレビゲームと、若き日の自分のクローンを作り上げたというアホらしすぎる物語を描いていたのです。
ていうか、その老人のクローン(女子高生とセックスする相手)が、「抱かれたい男」ランキングで1位の斎藤工だというのは説得力がなさすぎです(笑)。
まあこのクローンは、老人の「理想の姿」だったんでしょうけど。
あ、先ほどは「キャストが不憫」とは言いましたが、斎藤工さんは楽しそうに演技されていて何よりです。
〜ゲームの終わり〜
この後にミツコが自殺を選ぶと、ほかのパラレルワールドのミツコたちも自殺して、すべてが「終わり」を迎えます。
ゲームの中のキャラクターが死んでも、ゲームは動き続けるのでは?と思うところですが・・・
このゲームでは「殺されないように逃げる」女子高生が主人公なので、「自分から死を選ぶ」という選択をすることは、プログラムの根底を覆すようなものなのでしょうね。
この物語で描かれたのは……テレビゲームで女子高生を殺しまくったあげく、セックスする夢までも叶えようとしたけど、ゲーム内でもその女子高生に裏切られるという、悲しき童貞老人の顛末でした(同情はできんが泣ける)。
老人のお姿↓
斎藤工、老人役で特殊メイク4時間半! 園子温監督が絶賛 : 映画ニュース - 映画.com
>一般の方には0点
どうやら私は一般人だったようです・・・。
何が気に入らなかったかというと自分でもよく解らなかったのですが、ヒナタカさんの解説を読んで再考察。
>不条理劇
これに乗れなかったのが原因かなあ・・・。
「TOKYO TRIBE」や「極道大戦争」は笑えるシーン(それこそ不謹慎だろゲスが!と言われても仕方ない発言・・・)が多かったのですが、本作の女子高生達はただただ悲惨で可哀想としか思えませんでした。
「TOKYO TRIBE」や「極道大戦争」は屈強な男性達が積極的に立ち向かっていく物語なのに対し、本作は泣きながら逃げるだけしか出来ないか弱い少女達だからだったからかな・・・。
なんだかもう、ただ悪趣味映像を垂れ流されただけという感じで、こんなに「早くエンドロールに入ってくれ!」と思った映画は久しぶりです。
>〜斎藤工登場〜
全員もう20代とは言え、十分美少女で通りそうなアイドル女優達がミニスカート翻してパンツ全開なのに、1mmも興奮出来ませんでした。
なのに最後にイケメンのパンイチ姿に癒されるとは・・・(何やってんのお父さん!?「虎影」を観る目が変わってしまうよ!?)
オチは最近観た映画だと「デッドシティ2055」が近い感じだったかなあ。
(人造人間だけが住む街でどんな不道徳な犯罪もやりたい放題出来る!という悪趣味全開テーマパークのお話です)
「新宿スワン」は観ていませんが、自分には園子温ブランドが大暴落な一本となってしまいました。
この気持ちを「ラブ&ピース」で癒されたいです。
私も例に漏れず一般人だったようです・・・
・不条理劇
・走って逃げる主人公
・主人公を成長させる仲間の存在(ただし仲間は死ぬ)
・最後は脅威から開放されハッピーエンド(解決方法が理解不能の為観てる側は全然ハッピーじゃない)
・・・ここまで書いて気づいたんですが、
これ完全にゴールデンスランバーじゃねぇかよ。
そりゃ自分には合わねぇよって一人納得しました。
そう考えると世間では人気のゴールデンスランバーなんで
コアすぎる自分よりむしろ真の一般の人達のほうが大喜びしそうなんだけど・・・
解せぬ。
あとは、斎藤工のベッドシーンインパクト強すぎてトリンドルの下着姿がどうでもよかったですwww
虎影観たあとなんで余計笑いました。
他の方の評論などが前知識として頭に入っていて、そちらの方に頭がひっぱられて映画を見ているんだなとマッドマックスや進撃の巨人などのレビューを拝見させてもらって感じました。
なんかもうすごすぎてすべてがツッコミで私はずっこけようと思いましたが、もう夏バテで暑さで疲れてしまいました。
...と原作者さん風に書いてみました。
黒パンツ一丁の斎藤工を想像したらもうおかしくて、私なら映画館で耐えられないと思います。
これからもクO映画レビュー楽しみにしています。
にとりさんのゴールデンスランバーにそっくりという意見に膝を打ちました。あれも確かに不条理ですよねえ・・・。
自分は斎藤工が脱いだ瞬間の「劇場内みんな失笑(自分は爆笑)」が体験できただけでも満足です。
もちろん。この一本で園監督作品なんてもう観ない!とまで思っている訳ではないです。
ただ園監督ってもっと深いテーマを表現する為に恐れず表現の自由を行使する人・・・(※)だと勝手に思っていただけに、こんな個人的性癖を金と名声に物を言わせて具現化してみました!的なものを観てしまって、この気持ちを表現するなら・・・真面目でイケメン紳士な彼と清い交際を続けて来て、いざベッドインしたらトンデモナイ性癖をカミングアウトされちまった乙女の心境と言うところでしょうか(余計解り辛かったらごめんなさい)
でもこれだと園監督にしても「地獄でなぜ悪い」や「TOKYO TRIBE」を受け入れてくれた君なら解ってくれると信じて打ち明けたのに!裏切られたのはコッチだよ!?て所かもしれませんね。本当について行けなくて申し訳ないのですけど、これはちょっと無理でした・・・。
※「恋の罪」に「地獄でなぜ悪い」や「冷たい熱帯魚」など、このくらいやらずに本作のテーマの何を表現出来るんだよ!?映倫なんて糞喰らえだ!!とくらいに感激しました!
来月には、あの「デトロイトメタルシティ」の若杉公徳先生がX-MENっぽいのを描こうとしたように見せつつ、実はいつもの優れた才能を持ちながら、それを望むように使えない人達のトホホギャグ漫画と見せかけて急にシリアスになる超能力漫画「みんな!エスパーだよ!」が園監督により映画化されるそうで楽しみです!!
>自分は斎藤工が脱いだ瞬間の「劇場内みんな失笑(自分は爆笑)」
ここだけは自分の観た劇場でも空気が変わりました!
男性客だけだったのに、帰り際に誰も女子高生の話しねえでパンイチイケメンをネタに談笑してるし!
そうでしたか!「パンツ」だけにしますw
流石日本映画。この映画で金を取るところが日本映画の凄いところですな。