『ムーン・ウォーカーズ』捏造どころかク◯映画作っちゃった(ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)
個人的お気に入り度:6/10
一言感想:ヒッピーに映画作らせちゃダメだな
あらすじ
1969年。CIAはアポロ計画の成功を危ぶみ、スタンリー・キューブリック監督に、月面着陸成功の映像を捏造させることを思いつく。
諜報員のキッドマン(ロン・パールマン)は直々にロンドンまで依頼に行くものの、借金まみれのプロデューサー・ジョニー(ルパート・グリント)に巨額の資金を奪われてしまう。
タイトルからはマイケル・ジャクソンの映画やゲームを思い出せますが、それとは関係ありません。


参考↓
<映画マイケルジャクソンズ ムーンウォーカー「Moonwalker」:a Black Leaf (BLACK徒然草)>
<マイケルが「ポオオォォォオウ!!」と絶叫するあの伝説のゲームのすべてを理解できるムービー - GIGAZINE>
のっけから無関係の作品を紹介して恐縮ですが、本作『ムーン・ウォーカーズ』がしょうもない内容(褒めています)だったので、わりとどうでもよくなったのです。どうかご容赦いただけましたら幸いです。
物語は
「アポロ11号の月面着陸無理じゃね?」→「じゃあもしものときに備えてスタンリー・キューブリックに撮ってもらおうよ!」→「お金盗まれちゃったのでやべえ☆(てへぺろ)」という非常に頭の悪い(褒めています)ものです。
本作は、監督が「ねえねえ、これおもしろくない?」とたった4ページの原案をプロデューサーに見せて、企画がスタートしたそうです。いかにふざけた内容かがわかりますね(褒めています)。
この「アポロ11号は月面に着陸していないんだ!捏造されたんだ!」というのは有名な都市伝説で、なんともロマン(?)のある話。これをいままで誰も映画化していなかったというほうがむしろ不思議ですね。
参考↓
<「月面着陸は嘘だった!?」-検証編->
<アポロ11号の「月面着陸は事実」:NVIDIA社が最新GPU技術で証明 « WIRED.jp>
本作でおもしろいのは、人類の未来を見据えたアポロ11号の月面着陸を、「その日が楽しければいいんだ!」なヒッピーに捏造させるというプロットです。
アポロ計画の関係者は人類の歴史や技術を重んじていますが、ヒッピーは「俺たちは自由だ!伝統や精度なんか知るか!」な人たち。
まったくの正反対の人種。水と油。その両者が協力して映画を作ったら?そりゃどうしようもないク◯映画が出来上がるってもんですよ(笑)。
規律もなんんいもなーい、俺たち自由だー、毎日食っちゃ寝だーなヒッピーは、妥協が許されず、チームワークが要求される映画作りにおいて、いちばん携わっちゃいけない人種だとよくわかりました(※べつに管理人はヒッピーが嫌いというわけではありません)。
この物語は、おそらく「映画は出資者やプロデューサーではく、監督に全権が委ねられてしまう」という制作現場をも皮肉っています。
CIAの男(出資者)が、ヒッピーの映画監督のムチャブリに呆れる様にはクスクス笑わせてもらいました。
端的に言えば、本作は『地獄になぜ悪い』と『エド・ウッド』の魅力がミックスされた映画だと思いました。


前者は「どうしても映画を作らなければならなくなってドタバタする」、後者は「これク◯映画だけどいいから作っちゃえ」な空気がいっしょです(笑)。
大好きで仕方がなかったのは、ロン・パールマンとルパート・グリントというスター俳優を構えていること。
ロン・パールマンは威圧感であって怖すぎの諜報員のキャラが合いすぎです。
彼は撮影時に本気でヒッピーの衣装を着ることを嫌がっていたそうですが→映画の中で衣装をイジられてぶちギレるシーンがあったのは大笑いしました。イライラが消化できてよかったですね。
ルパート・グリントは『ハリー・ポッター』のおかげで若き億万長者になっているのだけど、本作では借金まみれのクズ青年を好演しています。
彼は「口約束だけは達者」というキャラなので、これまたエド・ウッドを彷彿とさせますね。
もうひとつおもしろいのは、1960年代当時のスウィンギング・ロンドンの文化を体験できること。
ヒッピースタイルの生活やファッション、サイケデリック・アートなど、その当時の風俗を体験したい方にとっても必見でしょう。
参考↓
<若者文化の震源地、60年代のロンドン SWINGING LONDON - 英国ニュースダイジェスト>
ロン・パールマン演じる諜報員が、ベトナム戦争の帰還兵であったことも皮肉になっています。
ヒッピーは、ベトナム戦争への反対運動が発端となり、愛と平和を求める若者たちが中心となっています。
一方、諜報員は戦争で殺した相手の亡霊に悩まされる日々を送っています。
彼にとって、ヒッピーはある意味で「うらやましい」人々なのではないでしょうか。
はっきり言うと、本作は物語のハジケ具合としては今ひとつ。
いまいち伏線が機能していませんし、クライマックスのかけてのカタルシスなどはそれほどありません。
ギャグのほとんどがウン◯チンチ◯レベルの低俗かつ直接的なもので、ウィットの効いたものがそれほどないのも欠点でしょう。
ちなみに、映画本編にはハッパやらアヘンやらLSDやらドラッグ描写がアリアリで、登場人物のほとんどがラリラリです(そこがおもしろいのだけど)。
突発的なグロ描写もあるので、R15+指定は大納得。苦手な方は観ないほうがいいでしょう。
それでも「こんなオチかよおおおお!」とズッコけるラストはある意味で気分爽快ですし、誰も得しないエンドロールが流れるなど、見どころは満載な作品ではあります。
主演ふたりのファンにとっては大プッシュでオススメ。
アポロ計画の捏造説が好きな方、ク◯映画の制作過程を知りたい方もぜひ劇場へ。
以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓ 今回は短め
〜皮肉がたっぷり〜
本作では「偏見」も描かれています。
プロデューサーがスタンリー・キューブリック監督の作品として『ロリータ』を挙げると「ロリコンの映画じゃん!イヤだよ!」と役者(仮)に言われていましたし、当時にホモセクシュアルの人たちがたくさんいたこともやや差別的な描写でした(実際、いまよりもゲイに対する偏見ははるかに強かった)。
で、差別主義者がいるCIAたち、社会悪であるヤミ金のマフィアたちは、なんだかんだで同士討ちをして全員死にます(笑)。やったぜ。
不満点としては、ロック・オペラを夢見ていたミュージシャンが、ちゃんと夢を叶えられた瞬間を見れなかったこと。映画の中で歌わせてあげようぜ。
確か、諜報員(ロン・パールマン)がLSDでラリラリになったあとはベトナム兵の幻覚を見ていなかったような(違ったらごめん)。
そうだとしたら、彼はヒッピー暮らしのおかげで悪夢から抜け出すことができたんですね。
アポロ11号月面着陸の捏造説を裏付ける証拠して有名なのは、「宇宙空間なのに旗が風でなびいていた」というもの。
本作では、旗がなびくどろか、背中に斧が刺さったアメリカ人が星条旗を物理的に倒してしまいます。「あ、こりゃどう見ても捏造だわ」というのが皮肉ですね。
「これは、ひとりの人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である(That's one small step for a man,one giant leap for mankind.)」というのはニール・アームストロングの有名な言葉ですが、本作では「これはひとりの小っちゃい人間です(That's one small man)」と言っちゃうのにも大笑い。
確かに本作には、なりゆきでお金をだまし取るクズ青年だったり、いとこを助けずにクスリでラリラリになるプロデューサーだったり、ギャラを3倍にすると言われたらあっさり考えを改める映画監督だったり、模型をぶち壊されてキレる金貸しだったり、(器が)小っちゃい人間が多かったもんね。
さらには、本当に月から帰還した宇宙飛行士たちに「成功したのはチームワークのおかげだ。それしかない」「素晴らしいよ、まるで映画みたいだ」と言わせてしまいます。
けっきょくCIAやプロデューサーや映画監督がどーしようが、本物の「事実」の感動には敵わない。
それも皮肉なのかもしれません。
で、エンドロールでは、「デブのおっさんが跳ねるだけ」というヒッピーの映画監督の作った映像が垂れ流されます。
デブのおっさんが、ブヨブヨのお腹をたゆんたゆんさせながら跳ぶだけのエンドロールで誰が得するんだよ。まあこれもク◯映画への皮肉だよね(たぶん)。
おすすめ↓
<『ムーン・ウォーカーズ』ロン・パールマン インタビュー[ホラー通信] | ガジェット通信>
レコードの上の巻き○○には観客全員が爆笑でした!
ようやく鑑賞。
私の一言感想:ヘタなホラー映画より恐かった。
始まる前はワクワクしてたんですよ。「ギャラクシー街道」で観れなかった笑えるクズ動物園を・・・開始10分辺りから「笑え!わらえ!ワラエ・・・これはコメディイだ!笑える映画なんだ・・・」と自分に言い聞かせながら鑑賞するハメに・・・。
なんでしょうかね。この「イケナイものを観てしまっている感」例えるなら、酔っ払ったネズミ達の檻に心を病んだトラを入れてしまったような・・・。ディズニーランドにターミネーターとかジェイソンとかプレデターとか入園させてしまったような・・・。
>CIAの男(出資者)が、ヒッピーの映画監督のムチャブリに呆れる様にはクスクス笑わせてもらいました。
レターニンのキッドマンへの態度にすんごいハラハラさせられました・・・。その人はナチどころか、一騎当千の殺人マシーンだぞ!?
>プロデューサー・ジョニー(ルパート・グリント)
劇中、彼が一番真面目に生きていた思います。
>ハマりすぎて演技していなかった。
ハリポタ出演者の皆さんはストイックな人が多いと思います。
>プロデューサーがスタンリー・キューブリック監督の作品として『ロリータ』を挙げると「ロリコンの映画じゃん!イヤだよ!」
1960年代のダメ人間族を代表するヒッピーにすら嫌われるロリコンって・・・。さすがは21世紀現在ですらL.G.B.Tにすら弾かれるだけの事はある・・・(古代では常識だったようですが・・・)
>ドラッグ描写がアリアリで、登場人物のほとんどがラリラリです(そこがおもしろいのだけど)。
もともと大嫌いですが、改めて無縁の人生を送ろうと決意させてくれました。
>そうだとしたら、彼はヒッピー暮らしのおかげで悪夢から抜け出すことができたんですね。
麻薬は大嫌いですが大麻の有効性は肯定的ですので、ここは確かにテメーの健康健全を他人に押し付けて「思いやりと慈しみでじわじわと生き地獄を味合わせるよりは・・・」と考えてしまいました。
(終末医療には今すぐでも解禁しましょうよ厚生省。モルヒネ漬けの末期ガン患者の方のお話は酷過ぎでした・・・)
>社会悪であるヤミ金のマフィアたち
おじいちゃん行っちゃダメー!そこは既にドブネズミの巣でなく虎穴よッ!!と叫びたくなりました・・・。
>けっきょくCIAやプロデューサーや映画監督がどーしようが、本物の「事実」の感動には敵わない。
鑑賞中、本物も同時進行な事が「こいつらがどうなろうと本物に携わった人達の努力は報われる・・・」と思えて救いでした。とりあえず、ジョニーとキッドマンが生還しただけで個人的にハッピーエンドです!!